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各国の国会議員がここストラスブールに参集し、人間一人一人のリプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)に対しより積極的な活動を展開するよう各国に呼びかけた。世界90カ国から130名を超える国会議員や大臣・閣僚が会議に参加し、個人が子供数や出産間隔を決定できる権利や女性の地位向上の推進そして女性に対するあらゆる形の暴力の撤廃に努める責任があることを改めて確認した。

二日間におよんだ会議では、1994年にカイロで開催された国際人口開発会議(International Conference on Population and Development、ICPD)にて179カ国が採択した20カ年「行動計画」の実施における国会議員の役割が本題となった。この「行動計画」では、 2015年までにすべての人に性と生殖に関する医療を提供することと妊産婦死亡の大幅削減が目標とされている。

カイロ会議の目標達成に関しては、各国にばらつきがありかつ進展も遅い。こうした現状を踏まえ、会議に参加した国会議員は自らの役割の重要性を確認し、資金調達による行動計画目標の早期達成や人口やリプロダクティブ・ヘルス/ライツに関する法律制定に全力を尽くすことを明らかにした。

世界では、妊婦のおよそ三割が妊娠中に一切検診・診療を受けることが出来ず、また六割の出産が医療施設以外で行なわれている。また、貧困が妊産婦死亡を大幅に増加させることも明らかになっている。女性が妊娠および出産で死亡する確率は西アフリカでは12人に1人であるのに対し、先進国地域では2800人に 1人である。会議では、オランダのアグネス・ヴァン・アーデン(Agnes van Ardenne)開発協力大臣が「開発途上国の多くの女性にとって妊娠するということは死を宣告されることと同じである」と発言した。

世界には、現在3800万人もの人々がHIVに感染またはエイズを発症しているが、感染の危険が高いとされる人々のうち予防手段を持つのは20%に満たない。予防手段を持つ人々の割合が大幅に増加すれば、2010年までに約2900万人から4500万人とも推定される新規感染者の予防が可能になるとされている。

ケニアのチャリティ・K・ンギル(Charity K. Ngilu)保健大臣は、ケニアで性と生殖に関する医療プログラムへのアクセスが限られてしまっているのは、医療費が高いことや医療関係の開発計画に対する国際的支援の減少によるものだと発言し、窮状をうったえた。

閉会式では、全参加者が宣言文を採択しカイロ会議の目標達成のために強い意欲を示した。また、こうした方針を支持するということは絶望的な人生を希望と機会に満ちている人生へと変化させるものであり、時として、生と死を分かつものであるとの認識を明らかにした。

宣言文では、以下のような内容が盛り込まれている。

•国家の開発予算と開発支援予算の少なくとも10%を人口およびリプロダクティブ・ヘルスの分野に振り分ける。
•国連人口基金(UNFPA)および国際家族計画連盟(IPPF)が支援するプログラムで必要な資機材のために年間1億5千万ドルの資金を調達する。
•安全な母性を保障するために必要なサービスを強化する(母性栄養や妊産婦検診の提供、助産師などによる出産、緊急産科医療の充実)。
•妊産婦に対するサポートに関する公教育の向上。
青少年の性に関する情報やサービスを受ける人権の擁護および推進、結婚年齢を定めた法律の徹底的な施行そして社会および家庭における男子・女子の平等の保障。
•リプロダクティブ・ヘルスに関する男性の責任や役割について男性に教育を行なうこと
•多数の国で見られる深刻な医療従事者の不足問題を是正する(不十分な研修、HIV/エイズによる死亡、先進国への流出などが主な原因)
議論の後、会議の全参加者は、「ミレニアム開発目標」の中に「2015年までにすべての人々に性と生殖に関する健康を保障する」ということを9番目の項目として追加するよう国連に提案することを決定した。さらに、国会議員グループを通じて進捗に関し定期的に報告することと次の会議を2年後にバンコクで開催することを決定し、散会した。

ICPD行動計画実施を推進するこの第二回国際国会議員会議は、欧州評議会議員会議が主催し、IEPFPDおよび国連人口基金の協力によって開催された。後援には、人口と開発に関するアジア国会議員フォーラム、人口と開発に関するアフリカ・アラブ国会議員フォーラム、人口と開発に関する米州議員フォーラム、そして地球的行動のための議員連盟が含まれる。