第一回女性への暴力についての地中海フォーラムにて、女性や少女への暴力を撲滅するための法律やその他の具体的措置が、早急に採択されるべきであるとフォーラム参加者によって提唱された。女性への暴力は、社会全体に悪影響を及ぼし、女性が開発に全面的に貢献することを妨げることになる、と報告された。
11月23-25日にモロッコのラバト(Rabat)にて開催されたこのフォーラムでは、1979年の女性差別の撤廃条約にて制限が設けられていた箇所と、1999年の選択議定書の承認を推し進める声があがった。また、ILO(世界労働機関)による職場における女性の権利に関する条約の承認も要求された。加えて、各国の政策は男女平等の原則に基づき、また各国の法律は関連する国際条約に則ったものに、との意見もあがった。
モロッコ政府、カナダ国際開発庁、国連人口基金によるこのフォーラムは、女性に対する暴力撤廃の国際デーを記念して開催された。このフォーラムには地中海諸国政府(アルジェリア、エジプト、ギリシャ、ヨルダン、レバノン、リビア、モロッコ、パレスチナ占領地域、スペイン、シリア、チュニジア、トルコ、カナダ)、NGO、国会議員、調査機関そしてメディアから80名が参加した。
「今も続く性的暴力に対し、女性へのあらゆる虐待をなくし、そして女性が基本的人権を享受できるような明確な国の政策が築かれることが強く求められています。このことにより、女性が政治的・社会的役割を果たし経済活動へ参画していくことができます」と、モロッコの家族・子ども・障害者担当秘書官(Morocco's Secretary of State in charge of Family, Childhood and Disabled Persons) ヤスミナ・バドゥー氏(Yasmina Baddou)は述べた。
フォーラムでは、法的措置やその他の性的暴力の防止策などの実例や、虐待を受けた女性や犠牲となった少女への対応方法などを参加者間で共有した。地中海諸国のほとんどの国で性的暴力の問題への意識は高まっており、また多くの国で成果が大きくあがってはいるものの、参加者からは、ジェンダーの平等と、経済、社会、文化分野における性差別の撤廃への障害が指摘された。
「国連人口基金はこの地域において、性的暴力に対し様々な方面から積極的に取り組んでいます。その中で、国際的な平等と人権の原則から外れることなく、地域や文化の特性を考慮したアプローチを取ることに成功しています。」とUNFPAアラブ諸国・ヨーロッパ地域局局長アラダン・モルシー(Alaadin Morsy)は述べた。
参加者らは、女性への暴力に関わる社会的・文化的側面、関連する国家的・国際的な法律の枠組み、女性と少女のリプロダクティブ・ヘルスへの影響、女性や少女への暴力による経済的損害といった多様な問題について議論を交わした。
フォーラムで採択されたラバト宣言では、地中海諸国の中にはいまだ性差別を助長し、女性の人権を無視した法律がある国が存在していることを指摘している。さらに、いくら国際人権規約を支持したとしても、それがジェンダーに着目した法的制度であり、女性の人権保護と結びついたものでない以上、効果がないということを指摘している。
ラバト宣言は、女性と少女への暴力に関する国内法に加え、これらの暴力が女性の健康、特にリプロダクティブ・ヘルスに及ぼす危険性に関する啓発キャンペーンの必要性を提唱した。また、特に農村地域の女性や少女のニーズを考慮しながら、国の開発計画にジェンダーの視点を取り込む戦略を求めた。同宣言は、学校の教育資料から女性のイメージを損なうような考え方を取り除く必要があることを指摘した。また、精神的・法的支援を行なうカウンセリングセンターの能力強化や、犠牲者への治療の改善を求めた。
さらに、ラバト宣言は、地中海諸国における性的暴力対策のためのネットワークを構築し、成功例の情報交換を促進しながら、フォーラムであげられた提案、行動計画の対応を国連人口基金と協力しておこなっていくことを提案している。