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ブータン:宗教と保健教育の垣根を越えて

ブータンの伝統的な暦の上では、「月の10日」は特別な日です。ヒマラヤに位置し仏教徒が国民の大多数を占めるブータンの寺院や僧院では、ツェチュ祭の一環として宗教的な仮面舞踏を行い、この日を祝います。現在、この伝統的な踊りには、これまで「タブー」とされてきたリプロダクティブ・ヘスル(性と生殖に関する健康)やジェンダーに基づく暴力など、人生にかかわる重要なメッセージが込められています。

 

僧侶たちの意識が変わり、以前は個人的な問題とされていた性暴力やジェンダーに基づく暴力について、自由に議論したり意見を述べたりするようになりました。

 

首都ティンプーにある中央僧院のシェラブ・ドルジ師は、「僧侶たちの意識が変わり、以前は個人的な問題とされていた性暴力やジェンダーに基づく暴力について、自由に議論したり意見を述べたりするようになりました」と話しています。彼は、国連人口基金(UNFPA)が実施したイフスキル教育のためのトレーニングに参加したブータンで最初の僧侶の一人です。

 

サンゲイ・チョデン第4代国王王妃​​は、この変化を推進するためのカタリストとなっています。1999年からUNFPAの親善大使を務め、2020年の国連人口賞を受賞した王妃は、過去20年間にわたり、ブータン全土の女性と少女のリプロダクティブ・ヘルスを向上させるために道を切り開いてきました。また、遠隔地のコミュニティや僧侶グループ、軍隊、学校、政府機関など、社会のあらゆる立場の人々に手を差し伸べ、保健サービスを推進し、ジェンダー平等やセクシュアリティ、若者のHIV/エイズ予防に関する意識を高めてきた真の政策提言者です。

 


UNFPA親善大使のサンゲイ・チョデン第4代国王王妃は、20年以上にわたり女性の健康と権利の啓発活動を行っています。
Photo courtesy of Pema Tshering

 

このような有力な政策提言により、教育機関や僧院に家族計画、包括的な保健教育、リプロダクティブ・ヘルスを取り入れることが支持され、1990年代には、トゥルク・ジグミ・チョデラ大僧正が、家族計画に関する仏教の見解を発表する中で、避妊が仏教の原則に反するものではないことを確認しました。

 

UNFPAブータン事務所は2011年以降、尼僧院を支援するブータン尼僧財団をはじめ、変化の担い手である宗教指導者との連携を強化してきました。この10年間で、26の尼僧院の1,500人以上の尼僧が、リプロダクティブ・ヘルス/ライツや、ジェンダーに基づく暴力の予防について知識を得ており、80人の尼僧と、中央僧院長を含む350人の僧院長が、ライフスキル教育を行うためのトレーニングを受けています。

 

劇的な変化を目の当たりにしました。尼僧たちは月経についてオープンに議論し、自分たちで生理用品を作るようになりました。

 

「劇的な変化を目の当たりにしました。尼僧たちは月経についてオープンに議論し、自分たちで生理用品を作るようになりました」と、ラモ尼僧。

 

「尼僧は、子宮頸がんの検査、月経衛生、避妊、家族計画といった健康に不可欠な知識を農村部の女性に伝えるという重要な役割を果たしており、その結果、コミュニティの信頼、尊敬、信用を得ています」と続けました。

 

2014年、UNFPAはライフスキル教育をベースとした包括的な保健教育事業を男性僧侶にも拡大しました。

「僧侶は女性の健康や関連する問題について話すべきではないという認識を、ライフスキル教育のアプローチによって取り払うことができました」と、シェラブ・ドルジ師は過去数年間のプログラムによって僧院内にもたらされた変化を振り返りました。

 


ライフスキル教育のアプローチに基づいて、リプロダクティブ・ヘルス教育を実施するブータンの僧侶 © Photo: Tshering Penjor/UNFPA Bhutan

 

現在、UNFPAの包括的な保健教育に関する研修を受けた47名の教師が、中央僧院会によって20地区の学校に派遣され、子どもたちへのカウンセリングサービスを行っています。

 

UNFPAが支援する研修の受講生で、ペマガツェル県のドゥンミンに住むカルマ師は「地域の人々が私の僧院に祈りを捧げに来たときに、学んだ技術や知識を伝えることを楽しみにしています。また、小学校の子どもたちに月経衛生や10代の妊娠について説明したり、お互いに支え合う必要性を伝えたりしたいと思っています」と語っています。

 

UNFPAと宗教指導者とのパートナーシップは、宗教と包括的な保健教育との間にある壁を取り除くのに貢献しています。何千人もの若者が、リスクの高い行為から逃れる方法や、対人関係を改善し、より健康的な人生を送る方法について学んでいます。

 

僧院との連携を通じて、UNFPAは過去10年間、ブータンでリプロダクティブ・ヘルス・サービスの向上に貢献してきました。1994年では10万人あたり380人と高かった妊産婦死亡率は、2017年には89人へと大きく低下。さらに、避妊具・薬の普及率は2000年の30.7%から2018年には65.6%に上昇し、2000年には23%だった助産師などの専門家が出産に立ち会う割合は、現在では95%を超えるまでになりました。

 

ライフスキル教育のトレーニングは、私たちの身体的、精神的、感情的な成長を助けてくれました。これからは、ブータンの開発理念である国民総幸福の実現に向けて、友人や家族、地域の人々に知識やスキルを広めることが私たちの責任です。

 

「ライフスキル教育のトレーニングは、私たちの身体的、精神的、感情的な成長を助けてくれました。これからは、ブータンの開発理念である国民総幸福の実現に向けて、友人や家族、地域の人々に知識やスキルを広めることが私たちの責任です」と、モンガル県ドラメツェ出身のカルチュン師は述べました。

 

UNFPAブータン事務所 は、リプロダクティブ・ヘルスの情報やサービスといった基本的な支援が、女性や若者たちが自身の可能性を最大限に発揮させる一助となるという、ブータン王国政府の認識を支持しています。

 

※本文は当該記事 を、駐日事務所にて独自に翻訳及び編集したものです。