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リビア・トリポリ:ムナさん*は結婚後、夫からの暴力を受けて離婚しましたが、離婚後はさらにそれまでとは異なる困難に直面するようになりました。「虐待、不当な扱い、差別に苦しみました」と訴えるムナさん。「私が暮らす社会では、多くの場合、離婚した女性に対して厳しい目が向けられるのです」と続けました。10年にわたる内戦や暴力、政情不安に見舞われたリビアで、ムナさんは自分と子どもの食費を賄うだけの所得を得ることができず、また家族にもムナさん親子を支える余裕はありませんでした。結婚中と離婚後に受けた暴力と支援の欠如は、彼女の心に大きな傷跡を残しました。

 

「家族に見放されてしまったので、子どもを連れて国内避難民たちのキャンプへ行きました」と振り返るムナさん。「生活に必要なものは手に入るようになりました。しかし、生きる目的や未来への希望を見失ってしまいました」

 

国連人口基金(UNFPA)が支援する女性と少女のためのセーフスペースは、ムナさんの人生を一変させたと言います。「トリポリには学校を利用して作った国内避難民のための施設があるのですが、その中の1つを訪れた際にムナさんに出会いました。その時、彼女は様々な暴力によるトラウマ(心的外傷)に苦しめられていました」と、首都トリポリのセーフスペースでマネージャーを務めるアファーフさんは説明しました。「はじめのうちは、彼女のようなケースに対応するのは簡単ではありませんでした。社会的、経済的な問題や度重なる恐怖が、彼女に大きな影響を与えていました」

 

この2年間、リビア全土に4つあるUNFPAのセーフスペースは、アルバヤン機構などパートナー団体からの支援に加え、アフリカ向けEU信託基金、日本政府、デンマーク政府による資金援助のもとで運営されてきました。これまで、ジェンダーに基づく暴力の被害者とリスクにさらされている女性や少女1万5,000人以上にサービスを提供してきました。これらのサービスには、ケースマネジメント、心理社会的サポート、自己啓発セッション、ディグニティ(尊厳)キットの配布、さらには英語や裁縫、コンピュータースキルを学ぶための講座といった生計向上トレーニングが含まれています。

 

癒しの時

セーフスペースを訪れたムナさんは、心理社会的カウンセリングを受け、それから看護クラスに通い始めました。自立性を身に付け、尊厳と自尊心を取り戻し、コミュニティで必要な医療ニーズに応えるのが目的でした。しかし、彼女は当初、クラスでもどこか消極的でよそよそしく、活動に参加することに戸惑いを見せていました。

 

「一年も経たない間に、ムナさんの中でポジティブな変化が起きていました」と話すアファーフさん。「看護クラスへの熱意を見せるようになり、言動も大きく改善しました」

 

現在、40歳になったムナさんは医療施設で看護師として働き、自分と子どもの生活に十分な収入を得ることができるようになりました。子どもは毎日学校に通うことができ、ようやく人並みの幸せな日常が戻ってきました。またムナさんは、自分の経験を他の女性たちにも共有し、誰もが人生を変えることができると伝えています。

 

「自分に自信を持てるようになり、人生の困難に立ち向かう力を得ることができました」と笑顔で話すムナさん。「同じような経験をした女性たちに力とインスピレーションを与えられる、そんな存在になることができました。私が自立できるように支援し、希望を与えてくださった全ての人たちに感謝します」

 

*プライバシー保護のため名前を変更しています

 

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