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国連人口基金フィリピン事務所の代表 加藤伊織が、1月8日、名古屋市の名古屋大学・鶴舞キャンパスで「Gender Equality and Leadership: A Perspective from the United Nations ジェンダー平等とリーダーシップ 一国連職員の視座」と題して講演しました。

 

同大学大学院医学系研究科の博士課程教育リーディングプログラムの「ウェルビーイング in アジア」実現のための女性リーダー育成プログラムの一環として開催された講演は、英語で行われ、同博士課程の院生や同プログラムの担当教員のほか、他の学生やOBら計20人余りが参加しました。

 

加藤はまず、数ある国連機関の中で、特に妊産婦死亡や性暴力の撲滅に注力しているUNFPAの役割を紹介。その後、生物学的な性別(sex)と違い、世の中で「男性だから」「女性だから」こうふるまうべきだなどと、それぞれが住む社会や文化によって規定される男性と女性の役割の違いとしてのジェンダー(gender)について話し合いました。次いでリーダーシップについてのディスカッションでは、全国連システムに2018年に新たに導入されたリーダーシップの枠組みについても取り上げました。また、日本を含め、保健行政だけでなく、政治や民間企業などの様々な分野で、リーダーや幹部層に女性が少ない現状について、その背景にはジェンダー不平等があることを指摘しました。女性が男性っぽいリーダーシップを発揮すると周りから「女性っぽくない」と非難され、逆に男性っぽくリーダーシップを発揮しないと今度は「リーダーにふさわしくない」と批判される調査結果などにも言及しました。また、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相や、温暖化対策の国際合意として2015年に採択されたパリ協定に至るまでの長年にわたる難しい交渉を粘り強くまとめたクリスティアナ・フィゲレス国連気候変動枠組条約事務局長 ら、変革的な女性リーダーを引き合いにして、女性には優れたリーダーになる特有の性質があるではないか、といた論点をグループ討議し、発表し合いました。

 

加藤は最後に、女性と男性は往々にして違うリーダーシップを発揮するが、どちらのほうが優れているというよりは、両者は補完的であるとして、だからこそなおさら女性のリーダーを増やし、リーダー層にも多様性を実現することの重要性を訴えました。参加者に対し、誰でもリーダーになれる素質があると促し、リーダーになったあかつきには特にempathy(異質なる他者を想像し共感できる能力)とcivility(礼節)を欠かさないことが肝要だとまとめました。