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UNFPA事務局長ナタリア・カネムは、世界人口白書2021の発表に際し、声明文を発表しました。

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声明文
ナタリア・カネム 国連人口基金(UNFPA)事務局長
世界人口白書2021 わたしのからだはわたしのもの

今日この瞬間、世界中のどこかで、 

思春期の少女が、女性としての自覚を持ち始めます。彼女は通過儀礼を受けさせられることを知ります。そして、それは女性器切除の傷を生涯負うことを意味します。また別の少女は、今日は結婚式の日だから、衣装を着るようにと言われます。彼女はまだ13歳にもなっていません。ある女性は、避妊薬・具を得るために村の保健所まで数時間かけて歩きます。しかし、ようやく到着したものの、無情にも夫の同意なしには処方できないと告げられます。
世界中で、自分の体や人生をコントロールできない女性や少女がいます。女性には自分の体について自分で決定する権利があるにも関わらず、自分にはその権利を行使する力があると主張できる女性はどれくらいいるでしょうか。

国連人口基金 (UNFPA) の最新の報告書『世界人口白書2021』によると、データをを入手できた国々では、約半数の女性が自身に関する事柄について判断を下す力を持っていないことを示しています。

パートナーとの性行為について。

避妊をするかどうか。

医者に診てもらうかどうか。

これらの決定は、女性たちのパートナー、家族、社会、さらには政府など、他者によってなされたり、影響を受けたりすることがよくあります。からだの自己決定権とは、自身の体について、暴力を恐れず、他の誰かに決められることなく、自分で選択できる力と主体性を持つことを意味します。この権利と密接に関係しているのが、からだの尊厳であり、人々は同意していない身体に関する行為から解放されて生きることを意味(定義)しています。多くの人々、特に女性と少女にとって、人生はからだの尊厳と、からだの自己決定権の侵害と隣り合わせです。

避妊方法の選択肢が無いために予期せぬ妊娠をしてしまうことも、その一例です。家や食べ物と引き換えに、望まない性行為を迫られるという恐ろしい取引が行われていることも事実です。また、女性器切除や児童婚など、人生を狂わせてしまう慣習も存在します。多様な性的指向や性自認を持つ人々が暴行や屈辱を受ける不安を感じながら街を歩くことや、障害を持つ人々が自己決定、暴力からの解放、安全で満足のいく性生活を享受する権利を剥奪されたりすることは、自己決定権が侵害されていることを意味します。

レイプのような暴力は、犯罪として扱われていても、必ずしも起訴されない場合があります。また、地域社会固有の規範や慣習、法律によって正当化されているため、告発されない暴力もあります。夫やパートナーが女性の意思に反して中絶を強要したり、妊娠させたりすることは、からだの自己決定権は侵害に当たります。また、からだの自己決定権は、いわゆる「矯正レイプ」、「名誉殺人」や「処女検査」などの習慣によっても侵害されます。このような自己決定権は侵害の例は、枚挙にいとまがありません。

そして、状況はさらに悪化しています。昨今の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、性暴力は増加し、医療へのアクセスはさらに困難となり、予期せぬ妊娠、仕事や教育機会の喪失など、女性の自己決定権がさらに損なわれています。からだの自己決定権を阻害するものは数多くありますが、その中でも最も気がつかぬ間に蔓延しているものはジェンダーの不平等でしょう。
ジェンダー的に不平等な規範や態度は、対等な人間関係を崩し、特に性交渉や妊娠に関する女性の決断を制限したり、女性が生活のあらゆる面で夫やパートナーに従わなければならないという先入観を植え付けます。

真の意味での持続的な進歩は、ジェンダーの不平等やあらゆる形態の差別を根絶し、それらの基盤となっている社会的・経済的構造を是正できるか否かに掛かっています。そのためには、より多くの男性の支持が必要です。さらに多くの男性が、からだの自己決定権を著しく損なう特権と支配の構造から脱却することに取り組むことが不可欠です。

大胆な目標ではありますが、ジェンダー平等は、持続可能な開発目標(SDGs)の5番の目標として、また今年25周年を迎える「北京宣言及び行動綱領」の目的として、国際的に合意されたものです。

完全なジェンダー平等を実現している国はまだありません。つまり、すべての国がジェンダー平等の実現のためにさらなる努力の余地があるのです。

政府は、この目標を達成するために、主導的な役割を担っています。政府は、女子差別撤廃条約(CEDAW)や子どもの権利条約などの人権条約に定められた義務を果たすことで、ジェンダー的に不平等な規範を制限し、それを助長する社会的、政治的、制度的、経済的な構造を変えることができます。

からだの自己決定権は、健康を保障する権利や暴力に脅かされずに生きる権利など、すべての人権を享受するための基盤となります。したがって、私たちが意味のある方法で自らの選択を実行するために、制度や指導者はあらゆる支援や資源を提供する義務があります。

しかし、私たちは義務だけでなく、機会にも目を向けなければなりません。自分のからだをコントロールできる女性は、彼女の生活におけるその他の領域でも力を発揮できる可能性が高まります。つまり、自己決定権だけでなく、自らの健康状態や教育水準、収入や安全性も向上します。その結果、彼女だけでなくその家族も健康的に生活できる可能性が高まるのです。

このような恩恵が社会全体にもたらされることを考えると、すべての人が十分な情報を得た上で自分のからだや未来について決定権を持てるようになれば、地域社会や国全体も発展することにつながるのです。全ての人々が自らのからだの自己決定権を持つことができるようになれば、より大きな正義と人々のウェルビーイングを実現することにつながり、それは私たち全てに恩恵をもたらすことになるのです。

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