パキスタンで先月下旬から続く洪水が、人々の生活に深刻な混乱をもたらしている。国連人口基金は、今後も同国内の広域にわたって被害拡大が予想され、国内避難民となった女性と女児、特に妊産婦への支援を行うことが必要であると述べている。
洪水の被災者はこれまでに1,540万人にのぼる。うち600万人が緊急人道支援を必要としており、妊娠可能年齢(15~49歳)の女性は150万人と推計される。今後3カ月で、5万2,500人の女性が出産を迎え、5万3,000人の新生児にヘルス・ケアを提供する必要があると予測される。またすぐにも、9,000人以上の女性が妊娠によって合併症のために、外科手術が必要だという。
「この災害の被害を被った数百万人のパキスタン人に対し、国際社会が一致団結して支援をする必要があります。[...]女性は特別なニーズを抱えています。いかなる状況においても、出産は訪れます。すべての人が安全に出産できるよう、必要な時に医療が受けられることが必要です」と国連人口基金事務局長トラヤ・A・オベイドは述べた。
国連人口基金は7月下旬に開始した洪水被害への対応として、性と生殖に関する健康関連の緊急ケアや、心理社会的支援を被災者に提供するためのスタッフと設備の整った7つの移動サービス・ユニットを派遣した。さらに、被害のあったハイバル・パフトゥンハー州、パンジャブ州、シンド州にある10地区で、13の政府の保健施設の支援も行っている。また、ジェンダー(男女の社会的性差)に関する現地調査を行い、ジェンダーと心理社会的支援サービスのための追加資金を調達する予定だ。
国連人口基金はこれまでに、パキスタンの女性特有のニーズに合わせた、性と生殖に関する健康関連の緊急用医薬品、女性用衛生キット、新生児用キット、出産キットを提供した。オーストラリア政府が提供するおよそ2000個の出産キットの配布の支援も行う。
国連人口基金の推計では、今後3カ月間の被災者の性と生殖に関する健康関連の基本的ニーズを満たすためには、まだ880万ドルが不足しているという。国連人口基金は、追加で5万個の女性用衛生キットや新生児用キットをはじめ、その他の緊急用の医療保健物資や用具の調達と配布を行い、妊産婦が安全に出産できるよう支援するのと同時に、妊娠に関連した合併症への対応を続ける。