UNFPAは「人口動態の多様性と持続可能な開発」をテーマに世界の人口問題について話し合う国際会議を、5月15ー16日バングラデシュで開催しました。これは、国際人口開発会議(ICPD)30周年を記念する3つの国際会議(グローバル・ダイアログ)の1つで、バングラデシュ、ブルガリアとともに日本政府と共催しました。
1994年に行われたICPDは、女性やカップルが子どもをいつ、何人産むかを主体的に選択する権利「性と生殖に関する健康・権利(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)」を初めて提唱するなど、人口問題をマクロのアプローチから、人権を基にしたミクロのアプローチで捉える「パラダイム転換」した、初めての国際会議でした。
30周年を迎える今年は「人口動態の多様性と持続可能な開発」をテーマに、バングラデシュの首都ダッカで15日から2日間にわたって開催され、各国から200人以上の代表者が集まりました。
会議を主催したUNFPAの事務局長ナタリア・カネムは、世界の妊娠の半数近くが「女性が意図しない妊娠」で占められているとした上で、この問題について「性と生殖に関する健康サービスや包括的な性教育へのアクセスを拡大することが不可欠だ」と呼びかけました。
本会議の共催国である日本政府を代表して参加した穂坂泰 外務大臣政務官は「各国が人口動態の変化を的確に捉え、予測することは、持続可能な開発のために極めて重要」と強調し、日本政府は UNFPAなどのパートナーとともに、ますます多様化する人口動態と持続可能な開発の議論を世界的に牽引していきたいと述べました。
また、日本からは政府だけでなく民間からも多くの参加者が登壇しました。
SRHR Japan 池田裕美枝代表は、セッション4「人口変動における性と生殖に関する健康の未来」のセッションで、登壇者として参加するとともに、ファシリテーターも務めて頂きました。
NECグローバル事業推進統括部 野田眞ディレクターは、セッション5「テクノロジーとデータ:スマートな未来に向けてレジリエンスを高めるために」で、グローバルヘルスや農業の分野でNECのテクノロジーをどのように活用しているのか、革新的な取り組みをご紹介頂きました。
京都大学 森臨太郎客員教授は、セッション6「世代間のウェルビーイングと健康的な高齢化」に登壇し、エイジズムやそれがもたらす問題、また世代間におけるデジタル格差など、さまざまな世代間の課題について議論しました。
国立社会保障・人口問題研究所 の林玲子所長は、セッション11「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)と保健医療システム強化のための戦略、人口動態の変化と技術の進歩を踏まえて」に登壇し、開発課題と密接に関連し、開発のあり方に大きな影響を与える世界人口の変動について議論しました。
合同会社RDND 東輝実代表は、セッション13「誰も取り残さない:農村地域の人口動態の変化」に登壇し、過疎・高齢化地域の事例紹介として、ごみの減量やリサイクルにより「ゼロ・ウェイスト」を推進する徳島県上勝町の取組みやビジネスを紹介しました。
その他にも、日本の市民社会から、APDAの恒川ひとみ氏、 JOICFPの草野洋美氏、SRHR Japanの高木大吾氏、また東京大学の井筒節氏も参加しました。
今回の会議では二日間を通し、以下のテーマについて議論されました。
メガトレンドと人口移動が世界の人口動向に与える影響
人口動態の変化に対する計画におけるテクノロジーとデータの役割
緑豊かで多様性に富み、包摂的な都市の推進
人口の多様性、流動性、気候危機
世代間のウェルビーイングと健康的な高齢化
農村コミュニティ内のレジリエンスの推進
また本会議の他にも、4月4ー5日には「ICPD に向けた新世代のビジョン」をテーマにしたグローバル・ダイアログがベナンで開催され、ベナン、デンマーク、オランダが共催しました。この会議では、若者を支援する 200 の組織、リーダー、戦略的パートナーを集め、新しい世代のために ICPD 行動計画を再考しました。
6月27ー 28日は「技術の変化と ICPD アジェンダ」をテーマにしたグローバル・ダイアログがニューヨークで開催される予定です。
これら3つのグローバル・ダイアログの成果が、今年7月のハイレベル政治フォーラム、9月の未来サミットに盛り込まれるよう、引き続き取り組んでいく予定です。