リビア、ガート―ニジェールからの移民女性のラーマさん(18歳)が自宅で出産をしていた時、難産、内出血、ヘモグロビン値の低下などの出産に伴う合併症が起き、母子ともに命が危ない状況でした。
彼女が急きょ運ばれたのは、ガートにあるモバイル・ヘルス・ユニット(移動式医療ユニット)。ここで帝王切開と輸血を受けた後、ラーマさんは健康な男の子を無事に出産しました。
「私よりも子どもの命が危ないのではないかと心配したのですが、ありがたいことに母子ともに無事でした」とラーマさん。この時生まれた男の子は、アーメドと名づけられました。「私たちの移民・難民のコミュニティは、この医療施設とスタッフに多くの命を救われています」
求められる医療制度の強化
武力紛争、長引く情勢不安に加えて、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)により、以前から不足していたリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)関連サービスへがさらに困難な状況になり、女性と少女の生命に大きな影響が出ています。ガートのように、アルジェリアとの国境に近い地域にある遠隔地では、ヘルスサービスへのアクセスはさらに難しいものになっています。
2018年以来、UNFPAとパートナー機関は、医療チームリーダー、産婦人科医2人、小児科医2人、麻酔科医、一般医、助産師2人で構成されるモバイル・ヘルス・ユニットを全国に展開しています。このユニットは、さまざまな医療施設で、2か月ごとのローテーションで任務にあたっています。
これらのチームは、一般的な健康相談と応急処置に加えて、基本的かつ包括的な産科および新生児ケア、家族計画、ジェンダーに基づく暴力の被害者のための医療ケアを含む母子保健サービスを提供しています。
「私たちの医療システムは以前、リプロダクティブ・ヘルスを含めた医療サービスへのアクセスを確保するため、外国からの医療従事者に大きく依存していました」と話すのは、リビア保健省の移動式医療コンボイの副責任者であるファティ・アブラス氏。「しかし、政情不安に加えて不安定な治安情勢により、人的資源は大きく不足してしまいました。 そんななか、UNFPAはヘスルサービスの拡大に多大な支援を提供してくれました」
より多くのサービスでより多くの人々にリーチするために
移動式医療ユニットを通じた医療支援と熟練した助産師へのアクセスの拡大は、近年、リビアの新生児死亡率を低下させています。
過去3年間で、25,000人以上の女性と少女がリプロダクティブ・ヘルス関連サービスの恩恵を受けており、10万以上の世帯が同様にリプロダクティブ・ヘルスに関する情報へのアクセスを向上させたり、啓発活動に参画したりしています。欧州連合(EU)のアフリカ信託基金は、トリポリ、サブハ、ベンガジのモバイル・ヘルス・ユニットを支援しており、日本政府はガートとウム・アル・アラネブの各都市のユニットを支援しています。
パンデミックの渦中で、UNFPAが支援する医療施設は、基本的なリプロダクティブ・ヘルス、母子保健、メンタルヘルスに関するサービスを維持する上でとても重要な役割を果たしています。こうしたサービスは、国内のプライマリー・ヘルスケア施設の90%では利用することができないからです。モバイル・ヘルス・ユニットは、他の施設では利用することができない新型コロナウイルス感染症対策と家族計画サービスについても活動を行っています。
「2021年には、10,000人を超える人々に医療サービスを提供してきました。それでも、総人口690万人のうち130万人以上が基本的なヘルスケアへのアクセスを欠いています。医療施設の大部分は機能していないか、物資や人材が不足しています。状況がさらに悪化する前に、私たちはできる限りのことをする必要があります」と、リビアのUNFPAリビア事務所代表のアスル・トソンは話しています。「私たちは、リビアとその人々のより安全な未来のために、パートナーとドナー機関に引き続き協力を求めたいと思います」
本文は当該ニュースを、駐日事務所にて独自に翻訳、編集したものです。