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2021年7月22日 ベイルート:

過去2年間でレバノンが直面した度重なる人道危機は、レバノンの人々とレバノンに暮らす難民や移民にも大きな影響をもたらしました。2019年10月に起きた大規模な反政府デモに続いて、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)が発生、そして、感染拡大予防のために完全なロックダウンが敷かれました。さらに、ベイルートの港湾地区で発生した壊滅的な爆発事故は、200人以上の命を奪うと同時に、ベイルートに数十億米ドルもの損害をもたらしました。

 

レバノンは、国全体で渦巻く人々の不安や政情不安に加えて、近代史上で最も深刻な経済・金融危機に直面しており、度重なる危機により引き起こされた混乱は、深刻さを増しています。

 

続く人道危機により、レバノンの人々やレバノンに暮らす難民、特に女性や少女たちの生活環境は悪化しています。多くの人々が貧困の中、必要な保健サービスを受けられないケースが増えています。
 

UNFPAレバノン事務所代表のアスマ・クルダヒは「女性、特に妊産婦が、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康、以下SRH)サービスを、タイムリーかつ確実に受けることができなければ、生命を脅かすような合併症や疾病を罹患するリスクが高くなります」と述べています。
 

この緊急事態に対応するため、UNFPAレバノン事務所は日本政府の支援を受けて、「レバノンにおける複合的危機の影響を被った女性及び少女に対するジェンダーに基づく暴力(GBV)とセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)に関する救命支援事業」を開始しました。本プロジェクトは、人道危機から人々の命を守るため、SRHRとGBVの予防と対応へのアクセスを促進することを目的としています。
 

「日本はUNFPAとの緊密なパートナーシップのもと、女性の健康と権利を守ることを優先課題に据えて取り組み、ジェンダーの主流化と女性のエンパワーメントを推進してきました。未曾有の社会経済的危機が、レバノンの社会的に弱い立場に置かれている人々に大きな影響を与えている中で、日本は女性と子どもたちが直面している危機の影響を軽減するためにこれまで以上に貢献したいと考えています」と、在レバノン日本大使館の大久保武特命全権大使は話しました。
 

本プロジェクトでは、UNFPAのパートナー団体であるアメル・アソシエーションが西ベカーア県で活動を実施しており、これまでに約2,200人の女性と少女に支援を届けています。このプロジェクトは、レイプ被害者の臨床管理、安全な身元確認、メンタルヘルスと心理社会的サポート、月経衛生管理などを行う人材(産婦人科医、助産師、看護師、ソーシャルワーカー、アウトリーチ活動に従事するスタッフ)の能力を高める活動とともに、GBVとSRHに関するサービスを提供し、女性と思春期の少女を対象とした保健サービス(リプロダクティブ・ヘルスに関する相談、子宮頸がん検査、子宮内避妊器具の提供、マンモグラフィ検査など)に関する活動を補助します。また、緊急時の現金支援、月経衛生用品やディグニティ(尊厳)キットなどの提供を通じて、最も弱い立場にある人々を支援するとともに、女性と少女があらゆる暴力から逃れることのできる「セーフ・スペース」の体制を強化し、GBV被害者やGBVを受けるリスクを抱えている女性や少女たちに心理社会的サポートを提供します。
 

危機が起きた時、最も深刻な影響を受けるのは女性と少女です。しかし、彼女たちになぜ支援が必要なのか、その理由についてはあまり語られてきませんでした。女性と少女の保護を確実なものとし、彼女たちの未来を明るいものとすることは、レバノン、そして世界(の安定)を守ることにつながるのです。
 

「経済的な事情や社会的な制約のために、サービスを受けられる場所を求めて移動することができませんでしたが、今は、必要なサービスへのアクセスがとても簡単になりました」と、(プロジェクトの受益者のひとりで)レバノンに暮らすシリア人女性のサミアさん(34歳)は話しています。結婚して2人の子どもがいる彼女は、本プロジェクトを通じてケースマネジメント・サービスと心理社会的サポートを受けました。サミアさんは「このようなサービスが、ひとつの場所で受けられるのはとてもありがたいことです」と感謝しています。
 

【問い合わせ先】

UNFPAレバノン事務所

コミュニケーション・メディアオフィサー

Nour Wahid

メールnwahid@unfpa.org