“文化とは、無限の可能性と選択を生み出す母体です。同じ文化の母体から、人類の堕落と気高さ、奴隷化と解放、潜在的生産能力の抑圧と向上に関わる様々な根拠と戦略を引き出すことができます。”
ノーベル文学賞受賞者 ウォ-ル・ショインカ(Wole Soyinka)、ナイジェリア
歴史、環境、文化の違いにもかかわらず、世界の国々の多くは、よりよい未来を実現するため、一連の目標に賛同してきました。
国連人口基金には、これらの目標のなかでも、性と生殖に関する健康/権利(SRH/RR)、ジェンダー(男女の社会的性差)、人口問題などの、人間という存在にとって、最も配慮の必要な領域に関わる目標を達成する任務が与えられています。
これまでの経験を通して、こうした問題への取り組みを進めるには、忍耐、相手の話を進んで注意深く聞く姿勢、そして文化の多様性への尊重が必要だということを学びました。それが「文化に配慮したアプローチ」の一部となっています。このアプローチの効果はジェンダー9件の、事例研究(英文のみ)を通しても実証されています。
国際的に合意された目標を達成するにあたり、社会的、文化的な差異は、課題であると同時に好機ともなりえます。
人々の態度、行動、法律を変えるということは、特にジェンダー関係と性と生殖に関する健康(SRH)に関わる場合には、長期にわたる複合的な作業を必要とします。人の考え方を変えることは、サービスを提供するよりも難しい場合が多いのです。なぜなら、私たちの生活というものは、何世紀にもわたる伝統と複雑な文化的構成要素によって制約を受けているからです。
このような理由から、国連人口基金は、2002年から「文化に配慮したアプローチ」をプログラム策定作業の主軸として体系的に取り入れる戦略を、開始しました。このアプローチでは、プログラムを実施する現場において、コミュニティーや地域の変革の担い手との連携を重視しています。例えば、彼らと対話し、相手の話を聞き知識と見識を共有し、現状を打開するための方法を一緒に計画するなど、共に活動することが盛り込まれています。
このアプローチには、国連人口基金が活動するそれぞれの社会において、文化がどのような影響を持つかなど、肯定的および否定的ともなりうる文化的価値観、資産、表現、権力構造を理解することも必要とされます。
「文化に配慮したアプローチ」は、例えば、有害な伝統的慣習を減らす、性を選別するための人工妊娠中絶廃止のための新たな法律を制定する、宗教団体と新たなパートナーシップを構築する、といった喜ばしい成果を出してきています。これは、より多くの人々が基本的人権を享受できるようになったことを示しています。
以下は、文化に配慮したアプローチを取り入れた国連人口基金のプログラム策定の事例です。
- イエメン:イスラム教の僧侶イマームとその他の宗教指導者のための手引書の作成を支援。手引書では、家族計画およびSRHをコーランに関連付け、女性と男性の平等に関する預言者ムハンマドの教えを強調している。
- カンボジア:近年深刻になって来ているHIV/ エイズの問題と、青少年問題に対処するため、仏教の僧侶および尼僧との連携を試みている。
- ウガンダ:伝統的文化の保護者の支援を得ながら、より健康的な生活習慣を推進し、有害な伝統的慣習の廃止に成功。
- グアテマラ:女性と家族の健康増進のための画期的な新法制定のために、様々な関係者による合意形成を促進。
- インド:国会議員、医療担当官、その他多くの協力者と共に、性の選別のための人工妊娠中絶をなくすための大規模なキャンペーンを実施。