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アドボカシー / Advocacy
「擁護」「支持」「唱道」という意味を表す。特定の社会問題を解決するために、政府や自治体などに対 し提言や社会的な働きかけをすること。国連人口基金では、性と生殖に関する権利や女性のエンパワーメントなど、開発途上国での人口問題に対しアドボカシ―を行っている。
アフリカ開発会議 / TICAD (Tokyo International Conference on African Development)
Tokyo International Conference on African Development (アフリカ開発会議)の略であり、 アフリカの開発をテーマとする国際会議である。アフリカ諸国首脳と開発パートナーにおけるハイレベルな政策対話を促進するために 1993 年に開始された。日本政府が主導し、国連、国連開発計画、 世界銀行、そして第 5 回からはアフリカ連合委員会(AUC)と共同で開催している。TICAD は、2 つの基本原則であるアフリカの「オーナーシップ(自助努力)」と国際社会の「パートナーシップ(協調)」に基づいて、アフリカの開発の推進に向けたイニシアチブの実施を促進する主要な国際的枠組みの地位を確立した。国連人口基金は 2013 年の第 5 回 TICAD のサイドイベントとして、シンポジウム「妊産婦の健康に対する投資の効果」を実施した。2016 年の第 6 回 TICAD は、アフリカのケニアで開催される。
アンメット・ニーズ / Unmet Needs
必要とされていることが満たされていない状態のこと。主に医療の現場で使用されており、有効な治療法が確立されていない病気に対し、薬や治療法の開発が追いついていない状況を指す。リプロダクティブ・ヘルスの分野では、家族計画を実行したいと考える女性のニーズに対して、カウンセリングや情報が不十分であったり、避妊薬(具)の入手が困難であったりすることで、実行できない状態のこと。グ ットマッハ‐研究所と UNFPA による 2012 年の報告によると、途上国には出産可能年齢(15~49歳)の女性が 15 億 2000 万人いる。そのうちの 8 億 6700 万人は避妊法を必要としているが、2 億 2200 万人の女性は避妊のニーズが満たされていない。アンメットニーズを解決することは、女性の自立と健康的な生活を保障するうえで重要な第一歩であるといえる。
エイズ / AIDS
後天性免疫不全症候群(Acquired Immunodeficiency Syndrome)。HIV(ヒト免疫不全ウィルス)の感染による発病の段階。徐々に人間の体の防衛(免疫)システムを破壊し、下痢、発熱、結核、 肺炎などが重症になり、肉体は最終的には生命を脅かす疾患と戦えなくなる。疾患にはある種の癌(がん)も含まれる。
エイズの女性化 / Feminization of HIV/AIDS
世界の HIV 陽性者の約半分は女性である。サハラ以南のアフリカでは感染者のうちすでに6割近くが女性であり、25歳未満の感染者での女性感染者の割合が高くなっている。このような HIV/エイズの女性化は、一部には女性の身体的な脆弱性に起因していることもあるが、むしろ女性の社会的・経済的地位の低さによるところが大きい。つまり、女性は社会的・経済的地位の低さのため、夫など男性パ ートナーに経済的・社会的に依存せざるをえず、そのため男性パートナーとの間での性行為や避妊について交渉ができず、また、その男性パートナーが死亡したり、離婚したりすると、感染の危険が高い性産業で働かざることを得ないことなどによるところが大きい。
エイズ孤児 / AIDS Orphan
HIV/エイズ により、両親のいずれか、または両方を失った子ども。アフリカでは親類が住む村で引き取って育てるという習慣が残っている地域もあるが、その多くがストリートチルドレンとならざるを得ない。
エルジービーティーアイ / LGBTI
Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、性自認が出生時に割り当てられた性別とは異なる人)、Intersex(インターセックス、男性または女性の定義に当てはまらない生殖・性的構造を持って生まれた人のこと)の頭文字を取った言葉で、性的少数者を表す総称の一つとして用いられる。
家族計画 / Family Planning
カップルまたは個人が、自発的に、子どもをいつ、何人産むのか計画すること。また、そのために出産の間隔と時期を調節するよう、意識的に努力すること。母子の健康確保や福祉の向上が基本条件となる。推進のためには、「出産年齢への配慮」、「女性の教育機会の向上」、「避妊法選択の自由」、「乳幼児死亡の削減」、「子どもの育成環境への配慮」などが重要な項目となる。
家庭内暴力 / Domestic Violence (DV)
家庭内で、家族に対して振るわれる暴力の総称。配偶者・恋人による暴力を含め、ジェンダーに基づく暴力がその大半を占める。
からだの自己決定(権)/ Bodily Autonomy
自身のからだについて、暴力を恐れず、他の誰かに決められることなく、自分で選択できる力と主体性を持つこと。
からだの尊厳 / Bodily Integrity
Integrityとは、完全性や整合性、または高潔、品位を指す。踏みにじってはいけない本人のからだの完全性、という意味で、からだの尊厳という言葉をあてている。
抗レトロウイルス剤 / Antiretroviral Therapy
HIV 感染症治療では、世界的に、抗ウイルス薬を 3~4 剤組み合わせて併用する抗レトロウイルス療法(Anti-Retroviral Therapy, ART)が主流になっている。しかし、この療法もエイズを完全に治療するものではなく、服用することによって、エイズの発病を遅らせることができるという効果に限られている。抗レトロウイルス剤は健康な出産においても大変重要で、妊娠中の女性が服用することによって、HIV の母子感染率が半減するといわれている。
国際人口 開発会議 / International Conference on Population and Development (ICPD)
1994 年、エジプトのカイロで開催された国際会議で、179 カ国の代表が出席した。性と生殖に関する健康/権利(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)の向上が今後の人口政策の大きな柱となるべきことが合意された。このため、人口政策の焦点がそれまでの国レベル(マクロ)から個人レベル(ミクロ)、中でも特に女性に大きくシフトした。また、人口問題と開発問題が密接に関連し、相互に影響しあうという考え方が国際的な共通認識となった。これを受けて、国連の経済社会理事会の人口委員会も、人口開発委員会と名称を改めた。20 年間の「行動計画」を採択し、各国はこの行動計画に沿って人口問題対策を進める。開催地の名をとって、「カイロ会議」とも呼ばれる。
国際人口移動 / International Migration
経済活動のグローバリゼーションと、それに伴う労働移動のために国境を越えて行われる人口移動。 自発的に行われる場合も強制される場合もあり,国連人口基金は単なる国際移住よりも広い概念でとらえている。したがって,仕事,家族の呼び寄せ,結婚等を目的とする移住,移動のみならず,女性の人身売買,難民,亡命という移動も含まれる。
国勢調査 / Census
国の人口をある一時点でとらえた断面調査。性別、年齢、世帯、就業状況、住居状況等の人口に関する属性も調査される。調査から得られる各種統計は、行政施策を立案するための基礎資料として用いられるほか、保健統計では分母として用いられる。
国連エイズ合同計画 / Joint United Nations Programme on HIV/AIDS (UNAIDS)
世界的な HIV/エイズへの対応のため、1996 年に 10 の国連組織(国連人口基金、国連難民高等弁務官事務所、ユニセフ、国連世界食糧計画、国連開発計画、国連薬物犯罪事務所、国際労働機関、 国際連合教育科学文化機関、世界保健機関、世界銀行)がまとまって作った機関。ジュネーブに拠点を置いて世界中の 75 カ国以上で活動している。
合計出生率 / Total Fertility Rate (TFR)
1人の女性が生涯に産む子どもの平均数。国連経済社会局人口部では、15歳から49歳の年齢階級別に女性1人あたりの平均的出産数を算出し、それぞれの女性が出産可能年齢の生涯において、その平均的出産率で子どもを産むと仮定した場合の、女性の生涯における子ども数として計算。厚生労働省によると、2012年の日本の合計出生率は1.41。国連経済社会局によると、2005‐2010年、世界では2.53、日本では1.34とされる。静止人口(増減のない人口)を保障する合計出生率(人口置換水準)は、統計学的に国や地域における死亡率に関係するため、それぞれ異なる。途上国では先進国と比較して死亡率が高いことから、人口置換水準も全体として高くなる傾向がある。
差別・偏見 / Stigma
社会的属性や病気などが個人と直感的に結び付けられ、負のレッテルを貼られること。そのレッテル。
ジェンダー(社会的性差)/ Gender
男女の生物学的性別(sex)ではなく、社会的価値観などによって規定された社会的性差のこと。開発途上国の開発では、ジェンダーに配慮することでより効果があがると考えられている。
ジェンダーに基づく暴力 / Gender-Based Violence (GBV)
社会的性差に基づいて、相手の意志を反して害を与える行為を指す包括的用語。女性に対する身体的、性的、心理的暴力や社会的、経済的虐待等を含む。ジェンダーに基づく暴力は国際機関によって保護されている基本的人権に反する。
思春期の若者 / Adolescents
国連人口基金は、世界保健機関、ユニセフとともに、15 歳から24 歳の人々を若者と定めている。
持続可能な開発 / Sustainable Development
持続可能な開発とは、自然環境の保護と、現在の世代と将来の世代のニーズを満たす開発が共存すること。持続可能な社会を創り出すためには、民主的な社会制度、社会や環境への影響を考慮した経済制度、人権の擁護、健康の増進などを保障する社会が求められている。国連人口基金は、人権、平等、持続性の基本原則に基づく持続可能な開発を取り組んでいる国々を支援している。
持続可能な開発目標 / Sustainable Development Goals (SDGs)
SDGsとは、2001年に策定されたミレニアム開発目標(Millenium Development Goals: MDGs)の後継として、2015年9月に行われた国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標である。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(No one leave behind)」ことを原則としている。SDGsは途上国のみならず、先進国自身が取り組む普遍的なものであり、日本も積極的に取り組んでいる。
児童婚 / Child Marriage
18 歳未満の子供の結婚。児童婚は、一般的に極度の貧しい地域で多く見られる。少女たちのほとん どが教育を受けておらず、農村地域に住んでおり、安全でない状況での出産や育児が多く行われてい る地域は思春期の少女の出生率が最も高い。2013 年発表のデータによると、児童婚はアルジェリアでは人口の 2%、ニジェールでは 75%行われるなど、国により状況は大きく異なる。
若年妊娠 / Adolescent Pregnancy
15 歳以下での妊娠。若年での妊娠は、出産時の困難やフィスチュラ(産科ろう孔)の原因にもなっており、健康上のリスクや、人生の選択肢が制限されるなど、女性に対する影響が大きい。多くの国では結 婚できる年齢を法的に定めてはいるが、その年齢以下での婚姻が多く存在する。
周産期死亡率 / Perinatal Mortality Rate
周産期は、妊娠 22 週から出生後 7 日未満の時期を表す。よって周産期死亡率は、年間の出産数 (出生数+妊娠満 22 週以後の死産数)1,000 人当たりの死産数と早期新生児の死亡数を合わせたもので表す。この死亡率は、産科・小児科の施設と医療技術者不足や母体の健康・栄養を反映することから、重要な指標として使われている。
助産師 / Midwife
安全な出産を行うために、分娩に立ち合う専門的知識・技術を持つ者。助産師が分娩に立ち合うことで、分娩に伴って発生しうるリスクやトラブルにその場で対応することができ、出産の安全性が高まる。 また、助産師のような出産に関する正しい知識を持った人物の立ち会いは、ミレニアム開発目標の「目標 4 乳幼児死亡率の削減」と「目標 5 妊産婦の健康の改善」を達成するうえでも重要となる。国連人口基金では、開発途上国において、助産師などの専門技能者の立ち会い分娩の促進活動を行っている。
女性のエンパワーメント / Women’s Empowerment
女性は社会的・経済的な力や能力を獲得する。エンパワーメントとは、1980年代以降に広まった概念で、社会的に弱い立場にある者が自らエンパワーメントを行い、そのプロセスを他者が支援することを指します。本人自ら、自己否定や無力感を生み出している社会的要因に気付くことで、尊厳を回復し自信を取り戻す。そうした内的変化が自発的な生活機会の拡大につながるという考え方に基づいている。
女性器切除 / Female Genital Mutilation (FGM)
女性器切除とは、思春期までの少女の外性器を切り取る(または一部に傷をつける)慣習で、アフリカ、中東、アジアなどで行われている。貞操、純潔の象徴とされるが、切除により、性交や出産時に痛みや出血を伴うばかりでなく、性感染症や不妊、死亡に至る危険も増加するなどの弊害が指摘されている。また、少女の人権侵害であるとともに、健康面及び精神面で長期的な影響を及ぼす有害な慣習とされている。
新生児死亡率 / Neonatal Mortality Rate
年間の出生数 1,000 人当たりの生後 28 日以内の新生児の死亡数(死産は含まない)を表す。 2012 年発表のデータでは、乳幼児死亡(生後 5 年以内の死亡)のうち、44%が生後 28 日以内に死亡した。原因としては、早産、分娩合併症、衛生管理が不十分なために起こる感染症などが考えられる。2012 年の先進国の新生児死亡率が 4 に対し開発途上国は 23 と、開発途上国の数値は高い。
人口ボーナス / Demographic Dividend
多産多死の社会から少産少死の社会へ移行する人口転換に伴い、経済発展が後押しされること。従属人口、つまり年少人口と高齢者人口が相対的に小さくなり、働き手である生産年齢人口の割合が大きくなると、扶養される人口の比率が低下する。子ども一人当たりの教育・医療などへの投資が増え、 女性の社会進出が進み、貯蓄も増加することから、国の経済発展につながる。日本は、1960 年代か ら 90 年代初頭まで人口ボーナス期にあったとされ、この時期に高度経済成長を成し遂げた。今後はアフリカ諸国に人口ボーナス期が到来するといわれている。
人口爆発 / Population Explosion
20 世紀後半以降に開発途上国の多くで起きた急激な人口増加を指した。この時期、子どもを多く産む多産傾向がそれ以前とあまり変わらなかった一方で、開発の進展に伴い保健医療サービスなどが改善されたために死亡率が大幅に下がった。この出生率の上昇と死亡率の低下という不均一な変化のため、人口が急速に増加した。 このため、20 世紀は「人口の世紀」、「人口爆発の世紀」とも呼ばれていた。しかし、人口増加のスピードは 90 年代頃にピークを迎え、その後緩やかになってきている。
人道支援 / Humanitarian Support
紛争や自然災害などが起きた際に、人道的配慮から行う支援。そのような非常時には、人々の性と生殖に関する健康を含めて深刻な打撃を受ける。特に被災地で大きな被害を受けるのは女性と子どもたちである。国連人口基金は、被害地域の人々への性と生殖に関する健康関連の保健医療サービスや、必要最低限の衛生用品をまとめた衛生キット等、基本物資の緊急供給を担当する。さらに、復興期においても、女性や子ども、若者たちが再建プロセスに主体的・積極的に関われるよう支援を行っている。
世界人口デー / World Population Day
毎年 7 月 11 日。1987 年 7 月 11 日に、国連がユーゴスラビア(当時)で生まれた男児を 50 億人目と認定したことに基づき、世界の人口問題に対し関心を深めてもらうことを意図して 1989 年に制定された。その後、世界人口は、1999 年 10 月 12 日 に 60 億人に達し、2011 年 10 月 31 日に 70 億人に達した。
性と生殖に関する健康 / Sexual and Reproductive Health
単に疾病、機能障害などが無いというだけでなく、セクシュアリティと生殖のすべての局面で、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあること。例えば、子どもを産むか産まないか・その数やタイミングなどを自由に決めたり、HIV/エイズなど性感染症の予防などの情報、資源、サービス、支援を受けられることが必要とされる。
性教育 / Sexuality Education
若者が性に関する知識を習得し、賢明な選択をすることができるようにするための教育、またその普及活動のこと。若者は、性に関する知識を十分に兼ね備えてないことが多いため、性暴力や意図しない妊娠、性感染症などのリスクにさらされることが多い。世界的に見ても、性に関する正しい知識を備える若者は、2003年以降増加傾向にはあるものの、十分ではない。国連人口基金では、性と生殖に関する健康・権利の観点から、主に思春期の女子に対する性教育の普及に尽力している。
青少年 / Young People
国連人口基金は、世界保健機関、ユニセフとともに、10 歳から 24 歳の人々を若者と定めている。
専門技能者の立ち会い分娩 / Skilled Birth Attendance
医師、助産師、看護師といった専門的知識・技術をもった者の立会い、介助による分娩。開発途上国では、出産の約半数は専門技能者が立ち会うことなく行われている。専門技能者が分娩に立ち会うことで、問題が生じる可能性を察知し予防することができる。合併症の発症など、異常症状が出現した場合は、救命のための処置を提供し、必要時にはより高次の産科医療施設を紹介することができる。また、出産前後の母子に関するケアの基本的情報を母親に提供できる。開発途上国では、伝統的産婆(Traditional birth attendant)が出産に関わることが多いが、世界保健機関では「専門技能者」と認めていない。
セックスワーカー / Sex Worker
性的サービスを提供する仕事をしている人。セックスワーカーは、不特定多数と性交渉をもつことから、HIV/エイズ感染のハイリスクグループとして位置づけられている。セックスワーカーについては、国や文化により対応が異なるが、タイ王国における 100%コンドーム使用プログラム(売春宿等にコンドームを配り、使用を徹底させる)のようにコンドーム使用を推進する対応策が増えてきている。開発途上国では、セックスワーカーは社会的・経済的地位が低く、その他の職業の選択が困難な状態に置かれ、差別や暴力、嫌がらせを受けていることが多く、現状に即した総合的な対策が必要である。
男児選好 / Son Preference
女児よりも男児に高い価値が与えられると、息子を持たねばならないという圧力が高まる。夫婦が意図的に女児の出産を避けたり、息子のほうを大事にし、娘の健康やウェル・ビーイングに配慮しないことがある。また、生まれた女児に十分な栄養や教育を与えず予防接種も受けさせないといったことが起きている。その結果、人口全体の男女比が歪み、男性がパートナー不足に陥り、ジェンダーに基づく暴力が悪化している国々もある。
男性と性交する男性 / MSM (Men who have Sex with Men)
男性と性交する男性。不特定多数との性交渉や肛門性交などにより、HIV 感染のハイリスクグループとされている。ただし、 国や文化によっては、同性愛行為を禁止していたり、同性愛を嫌悪の対象としていることも多く、HIV 感染予防対策が充分に行われないなどの問題がある。
デジタル暴力 / Digital Violence
オンライン空間での誹謗中傷、脅迫、ストーキング、なりすまし、性的搾取、個人情報の「晒し」等の総称。2020年に行われた国連女性機関(UN Women)の調査(Online and ICT-facilitated violence against women and girls during COVID-19)によると、オンライン上で標的にされやすいのは、女性や若者、特にミレニアル世代、Z世代がターゲットになりやすいという傾向が明らかにされている。
乳児死亡率 / Infant Mortality Rate
年間の出生数 1,000 人当たりの生後 12 カ月未満の乳児の死亡数を表す。乳児の健康状態は、その国・地域の衛生状態に関係するため、健康水準の国際比較の指標として重視されている。1990 年 と 2012 年のデータを比較すると、先進国では 12 から 5 へ低下しているに対し、開発途上国では 69 から 35 と低下しつつあるが、まだ高い数値である。
乳幼児死亡率 / Child Mortality Rate
年間の出生数 1,000 人当たりの生後 5 年未満の乳幼児死亡数を表す。2012 年度のデータによると、先進国の乳幼児死亡率は 6 だが、開発途上国の死亡率は 53 と大幅に違う。1990 年の死亡率 99 からは改善しつつあるが、ミレニアム開発目標としている 33 を 2015 年までに達成しなければならない。
妊産婦の健康を守るイニシアティブ / Safe Motherhood Initiative
妊娠・出産が原因で死亡する女性を救うための世界的な活動。1987 年に国連人口基金、世界保健機関、世界銀行などの国際機関をはじめ、母子保健の分野で活動する国際的 NGO などが共同で開始した。
妊産婦死亡率 / Maternal Mortality Ratio/Maternal Mortality Rate (MMR)
妊娠中または分娩後 42 日以内の母体の死亡率のこと。以下の 2 通りの表し方がある。Maternal Mortality Ratio: 年間の出産数 10 万人に対する妊産婦死亡数で示される。Maternal Mortality Rate: 年間の出産可能年齢(15 歳から 49 歳)の女性 10 万人に対する妊産婦死亡数で示される。先進国では両方の死亡率を表すことが可能だが、開発途上国では正確な出産可能年齢の女性数を得ることが困難なため、Rate を取ることが難しい。よって、「世界人口白書」では妊産婦死亡率を Ratio で表し、一般的に全世界の妊産婦死亡率を比較する場合も Ratio を使う。2013 年の先進国 においての Maternal Mortality Ratio は 16。これに対し、同年の開発途上国においての Maternal Mortality Ratio は 230。1990 年の 430 から低下しつつあり、この 1990 年の死亡率から 2015 年までに妊産婦死亡率を 4 分の 1 に消減するというミレニアム開発目標に向けて、国連人口基金は取り組み続けている。開発途上国における妊産婦死亡の原因としては、若年妊娠、妊娠中の母体保護の欠如、早産、多産、専門技能者の立ち会いではなく伝統的産婆や家族の介助による出産、医療機関や医療関係者の不足や緊急時の搬送手段の不足、異常時の対応の遅れなどが関係している。
望まない妊娠 / Unintended Pregnancy
個人またはカップルが希望し意図したものではない妊娠。性的暴行や避妊が適切に行われなかった結果としての妊娠を含む。
ピア・エデュケーション / Peer Education
同世代での教育・啓発活動。同じ年代のなかで中心となる啓発リーダーを任命し研修などを行った後、 そのリーダーが対象グループのメンバーに学んだ内容を伝える教育、啓発手法。同世代から教わることで、より親近感を持って受け止めることができる。同年代同士であれば性に関わる問題でも話しやすく、共通の理解が促進されやすい特徴があることから、主に思春期保健などの分野で活用されている。
ピア・カウンセリング / Peer Counselling
大人の考えを押しつけるのではなく、同世代の人同士が、対等な立場で、話を聞き合うこと。一方的に 知識を与えるのではなく、相手の意見も尊重しながら、話し合いを進めることによって、抵抗をなくし、 問題への対処の仕方や正しい認識を共有していく。性教育の場面では大変有効であるとされ、性の問題をより身近に感じ、正しい自己判断をすることを若者に促す。
ヒト免疫不全ウイルス / HIV (Human Immunodeficiency Virus)
エイズの原因となる。性的接触や血液を通して感染する。産前・出産時・母乳を通して母親から子どもに感染する母子感染も知られている。 HIV に感染してからエイズを発症するまでの期間は環境・健康状態などによって異なるが、多くの場合では感染から数年以上経ってから発症する。
避妊具・薬 / Contraception
望まれない妊娠や、性行為による感染症(HIV/エイズを含む)を予防するために使用される薬具。男性用コンドーム、女性用コンドーム、ペッサリーや、ピル(経口避妊薬)、不妊手術などさまざまな種類がある。
フィスチュラ / 産科ろう孔 / Fistula
膣、直腸、膀胱、腹腔、子宮など、産科に関連するいずれかの器官がつながったり、孔(穴)があくことによっておこる女性の疾患で、慢性的失禁などを伴うことが多い。難産や、適切な産科ケアを伴わない出産・人工妊娠中絶、女性性器切除、性感染症などにより生じる。慢性的失禁などのため、患者は社会的疎外や差別を受けることが多い。日本でも明治時代頃までにはあったとされる疾病。
プライマリー・ヘルス・ケア / Primary Health Care
個人や家庭が利用できる病気の治療や予防・健康の維持促進のための基本的な保健サービスであり、ヘルス・ケア・サービスの支柱となるものである。病気とその予防に関する教育、家族計画を含めた母子へのヘルス・ケア、主な感染症に対する予防接種等を含む。
包括的な健康教育 / Comprehensive Sexuality Education (CSE)
ユネスコ(UNESCO)、および国連合同エイズ計画(UNAIDS)、国連人口基金(UNFPA)、ユニセフ(UNICEF)、世界保健機関(WHO)との共同で発表された「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」によると、包括的な健康教育はセクシュアリティの認知的、感情的、身体的、社会的諸側面についての、カリキュラムをベースにした教育と学習のプロセスで、学校などで行われることがすすめられており、現段階のグローバルスタンダードといえる。
ミレニアム開発目標 / Millennium Development Goals (MDGs)
SDGsとは、2001年に策定されたミレニアム開発目標(Millenium Development Goals: MDGs)の後継として、2015年9月に行われた国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標である。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(No one leave behind)」ことを原則としている。SDGsは途上国のみならず、先進国自身が取り組む普遍的なものであり、日本も積極的に取り組んでいる。
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ / Universal Health Coverage (UHC)
すべての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保険医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態のこと。
若者 / Youth
国連人口基金は、世界保健機関、ユニセフとともに、15 歳から24 歳の人々を若者と定めている。