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ラテンアメリカ・カリブ海諸国にとって急務な課題である貧困を削減するには、人権の尊重を促がす取り組みと手を携えていかなくてはならない―トラヤ・オベイド国連人口基金事務局長は29日このように述べ、中南米の開発がなかなか進まないのは、蔓延する貧困、不平等、そしてHIV/エイズが原因であるとした。

オベイド事務局長は、ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(the Economic Commission for Latin America and the Caribbean, ECLAC)の「人口と開発に関する特別委員会」開会式で演説し、「この蔓延する貧困と不平等の問題にどう立ち向かうかはここに会する我々が緊要とする課題であります。貧困と不平等は脆く傷つきやすい民主主義にとっては脅威でもあり、真の平等なくして真の民主主義はありえず、真の平等なくして真の人権保障はありえないのです」と加盟国の外務大臣および政府高官約300名にうったえた。この特別委員会は、1994年に開催されたカイロ国際人口・開発会議の 10周年を記念して開かれたものである。

オベイド事務局長は続けて、「貧困の削減には、人権の尊重を促進し、地域社会とくに社会的に疎外されている人々と一緒になってよりよい生活をめざし問題解決を図っていくことが重要です」と述べ、市民権、開発の利益を享受する権利、教育を受ける権利、健康に対する権利、そして性と生殖に関する権利の保障の重要性を強調しながら、こうした権利が守られないと経済・社会的発展が妨げられるのみならず民主主義そのものが危うくなると警告した。

オベイド事務局長は、さらに、リプロダクティブ・ヘルスへのアクセスが行き渡り、教育・雇用の機会が平等に与えられれば、中南米でこうした貧困の悪循環に苦しめられている何百万人もの女性、男性そして若者を救うことができると提言した。また、産みたい子どもの数そして出産間隔に関して他人に強制されないこと、女性が男性と同等の権利を享受すること、そして暴力や性行為の強制の危険がない状態は基本的人権の一部であるのみならず、貧困削減政策にとっても重要な点であると強調した。

演説の中でオベイド事務局長は「カイロ行動計画」にもふれ、この「行動計画」がすべての国にとって開発の青写真であるとともに、各国のニーズに対応した各国自身の開発計画であると発言した。ラテンアメリカ・カリブ経済委員会のホセ・ルイス・マチネア事務局長は、この「行動計画」の実施は「ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals, MDGs)の達成に貢献するものだと述べ、ラテンアメリカ・カリブ経済委員会の加盟国・準加盟国が貧困削減政策を引き続き実施していくことの重要性と無行動によって支払わなくてはならない代償の大きさを強くうったえた。

この「人口と開発に関する特別委員会」は、第30回ラテンアメリカ・カリブ経済委員会のひとつとして開かれ、明日30日に閉会する予定である。ラテンアメリカ・カリブ経済委員会自体は7月1日(木)に正式に開会し、翌2日の一般討論演説そして最終決議案の採択をもって閉会する。