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※このイベントは終了しました

 

新型コロナウイルスは単に個人の健康への影響だけでなく、国家間の関係や人の国際移動、開発支援、国際保健衛生のあり方などに深刻な影響を与えています。国際協調とマルチラテラリズムを基調とする国連は、どのようにこの状況に対処していったら良いのでしょうか。

 

7月4日15:00より、上智大学主催でオンライン・シンポジウムが開催されます。

UNDPの近藤哲夫駐日代表とともに、UNFPA東京事務所長の佐藤摩利子が登壇し、国連の最新報告も踏まえて議論します。

 

ぜひ、ご参加ください。

 

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■タイトル:上智大学特別シンポジウム「コロナ禍と国連」

■日時: 7月4日(土)15:00~16:30

 ※オンライン開催(Zoom)

■対象:上智大学学生、高校生、一般

■言語:日本語

■参加費:無料

■要事前登録:こちらからお申込みください。

 ※申込締切202073日(金)1200

■お問合せ先:上智大学 国際協力人材育成センター E-mail : hrc-ic-co@sophia.ac.jp

 

■プログラム

<開会挨拶> 曄道佳明 上智大学学長

<モデレーター> 杉村美紀 上智大学グローバル化推進担当副学長

<パネリスト>

植木安弘 上智大学グローバル・スタディーズ研究科教授

東大作 上智大学グローバル教育センター教授

近藤哲夫 国連開発計画(UNDP)駐日代表

佐藤摩利子 国連人口基金(UNFPA)東京事務所 所長

 

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※以下、イベント終了後掲載

 

毎日新聞で上智大学特別シンポジウム「コロナ禍と国連」が紹介されました。

上智大学通信で上智大学特別シンポジウム「コロナ禍と国連」が紹介されました。

 

●いただいたご質問への回答

先日のシンポジウムでは多くの方のご参加、そして沢山のご質問をいただきありがとうございました。特に学生の皆さんの真っ直ぐな質問が心に残りました。お時間の関係でシンポジウム中にお答え出来なかったご質問や議論できなかったところを、以下で補完的に共有いたします。引き続き、UNFPAの活動、国連の活動、上智大学の活動へのご支援をよろしくお願いいたします。

UNFPA東京事務所のSNSアカウントも是非フォローしてみてください。UNFPAの活動、女性の健康・権利、ジェンダーの問題、人口問題などについて、日々発信しています。

Twitter:@UNFPA_Tokyo

Facebook:@unfpa.tokyo

Instagram:unfpa_tokyooffice

なお、以下の回答には個人の見解も含まれており、必ずしも国連人口基金(UNFPA)や国連の公式的な見解を示すものではないことをご了承ください。

1 当日いただいたご質問のうち、UNFPA関連のもの

●GBV予防と対策は、Health pillar/clusterの中に含まれていますか、それともSocial and economic responseの中に含まれていますか? 

→(回答)これは、UNDPの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する取組みについての話の中でいただいたご質問だったと理解しています。COVID-19に対するUNDPの総合対策の第二弾である「Beyond Recovery: Towards 2030」では、GBVについては「Governance – building a new social contract」という柱の中に含まれています。

 他方で、国連全体の「COVID-19への即時の社会経済対応に向けた国連枠組み」では、GBV対策は「PROTECTING PEOPLE: SOCIAL PROTECTION AND BASIC SERVICES」という柱の中に含まれています。なお、この国連枠組みは5つの柱(①Health First、②Protecting People、③Economic Response and Recovery、④Macroeconomic Response and Multilateral Collaboration、⑤Social Cohesion and Community Resilience)で構成されています。

 

●女性の貧困のことに興味があるのですが、先進国の私たちができることは何でしょうか。ご意見を聞かせていただきたいです!

→(回答)先進国ができる女性の貧困への対応としては、例えば、先進国である日本の知見を活用した事例があります。花王株式会社とUNFPAウガンダ事務所の共同プロジェクト(「ウガンダ月経衛生環境向上プロジェクト」)です。これは、生理用ナプキンが買えずにバナナの皮などで代用したり、月経のために学校を休まざるを得ないような少女たちをゼロにすることを目指したプロジェクトで、低所得家庭や難民キャンプで暮らす女性や少女たちを対象に、生理用ナプキンを支援しています。この生理用ナプキンは、地元で入手できるサトウキビの繊維から作られているため、地方に住む少女たちも手頃な価格で購入できます。これにより、少女たちの教育機関への参加のチャンスを広げ、女性たちの経済力の向上と社会進出の拡大を支援することにも繋がっています。このように、先進国が持つ知見を女性の貧困対策に活用することができると思います。

 また、貧困の定義は金銭的なものだけではありません。差別や格差により教育や医療などへのアクセスが限定された結果貧困となり、貧困は格差の「結果」とも言えますし、貧困であるがゆえに教育や医療にアクセスできないという悪循環もあります。「貧困の女性化」(feminisation of poverty) という言葉があるように、世界的中で女性の方が貧困になる割合が多くなっていますが、貧困の原因はそれぞれの国や地域において断ち切る事が重要です。

 また、先進国と言っても、日本でも貧困は増えています。私たち1人1人、特に若い世代で身近にできることの1つは、国内外で起こっている女性の貧困の現状、貧困が起こる要因や背景を正しく「知ること」と「広めること」です。どんな問題があるのかまずは知ることが、私たち1人1人が、今後自分の知識やスキルを活かして何ができるのかを考える出発点ではないかと考えます。

 

●佐藤摩利子先生の話を聞いた上での質問です。なぜ、そもそも女性の地位は最初から低いのですか。また、何をきっかけに差別が生じたのですか。

→(回答)女性の地位が低い理由は、国・地域によって異なります。また、歴史的・社会的・文化的な背景が絡む複雑な問題です。例えば日本では女性の地位に関してどのような歴史があったのか、女性の地位が低いと見なされたのはいつ頃からなのか、色々な社会学的・女性学的な見地・見解や研究がありますので、是非調べてみていただければと思います。

 個人的なお答えとなりますが、私(佐藤東京事務所長)も同様の基本的な疑問の答えを求めて再渡米をしました。女性学を学部で専攻したのです。「オナゴに教育いらない、オナゴのくせに」と言われて育ち、女性であることで劣っていると自己否定されている事が悔しく、父親を恨んだ事もありました。大学で学んだことは、これが「構造的差別」で人間の「欲」が原因という事でした。権力を持っているグループが、その権力を固辞し優位に立ち続けるために、何らかの差別的理由を作ることで、女性、貧困層、障害者、高齢者、人種的マイノリティ、性的マイノリティなどのグループを競争から排除しているという背景が差別の裏にはあるということを学びました。さらに、私の父親にこのように思わせる社会や慣習(”当たり前”)があることも要因でした。しかし、当時の周りの女性たちは、このような考え方でも仕方がないと、疑問に思うことさえあまりしなかったと思います。疑問に思ったことを大切にして周りと共有していただき、それを変革を起こすための起爆剤としていただければと思っています。

 

●マダガスカルで助産婦が家に出向き、出産をサポートをしていると仰っておりましたが、それらの国内でどれほどのスケールでサポートがなされているのでしょうか。というのも、提供しているサポートの特性上、郊外・田舎では実行が難しいのではないかと感じました。

→(回答)UNFPAはマダガスカルで、COVID-19への取組みとして、妊産婦の病院と家の無料送迎を支援しているとお話ししました。これは、マダガスカルのアンタナナリボとトゥアマシナという2つの地域の病院を訪れる予定の妊産婦を病院まで送迎するものです。この送迎がなければ、妊産婦は病院まで約2時間歩かなければならないほどの遠隔地からの送迎を行っています。(詳細はこちら

 

●UNFPAのジェンダーに基づく暴力や、児童婚、FGMの取組みが、何故(どのように)人口問題の解決に繋がるのでしょうか?

→(回答)FGMで妊娠ができない、児童婚で妊産婦死亡が増える、望まない妊娠で中絶を選択せざるを得ない(それが生涯の心のトラウマになる)などの問題が起こっており、これらは人口問題に関連しています。医師が「外傷」は癒せても、「心の傷」は見えないもの。UNFPAは見えない心の傷にも対応しています。

 

●私達にできることは何か?国連に必要な人材は?

→(回答)国連職員として、多様性のある人材や、寛容な社会・「強制から共生」を作れる人材が必要です。またサイエンスを信じることも重要です。たまに「聞いていない/教えられていない」から分からないという人がいますが、「何が正しいか?」を自分で判断することのできる人材、また、リスクをとること(リスクをとらせる環境作り)ができる人材が必要だと考えています。

プレゼン資料のスライドを下記に共有します。

 

●UNFPAをはじめ、国連機関の中にはヘルスを扱う機関が複数あるかと思いますが、それぞれの役割のすみわけなどはどのようにされていますか?

→(回答)グローバル、カントリーレベルでヘルスの調整システムがあります。また、「H6 partnership」 というUNFPA, UNICEF, UN Women, WHO, UNAIDS,the World Bank Groupの6つの機関のグループがあり、女性や子ども、新生児のための医療保健サービスの改善や保健システム強化を支援しています。(詳細はこちら

 

●今高校で私自身period povertyについての活動をしています。生理によって、教育が受けられなかったり、格差が起こっています。これは女性の社会進出に深く関係してくると思います。なぜ女性はそのように差別の対象となってしまうのでしょうか。また、そのような発展途上国のマイノリティーの方に対してできることは何でしょうか。佐藤さんはどうお考えになるでしょうか。回答していただけると嬉しいです。

→(回答)ウガンダで花王さんと生理用品のスタートアップ企業を応援しています。UNFPAのホームページを見てみてください。また、#なんでないのプロジェクト、福田和子さんをフォローしてみてください。

 生理に関してはタブー視され、あまり取り上げられる機会がないのですがとても重要な観点です。「産む性」である女性がそれが理由で教育の機会が奪われたり、就業機会が失われた結果、貧困な状況になるのを避けるべきです。ネパールでは、生理中の女性が隔離小屋へと追いやられる慣習があり、小屋で命をおとすという悲惨な事件も起きています。

 

●佐藤さんより「国連憲章はthe peopleで始まり、なにより人権に基づく」とありましたが、一方で憲章内では、people, nation, stateを巧みに使い分けているかと思いますし、加盟できるのはstateであり、様々な理由でstateと認められないコミュニティは加盟できていません。そのような中でSGDsの掲げる ”Leave No One Behind”の理念をどのように達成するのでしょうか。

→(回答)憲章を採択したのは加盟国で、国連を構成しているのは加盟国(政府)です。その中で、各国が連合する目的として「人々」という文が冒頭に明確に記載されているところに意義があると思います。国連は加盟国による駆け引きがおこなわれる場でもあります。私たち国連機関はその中で、いかに国のsovereignty(主権)を担保し尊重しながら、同時に人権を保証していけるかの折り合いを見つけ出すために活動しているのだと感じます。様々な決議案や共同声明などはそのためにあります。人々や人権に焦点を当てることで取り残されている人々を察知し、国際社会に訴えていくということが求められていると思います。

2 事前にいただいたご質問のうち、一部のもの

●エピデミックとパンデミックの違い。WHOは何故迅速にパンデミックを宣言しなかったのか。宣言することによってWHOの権限や対策を強化することが出来たのか。(一般)

→(UNFPA東京事務所のインターン(医師)からの回答)感染流行には一般に3種類の規模が疫学上の定義としてあり「エンデミック」「エピデミック」「パンデミック」に分けられます。端的に言えば、エンデミックは「国内1地域での感染流行」、エピデミックは「国内複数箇所に渡る広範な感染流行」、パンデミックは「複数の国に渡って拡大する感染流行」を指すのが一般的です。従って、基本的に「中国国内での感染流行」が起きている段階では(仮に感染性・流行性の高い病原体だったとしても)「エピデミック」であり「パンデミック」とは呼びません。宣言に伴い「各国が」感染に対する危機意識・連携・対策を(場合によっては国際的な枠組みで)速やかに練ることに繋げるのが目的です。

 

●人権促進のために若い世代は何が出来るのか。駐日国連機関はどんな人材を求めるのか。(大学生)

→(回答)人権促進のためにできることとして、まずは世界でどんな問題が起こっているかを「知ること」だと思います。興味のアンテナを張り、人権問題を学んでいただければと思います。また、国籍・年齢・人種・性別の異なる人と、幅広く関わること(自分の接したことのないタイプの人と積極的に交流すること)も大事です。個人レベルでお互い違いを認めあい、理解し尊重し合えれば、人権促進は進むと考えています。

 世界の平和はこのような人権尊重が基礎であり、特にコロナ禍では重要な課題であると考えています。アントニオ・グテーレス国連事務総長は、ビデオ・メッセージの中で、COVID-19流行下で人権を尊重する重要性を呼びかけています。