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人口動態

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人口問題


国連人口基金の課題:開発の中心にあるもの

国連人口基金の活動は、個人の意思決定に関するものから、世界人口や開発の動向に与えるインパクトまで、幅広い課題を含みます。
国連人口基金の中心的課題は、広義のリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)であり、これは人権とジェンダーの平等、そして人口動態の分野との共通課題でもあります。「女性」と「若者」という2つのグループ、その中でも貧困やその他の状況によって疎外された人々には、子どもの数や出産の間隔を自由に選択できる能力を含め、リプロダクティブ・ヘルス/ライツを享受できないという点で、不平等な立場に置かれています。

上の図は、国連人口基金の戦略計画を図式化したもので、国連人口基金の活動に含まれる様々な課題の相互関係を表しています。また詳細については、国連人口基金の活動指針に詳細に述べられています。1994年にカイロで開催された国際人口開発会議(ICPD/カイロ会議)で採択された「行動計画」では、人々のウェル・ビーイング(良好な状態)を向上させるための20年に渡る長期計画が示されています。この計画では、リプロダクティブ・ヘルスの役割の重要性を強調し、基礎教育やヘルスケアの重要性から都市化、人口移動、高齢化、気候変動による影響に至るまで、人口と開発に関するほぼすべての側面が取り上げられています。

国際人口開発会議で採択された「行動計画」は、今世紀の初めに世界のリーダ-達によって承認され、その後の開発を先導し、進捗状況を確認する手段となった「ミレニアム開発目標(MDGs)」の基礎となっています。2011年に世界人口が70億人に達し、人口問題の重要性が注目されました。そしてこの画期的な出来事に際し、メディアが注目したり人々の話題になったことによって、リプロダクティブ・ヘルスケアや家族計画への普遍的なアクセス、教育への投資、そして女性や若者のエンパワーメントなどといった、人権に基づいた政策が人口動向に大きな影響を与える、ということをより多くの人々が理解するようになりました。

持続可能な開発の要素の一つとしての人口動態に注目する必要性は、環境問題が深刻になるにつれて、より緊急性が高まっています。これは2012年の国連持続可能な開発会議(リオ+20)において重要な関心事でもありました。特に極度の貧困状態で暮らしている7人に1人の人々の生活を改善する世界的な取り決めは、増え続ける世界人口とあいまって、結果として環境への負荷を増大させるでしょう。持続的な開発という課題に対し効果的に取り組むためには、政策決定者は人口動態に注目することが何よりも必要とされるのです。

 

 


世界の人口動向

世界の人口が10億人に達するまで何十万年もかかりましたが、その後約200年で7倍に増加しました。2011年には世界の人口は70億人に達し、現在では約76億人となっています。

近年、出生率と平均寿命に大きな変化が見られています。1970年代初頭には、女性は一人当たり平均4.5人の子どもを産んでいましたが、2015年には世界の合計出生率は2.5人以下に低下しました。一方、世界の平均寿命は、1990年代初頭の64.6歳から現在は70.8歳へと伸びています。

さらに、世界では都市化が急速に進み、人口移動も加速しています。2007年に、はじめて農村部よりも都市部に住む人の数が上回って以来、2050年までには世界人口の約66%が都市部に住むことになると予測されています。

 

これらのメガトレンドは、経済発展、雇用、所得分配、貧困、社会的保障の分野に影響を与えています。また、ヘルスケア、教育、住宅、衛生設備、水、食糧、エネルギーへの普遍的なアクセスを確保するための取り組みにも影響を与えています。個人のニーズに持続的に対応するためには、政策決定者は、地球上の人口とその分布、年齢、そして今後の人口動態の予測を把握する必要があります。

 

人口ボーナス

人口の急増は、課題をもたらす一方で、人類の成功を意味するものでもあります。死亡率と出生率の低下は、保健、教育と人権における達成を示しています。また出生率の低下は、生産年齢人口が増加し、被扶養者人口が減少することで経済成長をもたらす人口ボーナスを実現するチャンスでもあります。

人口統計学的に見て開発の機会が最も大きな国は、生産年齢人口の健康状態が良く、質の高い教育を受けられ、適正な雇用があり、若い被扶養者の割合が低い時期に入った国です。一般的に、一世帯あたりの子どもの数が少ないほど、子ども一人に対する投資額が大きくなり、女性が正規労働に入る自由度が高まり、老後のための家計の貯蓄額が増えます。これが実現すれば、非常に大きな経済効果が見込まれます。これが“人口ボーナス”です。

 

例えば、20世紀後半のアジアでは人口ボーナスが発生し、国内総生産(GDP)は7倍に増加して「アジア経済の奇跡」と呼ばれる好景気となりました。一方で、同時期のラテンアメリカでは、女性と少女の性と生殖に関する健康・権利を含む、教育と健康に対する投資が不平等であったために、GDPの成長はわずか2倍にとどまりました。

 

残念なことに、特に何百万人もの少女たちは、児童婚、早期妊娠や計画外の妊娠、保健医療へのアクセスの悪さ、そして教育機会が限られた状況で学校に通うことが出来なくなることで、自分の可能性を実現する機会が奪われています。このように、多くの人々の機会が制限されると、能力を発揮し、貯蓄し、投資をし、危機に対して強くなりリスクを取って変革をすることがしにくい状況になり、被扶養者の少ない年齢構成が起こりにくく、人口ボーナスは起こりえません。したがって、性と生殖に関する健康・権利を含む人権の保障は、どのような社会であっても、人口ボーナスを達成するために不可欠なものといえます。 

 

必要なもの

人口ボーナスを達成するには、各国が自国の人口の規模と分布、現在および予測される年齢構成、人口増加のペースを把握する必要があります。各国政府は、すべての若者が自分の人生を計画し、暴力やトラウマから解放され、基本的な自由と生殖の権利を享受し、質の高い教育とメンタリングを受ける権利を保障するといった、一連の短期的・中期的な投資を行う必要があります。それには、いつ、誰と結婚するか、子どもを産むタイミングと数を決める自由、仕事と家庭生活を両立させるための保障なども含まれています。 

また、人口動態に関する政策は、基本的人権と自由を裏付けるものでなければなりません。人口動態は、個人の選択と機会の累積的な結果であり、特に性と生殖に関する健康・権利に関連した選択と機会を拡大することによって、最も効果を得ることができます。様々な調査から、カップルが子どもの数、産む時期、間隔を自由に決めることができれば、より多くの子どもが生き残り、繁栄し、全体的な出生率が下降傾向になることが示されています。

 

UNFPAの活動

UNFPAは、人口データ収集のための世界最大の支援機関であり、開発に不可欠な人口動向を把握し、理解するために各国を支援しています。例えば、国勢調査や人口調査に基づいて、各国の人口動向を迅速に把握するためのツールを提供しており、それには年齢構成のパターンや予測、児童婚率、家族計画に対するアンメット・ニーズ性と生殖に関する健康・権利の普及・アクセス、学校教育における性差など、さまざまな要素が含まれています。

また、UNFPAは、持続可能な開発を確保するためにも、すべての妊娠が望まれ、すべての出産が安全に行われ、すべての若者の可能性が満たされた世界を実現することが最善の方法であると各国政府に助言しています。