若者に対する支援
10歳から24歳の若者は15億人以上にのぼります。世界では、このかつてない大規模な思春期世代が、いま大人になろうとしています。それは、彼等より年上の世代にとって想像だにできないことでした。グローバリゼーション、エイズの流行、地球温暖化、気候変動、そして電子通信技術の発達によって、世界は後戻りできないほどの変貌を遂げています。
予想される未来のシナリオも複雑です。若者がマスメディアと電子技術を通して、考えや価値観、音楽、シンボルを共有するにつれ、グローバルな若者文化が台頭してきました。多くの若者が自分たちで組織をつくり、公式・非公式な方法でネットワークを広げています。
しかし、若者の半数以上は、1日2ドルにも満たない貧困のなかで暮らし、多くが最新技術の恩恵を受けられない、または情報を入手できない状況に置かれています。多くの若者はまた、社会の不平等に直面しており、学校教育も受けられず、ジェンダー(男女の社会的性差)による差別、失業に苦しみ、十分な社会保障制度を享受できずにいます。彼等はよりよい社会に生きる権利があります。若者に投資することは、家族・地域・国の未来の指導者に投資することでもあります。
若者と国連人口基金
国連人口基金は、若者 の人権保障を推進しています。 若者が、性別にかかわらず、最良の機会を享受し、自分の潜在能力を最大限に発揮し、自由に自己を表現し、意見が尊重され、貧困、差別、暴力に脅かされることのない社会を実現するために活動しています。
そのような世界を実現するために、国連人口基金は多方面にわたり、多くの協力機関と以下のような活動をしています。
国連人口基金による人権アプローチの指針となる主な文書
- 夢を実現し、物事を批判的に考える力を培い、自由に自己を表現できるように、青少年の能力を強化し、彼らの社会的地位を向上させる。
- 性と生殖に関する健康(SRH)についての情報、教育、支援物資およびサービスを入手できるようにすることで、青少年の健康を推進する。
- 青少年に合った就職、生計プログラムをつくる。
- 青少年、特に女児と社会から取り残された若者が、健全に成長し、社会投資の公正な分け前を享受できるようにすることで、彼らの権利を保障する。
- 社会開発計画を含め、青少年に影響をおよぼす決定事項に対し、彼ら自身の指導力の発揮と参加を促す。
国連人口基金の多方面にまたがる包括的・協調的アプローチには、 青少年 の生活を部分的にではなく全体としてとらえる考えが反映されています。政策レベルでは、若者 の問題をより大きな開発の文脈である貧困の中に位置づけています。プログラムレベルでは、教育、SRH関連のサービス、生計を立てて自立するための支援など、 若者 の社会的保護にとって不可欠な総合的介入策を提唱しています。いずれのレベルでも、青少年 の力、将来の展望、意欲を、大人の経験とこれまで培ってきた知識と技術を束ねるための、世代間の協調を推進しています。
重要な過渡期
思春期は、身体的・心理的・経済的・社会的など、多くの点で重要な過渡期にあたります。この時期、子どもという枠を出て、独自のアイデンティティをつくり、責任ある大人になるという重圧が強まります。この過渡期には挑戦と選択が混在しており、社会や家族におけるジェンダー(社会的性差)による価値観から強い影響を受けています。そして、過渡期を首尾よく通過できるか否かは、家族・地域・社会全体からどのような支援を受けられるかによって、ある程度決まります。
用語の定義
国連人口基金は、以下の国連の定義にしたがって異なる 若者 の集団を表します。
思春期の 若者 (adolescents) :10-19歳(思春期前期10-14歳;思春期後期15-19歳)
若者(youth) :15-24歳
青少年(young people) :10-24歳
多様な生活
すべての 青少年 は過渡期にありますが、彼らの経験は決して同じではありません。 青少年 が、大人への過渡期を無事に首尾よく通過するための方法は、年齢・性・結婚しているか否か・教育レベル・住居・生活環境・移住・社会経済環境などによって実に様々です。また、 青少年 は、他の年代に比べて、人道的危機の影響を大きく受けます。こうした 青少年 の多様性に配慮し、 青少年 が機会をつかみ、問題を克服できるよう支援すれば、 青少年 にとって効果のあるプログラムを作ることができるでしょう。
より多くの時間と機会
一般に開発途上国の 青少年 は、子ども時代から大人の役割を担うまでの期間が長くなっています。1世代前に比べると、 青少年 は思春期を学校で過ごし、結婚や出産を先送りする傾向が強まっています。これはつまり、自分の潜在能力を最大限に生かすための有益な情報と技能を取得する時間と機会が増えたことを意味します。 青少年 の数が増大し、結婚しない(多くの場合、性行動をともなう)期間が延びていることは、教育、技能訓練、およびSRHの保護を含む保健サービスに対し、継続的投資が必要となることを意味しています。