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UNFPA事務局長 ナタリア・カネムの声明文                                                   

ー誰も取り残さないために、全ての人を尊重しようー

人類が進歩するためには、どこにいようと、誰であろうと、その多様性のすべてにおいて、人々は尊重されなければなりません。不平等を終わらせ、平和と繁栄を見出し育むため、そしてさらなる希望の糸を紡ぐために、世界は人々の多様性を受け入れるためにさらなる取り組みをする必要があります。

尊重されないということは、見えない存在とされ、結果として、支援を受けられなくなることになります。これは、紛争で避難した10歳の少女が医療を受けられなくなったり、障害のある高齢女性が危機に見舞われた時にセーフティネットが無いことにつながります。また、遠隔地の先住民コミュニティで生まれた新生児が、出生登録によって与えられるはずの保護を受けるための権利を持てないことにもつながります。

過去30年間、1994年の国際人口開発会議の呼びかけに応える形で、世界中の社会は人口データの収集、分析と利用において大きな進歩を遂げました。年齢、民族、性別などの要因で分類された新しい人口動態は、私たちの社会の多様性を反映しています。例えば、現在では約3分の2の国が国勢調査に障害に関する質問を組み込んでいます。

このような進歩により、世界中の人々へのヘルスケアの提供が改善され、性と生殖に関する健康、権利と選択を行使することが大幅に可能になりました。さらに、新しい技術により、かつてないほど多くの人々の経験をより詳細かつ迅速に把握することが可能になってきています。

それでもなお、最も疎外された地域のデータは依然として十分に反映されておらず、このことが彼らの生活と福祉に深刻な影響を与えています。UNFPAによる最近の調査では、国内外の不平等が急激に拡大していることが明らかになっています。例えば、多くの場所で、妊産婦死亡を追跡する統計において、人種的・民族的マイノリティの女性はほとんど調査対象外となっています。これは、保健・社会サービスが彼女たちのニーズを見過ごす一因となっており、これらの女性の出産時の死亡率が著しく高くなっているのです。

2024年の世界人口デーは、誰がいまだに尊重されていないのか、それはなぜか、そしてそれが個人、社会、そして「誰一人取り残さない」という課題に向けた私たちの世界的な取り組みにどのような影響を与えているのかを問い直す機会です。また、私たちのデータシステムが人間の多様性の全範囲を捉えるようにし、私たち全員がより多くのことに取り組むことを約束する機会でもあります。それによって、すべての人が認識され、人権を行使し、その能力を最大限に発揮できるようになります。

カイロ会議から30年、祝福すべき成果は多くありますが、まだ取り組むべき課題も多くあります。手を差し伸べるのが困難な人はいるかもしれませんが、到達不可能な人は誰一人いません。社会の周縁に追いやられた人々の権利と選択を実現するためには、彼らを尊重しなければなりません - なぜなら、すべての人がかけがえのない存在だからです。人類という織物の強さは、その中で最も弱い糸によって決まります。データやその他のシステムが周縁に置かれた人々のために機能すれば、すべての人のために機能することになります。これこそが、すべての人のための進歩を加速する方法なのです。