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モザンビーク北部カーボデルガード州イボ島:ジャミラさん*は3人の子どもを持つ23歳のお母さんです。カーボデルガード州の紛争で危険にさらされ、安全な環境と支援を求めて、2年前に同州内のイボ島へと避難してきました。モザンビーク本土から5キロメートルあまり離れたキリンバス諸島に浮かぶイボ島。次第に彼女はこの島を「ホーム」と呼ぶようになりました。

経済活動の機会も限られるイボ島の状況は、(国内避難民にとって避難時よりも)ますます困難なものになってきています。家族計画サービスを求めて、島のリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)を扱うクリニックを訪れたジャミラさんは、ピーナッツの販売で生計を立てようと試みたものの、「家族を養うために十分な生活費を稼ぐことはできませんでした」と振り返りました。

ジャミラさんは、平穏な環境を求めてイボ島へ逃れてきた約3万3,000人**の国内避難民の一人です。紛争が起こる前のイボ島は安全な場所であるとされてきましたが、現在は人道支援が届きにくい状況にあるうえ、さまざまな社会サービスも限られています。そのため、女性と少女はとりわけ大きな影響を受けています。

 

イボ島に暮らす人たちは、産科救急ケアや新生児ケアをはじめとする医療サービスへのアクセスが限られているなど多くの困難に直面しています。加えて、2019年に発生したサイクロン被害からの復興も今なお進んでおらず、気候変動の影響と脅威に一層脆弱な立場に立たされています。こうした状況を踏まえ、国連人口基金(UNFPA)は、モザンビーク政府による国内避難民の女性と少女を対象としたジェンダーに基づく暴力とリプロダクティブ・ヘルスのニーズ評価、拡充に向けた現在利用可能なサービスの調査などを支援しています。


地域の主要診療所兼入院施設として利用されているUNFPAのテント
の前に立つカーボデルガード州イボ島の若い女性。
© UNFPA Mozambique/ Alex Muianga

こうした状況を踏まえ、国連人口基金(UNFPA)は、モザンビーク政府による国内避難民の女性と少女を対象としたジェンダーに基づく暴力とリプロダクティブ・ヘルスのニーズ評

価、拡充に向けた現在利用可なサービスの調査などを支援しています。

 

ここ数ヶ月の間に、イボ島の女性と少女のもとには、月経や衛生管理など女性としての尊厳を保つのに必要な最低限の物資が入った「ディグニティ(尊厳)キット」が届けられました。このキットには、繰り返し洗って使える生理用パッドや下着、夜間に身の安全を守るための笛や懐中電灯などが含まれています。

 

イボ島の現在の医療体制では、必要な産科救急ケアや新生児ケアを十分に実施することができません。そのため、日本政府の支援により、複数のモバイルクリニック(移動診療所)が導入されることになりました。本プロジェクトは州政府主導の下、これまで支援が十分に届かなかったコミュニティの人々に、家族計画やジェンダーに基づく暴力の予防と対応を含むリプロダクティブ・ヘルス関連サービスを提供していきます。今年だけでもすでに、カーボデルガード州全体で、約3万2,000人の女性と少女がモバイルクリニックを通じた支援を受けています。

 

武力衝突により人道危機の状況が悪化しているカーボデルガード州では、73万2,000人以上もの人々がモザンビーク北部の5つの州に避難しましたが、そのうち16万人近くが出産可能年齢にある女性たちとされています(MISP推計)。女性と少女たちは、暴力と治安悪化の影響を最も受けており、ジェンダーに基づく暴力の脅威にさらされているほか、妊産婦死亡や望まない妊娠といった極めて深刻な問題に直面しています。

 

UNFPAモザンビーク事務所は、オーストリア政府、日本政府、ノルウェー政府からの人道支援に加え、国連中央緊急対応基金(CERF)とUNFPAの緊急対応基金を通じて、モザンビーク政府が国内避難民とホストコミュニティの女性と少女へのリプロダクティブ・ヘルス・サービス向上と保護サービス強化のための支援を行っています。

 

イボ島を取り巻く状況の悪化に伴い、最も脆弱な立場にある人々へのさらなる支援拡充が急務となっています。ジャミラさんのような女性たちにとって、モバイルクリニックや尊厳キットのようなサービスへのアクセスを増やすことは、からだの自己決定権や意思決定する力を生涯にわたって高めることに繋がり、紛争下で最も欠かせないライフライン(生命線)です。

 

*プライバシー保護のため名前を変更しています

**2021年4月時点