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ベナン、コトヌ — 2020316日に新型コロナウイルス感染症によるパンデミック(世界的な流行)の波がベナンに押し寄せた時、保健当局はこのウイルスが健康上の優先事項、特に妊産婦と新生児の健康に深刻な脅威をもたらすことがわかっていました。コロナ禍で、医療従事者のための個人用防護具は不足し、多くの医療施設は閉鎖されました。コトヌにあるラギューン母子病院では、医療従事者が新型コロナウイルスに感染したことで、スタッフの半数が隔離を余儀なくされ、施設を閉鎖せざるを得なくなりました。

 

ベナンの保健当局の職員やUNFPAをはじめとする人道支援団体も、遠隔地や農村地域でのヘルスケアに関する物流がとりわけ影響を受け、サービスの継続ができなくなるのではないかと懸念を抱いていました。

 

「人々が輸血を必要としている一方で、血液ははるか遠くから運んで来なければならないと。医療従事者としてこの状況に頭を抱えていました」と、イスマイル・ラワニ医師(外科医)は話しました。

 

プロのドローン・パイロットでもあるラワニ医師は、コロナ禍で武田薬品工業株式会社の支援を受けスタートしたUNFPAのプロジェクトに参画。ドローンを駆使して、人々の健康維持に欠かせない必要な医薬品、特に母体の健康に欠かせない医薬品や輸血用の血液を、孤立した地域へと届けています。

 

ローカルの専門知識を活用

 

ドローン・プロジェクトは、最大5kgの物資を搭載した状態で15kmの距離を移動することができるドローンを使用して、2021年のはじめに試験走行を開始しました。

 

本事業は、農業、調査、生物多様性など多岐に渡るプロジェクトにドローン技術を開発・提供している地元のスタートアップ企業グローバル・パートナーズ社の協力を得て行われました。プロジェクト対象地域についての知識を持ち合わせていることは、パンデミック関連のニーズに対応するためだけでなく、すでに起きていた物資供給と輸送の課題を克服するためにもとても重要でした。

 

「ベナンには、この一年でとりわけ特定の時期に孤立してしまった地域がたくさんあります」と、ドローン・プロジェクトを率いるUNFPAベナン事務所代表 ジャワド・ラマノウは説明。「例えば、フィルーでは他の村々へとつながる小さな橋がありますが、雨季になると水位が上がり、完全に孤立してしまいます。しかし、ドローンを使うことで、フィル―の産科病棟にたどり着くことができます。以前は雨が降ると病院は閉鎖され、患者は必要なケアを受けることができませんでした」

 

命を救う活動を継続

 

十分な医薬品を確保するためにドローンを使用することで、健康上の緊急事態に大きな変化がもたらされています。例えば、遠隔地で深刻なニーズがあるとラワニ医師が指摘していた輸血用の血液の供給は、妊産婦が分娩後の出血(世界的に妊産婦死亡の主要な原因の1つとされる)を経験するときに必要とされるものです。

 

フィルーで活動するジャーマイン・バログン助産師は「医薬品などの供給が途絶えたとき、もしドローンがなかったら、患者をケル―にある医療センターに緊急搬送しなければなりませんが、それは多くの患者が搬送中に命を落としてしまうかもしれないということを意味しています。ドローンは私たちのヘルスセンターで、妊産婦死亡のリスクを減らしてくれています」と話しています。

 

本文は当該ニュースを、駐日事務所にて独自に翻訳、編集したものです。