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開発途上国では実質的な改善がリプロダクティブ・ヘルスの促進や女性の権利向上の面で見られるものの、改善の進度が遅く、先進国の支援は不十分で、問題は多く残っている―オベイド事務局長は、1994年にカイロで開催された国際人口・開発会議(International Conference on Population and Development, ICPD)から10周年を記念して非政府組織が開催している国際的円卓会議「カウントダウン2015」に参加し、このように述べた。この会議には109ヶ国からおよそ700名が出席し、ICPDで掲げられた目標にどれだけ近づいたかその進捗が話し合われる。ICPDは、貧困削減という問題を女性の地位向上や性と生殖に関する保健医療の改善と関連づけたことで知られている。

総会ではカイロ会議以降の世界的な進捗が議論されるなか、オベイド事務局長は、「各国が採択したICPD行動計画はすでに各国の国家開発計画の一部となっています」と述べ、カイロ会議後に行われた数々の地域会議の場でも各国はさまざまな圧力にも屈することなく行動計画を再確認、着々と実施していることを強調した。また、オベイド事務局長は、「われわれは行動計画をなきものにしようとする勢力には断じて屈しない」という開発途上国政府の発言を報告した。

また、オベイド事務局長は記者会見で、「グローバル・サーベイ」(国連人口基金が169ヶ国の政府から寄せられた回答をもとに作成したアンケート報告書)によると、ほとんどの国が1994年以降、女性の権利やリプロダクティブ・ヘルスの向上のため対策をとっているとしながらも、妊産婦医療の改善やHIVエイズ蔓延防止、避妊薬(具)の供給などいまだ多くの課題があることを示唆した。

「妊娠したというだけでいまだに多くの女性が死亡しているのは、2004年の現代社会においては犯罪というべきです」とオベイド事務局長は述べ、熟練した出産介添や緊急産科医療など対策がわかっていながら、途上国の多くで特に貧しく若い女性に妊産婦死亡が高いままであるという事実をうったえた。また、事務局長は、妊産婦死亡が注目を浴びないのはその被害者が主に貧困層の女性だからである、と後に行われた作業部会で述べている。

記者会見で、オベイド事務局長はさらに、「毎日14,000人が新たにHIVに感染しており、その半数は女性です。また、新たな感染の半数が15歳から 24歳の若者です」と述べ、若者が自身を守れるよう知識や方法を確実に身につけるようわれわれは努力しなくてはならないと続けた。

リプロダクティブ・ヘルスプログラムに対する先進国の支援もICPDでなされた合意には程遠い。避妊具やHIV/エイズ予防のためのコンドームの供給に必要な資金のうち、ドナー(出資国)の占める割合は1994年から3分の1も減少しているなかで、こうした避妊具に対するニーズは2015年までに40%増加すると推定される。

ICPD行動計画への資金拠出の増額なくして、2015年にむけた国連ミレニアム開発目標(MDGs: United Nations Millennium Development Goals)に掲げられている、極度の貧困および飢餓人口の半減、HIV/エイズ感染拡大のペース低減、女性の権利向上、妊産婦死亡率の低下などの実現は難しい。「リプロダクティブ・ヘルスに十分な関心がもたれないかぎり、ミレニアム開発目標の達成はありえません」とオベイド事務局長は断言する。

この記者会見には、カイロ会議でも主要なメンバーであった国際家族計画連盟(IPPF: International Planned Parenthood Federation)スティーブ・シンディング(Steven W. Sinding)事務局長とガーナ大統領顧問(人口、リプロダクティブ・ヘルス、HIV/エイズ担当)のフレッド・サイ博士(Dr. Fred Sai)も列席した。両者は、共にオープニングセッションでも発言している。

「カウントダウン2015」はICPD目標の達成に向けて何をするべきかを取りまとめる上では、「NGO間の素晴らしい連携のたまもの」であったとシンディング氏は述べ、この10年の成功と失敗をこれからの10年に活かす必要性をうったえた。

閉会に際し、作業部会ではHIV/エイズ、貧困、母体保護、人権、性、人工妊娠中絶など重要な案件に関して提言がまとめられ、世界の指導者や政策決定者に向けて発せられる最終声明に盛り込まれる予定である。

この会議は「カウントダウン2015:すべての人々にセクシュアル/リプロダクティブ・ライツを」の呼びかけによるもので、Family Care International、IPPF、Population Action Internationalの3つの団体が立ち上げたものである。この3団体は今日、ICPD行動計画の履行を評価する『成績表』を公表した。それによると、23ヶ国で大きな成果がある一方、17ヶ国では成果が乏しい、または後退すらあるとされている。