国連人口基金(UNFPA)が本年度発行する『世界人口白書2012』は、「By Choice, Not by Chance: Family Planning, Human Rights and Development(偶然に委ねず、自ら選ぶ ― 家族計画、人権、そして開発)」をテーマとしています。
UNFPAは、その報告の中で、自発的な家族計画は基本的人権であると主張しています。さらに、「人権」である以上、家族計画を希望するすべての人々が計画を実行できるようにしなければならないと考えます。地球上の人間一人一人がほんの1ドル手にすることができれば、誰もがこの権利を行使することができるようになります。
家族計画は、私たちが健康や女性の権利を守り、青少年の人生を適切な方向へ導くために行うことのできる極めて重要な投資の一つです。年齢に応じた性教育が施され、避妊法を取り入れられるようになれば、青少年たちは実際に彼らの望み通りの条件で学校教育、仕事、妊娠および出産の計画を立てることができるのです。
しかしながら、家族計画の価値を肯定する誓約、決議、および協定などが存在しているにもかかわらず、実に2億2,200万人という驚異的な数の開発途上国の女性たちがいまだ家族計画を利用できない状態となっています。こうした格差が起きている要因は数多く挙げられます。例えば、途上国では男女含め人々の生活において、利用できるサービスが限られている、コストが高いといった状況や、その他数々の条件などにより、すべての人々がセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスのサービスを利用することができていないことも要因の一つです。途上国では、このような障壁が人々の権利を制限してしまっているのです。
議論の余地もなく、家族計画を利用できないことが原因となって、貧困やジェンダーの不平等が消えることはなく、また人間の基本的欲求を満たすべく奮闘している貧しい国々では人口圧の問題が生じかねません。個人が自由に、責任を持って子どもを何人、またいつ産むかを決める手段および権限がなければ、女性は健康を害し、貧困にあえぐ危険性にさらされる可能性が高くなることは周知の事実なのです。
データによると、家族計画へのアクセスにより、個人・国家双方のレベルで前例のない報酬を受けることができるようになり、こうした取り組みの中で経済発展への貢献が見られるケースもあることが分かっています。こうした極めて個人的な決定の効果が次第に増大していけば国や地域全体への影響が期待できます。すべてを考え合わせると、個人的な決定を行うことが生活を向上させる政策を生み出すきっかけとなり得るのです。
メキシコや、アジアの虎と呼ばれる経済的急成長を遂げたアジア諸国では、そのますます活気を呈している経済がさらに改善されていますが、国が国民のために行う開発投資の増加に伴い、各労働者の扶養家族の数が減少していることが原動力となり、目覚ましい社会的・経済的成長が促進されていると考えられます。
実際、UNFPAの世界人口白書の報告によると、家族計画の実行により、開発面で明確な波及効果が生まれていることが分かっています。
国際社会が年に81億ドルの投資を行えば、私たちはアンメットニーズ(満たされていないニーズ)をゼロにすることができ、また何百万人という人々が思い通りの人生設計を行うことが可能となります。
私の祖国、ナイジェリアでは、最近行われた調査によって、女性一人につき、子どもたった一人分出産率が低下するだけで、国民一人当たりの年間所得は20年間にわたり、年1,452ドルから1,640ドルにまで増加するであろうことが明らかとなりました。この増加分の金額をナイジェリアの総人口に掛け合わせてみれば、同国の経済は少なくとも300億ドルの成長を遂げることとなります。各カップルが毎年、この増加分の所得を投資すれば、人権は保障され、ひいては経済的な原動力となるのです。
私が支援のために訪れるどの国においても、女性たちが口にするのは同じ意見、つまり「私たちは子どもを少なく生みたいと思っているけれど、意図しない妊娠を避ける権限がなく、またその手段も分からない」というものです。
同じく多くの男性たちも、妻やパートナーが望む人数だけ子どもを産むことができるよう支援するための方法を知りたいと語ります。
男女を問わず、こうした人々が家族計画の権利を入手するには、何としても私たちの支援が必要です。政府やサービス提供者は、自発的な家族計画の実行を望むすべての人々、特に貧困層が実際に計画を実行できるよう徹底しなくてはなりません。
その実行をはばむ財政面、社会面、およびその他の面での障壁は、私たちの力で取り除くことができます。
また、青少年に対しては、生活指導や年齢に応じた性教育指導を行うことが可能です。
そして、女性の権利を守る法律を作り、執行することも可能です。
多くの皆さんがご存知のように、2012年7月に開催されたUNFPA、英国政府、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、およびその他の提携組織共催による「家族計画サミット」では、2020年までに、途上国においてさらに1億2,000万人の女性が自発的な家族計画のサービスを受けることができるよう目標を定め、資金の獲得が行われました。
これにより、前向きな一歩が記されたこととなりますが、私たちはさらに、より一層の努力を重ねなくてはなりません。
開発途上国では、各国が家族計画への資金提供の取り組みを促進しています。ロンドンで行われた前述のサミットでは、こうした国々が多額の拠出を約束しました。
家族計画に対するこのような新しい投資の動きについては、それがセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスの改善における、国としての取り組みの一部である場合、さらなる効果が期待できます。
国際社会は、「家族計画とは、開発のほぼあらゆる側面で中核をなすものである」と宣言しています。そのため、家族計画は、ミレニアム開発目標の最終年である2015年以降に提起される世界的開発課題の解決において重要な役割を果たす必要があります。
何億人もの女性、男性、そして青少年たちが、自らの権利を支持するために私たちの力を必要としています。私たちは彼らを失望させてはならないのです。