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2030年までに2倍に膨れ上がるアジアとアフリカの都市人口に対応するために人類は"意識改革"が必要である、と国連人口基金(UNFPA)は警告する。本日発表される「世界人口白書2007:拡大する都市の可能性を引き出す」の中で、今後30年間にアジアとアフリカの都市人口は、今の中国とアメリカの人口を合わせたよりも多い数である17億人増え現在の2倍になるとしている。

国連人口基金事務局長トラヤ・A・オベイドは以下のように述べている。「アフリカやアジア、その他の地域の都市で起こることは、皆に共通の未来を決定づけます。私たちは、まず都市化を否定するような考え方を改める必要があります。そして、都市がその可能性を拡大させ、経済成長を促し、社会問題を解決する手立てとなるよう全世界が協力して取り組むために、今行動しなければなりません。」

可能性を最大限に活用するために、各国政府は来るべき人口増加に備えなければならない。事務局長はこう述べている。「待っているのでは手遅れになってしまいます。この都市化の波は前例がなく、都市計画担当者や政策立案者が変化が起きてから対応するにはあまりにも大きく速いものです。アフリカとアジアでは、都市居住者の数は平均して毎週約100万人増えています。指導者たちは、都市化がもたらす可能性を十分に生かせるよう、積極的に先を見越した対策を打つ必要があります。」

「世界人口白書2007」によると、2008年には都市人口は現在の世界人口である67億人の半数以上となる。また、1,000万人以上の巨大都市は成長し続ける一方、ほとんどの人々が50万人以下の都市に住むと予測される。

2030年までに都市の人口は50億人、すなわち世界人口の約60%になるとされている。そして今後全ての人口増加は都市で起こり、そのほとんどがアジア、アフリカ、中南米で起こると予測されている。アジアとアフリカは、数千年続いてきた均衡に変化をもたらし、農村から都市への移行という重大な転換を迎えるであろう。

都市化とは総人口に占める都市居住者の割合が増えることであり、避けられないものであるとともに、これは肯定的にとらえるべき現象であると白書は述べている。どの国も工業化の時代には、都市化という現実なしには飛躍的な経済発展を遂げることは出来なかった。

「世界人口白書2007」は、新たに都市居住者となる人々の内ほとんどは貧困層を形成するが、同時に彼らは問題解決のための役割を担っている。彼らの、住居、保健医療サービス、教育、雇用などのニーズを満たすことが出来るよう支援することは、都市居住者の可能性を拡大し、経済発展を促すだろう。

事務局長は、「2015年までに極度の貧困にある人々を半減させるというミレニアム開発目標に向けた闘いは、開発途上国の都市では勝つか負けるかの闘いとなるでしょう。これは、貧困層が都市に住む権利を尊重すること、潜在的な問題を克服し新しい解決法を生み出すため、彼らの創造性を活用しながら取り組んでいかなければならないということです」と述べている。

実際は、地方から都市への人口移動は有益なものであるにもかかわらず、政府や地方行政の都市人口増加への対応は、そういった人口移動をさまたげ、むしろ逆行させるものであると白書は述べている。そのような政策は、貧困層の住居供給が充分でないため、スラム増加に拍車をかける結果となる。さらに、都市貧困層が彼らの生活を向上させ地域社会に貢献する可能性をはばむものである。

白書は、市当局と都市計画担当者は、貧困層の住居供給を最重要課題とすべきだとしている。また、電力や上下水道設備、公衆衛生サービスを利用できる土地の使用権を確保することや、教育や保健医療サービスを享受でき、自分たちの家を建てることを促すべきである。

ほとんどの都市人口の増加は、人口移動よりもむしろ自然増の結果として起こる。増加のペースを落とすために、政策立案者は、貧困削減への取り組み、女性のエンパワーメントへの投資、リプロダクティブ・ヘルスと家族計画サービスを含めた特に女性と女子への教育と健康などの対策を講じるべきである。

都市人口の半数は25歳以下である。若者向けの別冊「Growing Up Urban(都市で成長する)」では、開発途上国の都市に移ってきた、またはそこで成長した若い男女10人の話を特集している。その中で、教育とヘルスケア、暴力から身を守ること、雇用、より大きな社会に適応する必要性など、若者特有のニーズを浮き彫りにしている。こういったニーズを満たすことは、それぞれが生まれた貧しい生活環境から救い出すだろう。

政策立案者や都市計画担当者は、都市の可能性を引き出し、全ての人々の生活を改善しなければならないが、以下の3つの対策がひときわ重要である。
・人口移動をさまたげ、都市人口の増加を阻止しようとする試みをやめ、貧困層の都市における権利を尊重する。市当局は、女性団体を含めた都市の貧困層たちの団体と緊密に協力していくべきである。
・長期的かつ幅広い視野に基づいた都市空間活用計画を立てる。最低限のサービスを受けることができる土地を供給し、都市とその近郊での持続可能な土地利用計画をすることがまず必要である。
・都市の未来への戦略を支援する取り組みを、国際社会は一致協力して始めなければならない。

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