国連人口基金事務局長 ババトゥンデ・オショティメインからのメッセージ
人口の高齢化は、21世紀におけるもっとも重要な変化のひとつであり、祝福を生み出した要因でもあり、それによる課題の両方を象徴しています。高齢化を通して誰もが健康で幸福に生きることを保障するためには、更なる努力が必要とされており、この努力は高齢者の生活環境を改善し、不平等を最大限減らすことにつながります。
2015年には60歳以上の人口は世界全体の12.3%を占めていましたが、2050年には約22%まで上昇すると言われています。推定されている高齢者人口の増加のほとんどは、開発途上国において起こると予測されています。なかでもアジアが占める割合は大きく、世界の高齢者人口9億100万人の半数以上である5億800万人がアジアに住んでいます。また、他の地域では1億7,700万人がヨーロッパ、7,500万人が北米、7,100万人がラテンアメリカとカリブ諸国、6,400万人がアフリカ、600万人がオセアニアに住んでいます。
いくつかの国では、高齢化に伴い労働市場の縮小化が起こりえます。しかし、そういった変化が起きるかどうかに関わらず、高齢化が経済に与える影響は、退職年齢を引き上げるための方策などの多くの不明確な要因や、人口移動、そして結局は人と機械の生産力によって決まります。
高齢になるにつれ社会的不平等が増大する傾向にあることから、高齢化は潜在的に社会崩壊を招く要因にもなりえます。たとえば、男性の長い正規雇用と高い生涯賃金の結果、平均的に高齢男性は女性よりも68%高い収入を得ています。高齢人口が主に女性であることからすると、これは注目すべきことと言えます。
国連人口基金(UNFPA)は、今年の国際高齢者デーのテーマである「年齢差別に反対を」をより強く主張します。UNFPAは、生涯にわたる不平等を減らし、高齢者が社会に貢献することができるよう後押しすることが、社会全体の更なる発展のために絶大な影響を及ぼすと信じています。
年齢差別を無くす取り組みは、幼少期から始まり、安全な出産、そして幼年時代の健康的な食事や優れた教育へと続いていきます。これを実現するには、性と生殖に関する健康/権利の完全普及、男女平等の確立、また全ての高齢者が社会保障と所得保障を享受できるようにし、富をより若い世代に受け継ぐことが必要不可欠です。
平均寿命が延び、人々の健康状態が良好であるため、高齢者が働き続けている国々、特に若年層の失業率が高い国においては、仕事場での不平等と年齢差別がより深刻な課題となるでしょう。社会は、高齢者が働き続けられるように、退職年齢に対する考えや、高齢者の家庭と社会における役割に対する考えを変える必要があるでしょう。
高齢者人口は、労働所得や財産、また家族からの支援や公的制度に至るまで、あらゆる経済的援助に頼って生活を送っています。高齢化が進む国々においては、若年世代と高齢世代の世代間の対話を促進する必要があるとともに、相互理解を深め、互いに助け合うような政策を作り出す必要があることを意味しています。
UNFPAは、高齢化に関して各国の政策に関する対話を促進させたり、性・年齢別データの収集や研究、そのためのトレーニングをサポートしながら、高齢化が進む国々が直面している機会を活かし、課題に対応するための支援を続けています。UNFPAは現在、高齢化に対しての「マドリッド国際行動計画(MIPAA) 」の実行にむけた15年間の進展を見直しており、健康的な高齢化世界の実現と、より生産的で豊かな高齢化のために第二の人口ボーナスを十分に生かすために培ってきた知識と教訓を共有しています。
高齢化は、それぞれの国において、既存の経済、家庭、社会構造が試される変革の原動力となります。全ての人々が尊厳を持って年齢を重ね、生涯に渡って社会の一員として貢献し、健康で幸せな人生を歩めるよう、ともに力を合わせましょう。