国連人口基金(UNFPA)が進めているフィスチュラ撲滅キャンペーンに広報サービスを提供しているのは、受賞経験もある広告代理店「Young and Rubicam(Y&R)」のロンドン事務所である。今後、同代理店は放送・出版・電子媒体を通じて、フィスチュラ(産科瘻孔、膣瘻)に対するイギリス国民の関心を高めるべく国連人口基金とともに活動をしていく。
Y&Rグループ系列会社のRainey Kelly Campbell Roalfe(RKCR/Y&R)ロンドン支社代表取締役ジェームズ・マーフィー(James Murphy)氏は、「一般市民はフィスチュラについて知る必要がある。なぜなら我々にできることが何かあるからだ」とコメントを発表した。
フィスチュラ(産科瘻孔)は出産の際に起こる組織損傷で、全世界で少なくとも200万人の女性が苦しんでいるとされる。長引く閉塞性分娩で適切な医療介入がないと骨盤の軟組織が損傷し、膀胱や直腸に穴があき、フィスチュラ(瘻孔)となる。通常、胎児は死亡し、妊産婦には深刻な肉体的・精神的外傷が残される。慢性失禁状態になることで、感染や神経損傷のリスクが高くなるほか社会的な阻害・孤立という環境におかれることも多い。
トラヤ・オベイド 国連人口基金事務局長は、「フィスチュラは女性たちから赤ん坊も人生も奪ってしまうという点で二重の悲しみであります」と述べ、フィスチュラという病気がもつ社会的側面(恥辱と阻害)を指摘した。
フィスチュラは予防・治療ともに可能な疾病で、21世紀の現代でこの疾病に苦しむ女性がいるのは許しがたい。熟練した泌尿器科医や婦人科医の手による再生手術さえ受けられれば、損傷した組織や失禁の治療は可能で、手術の成功率も合併症のない例では90%にも上る。回復すれば、帝王切開による出産で再度妊娠も可能となる。
マーフィー代表取締役はこのフィスチュラ撲滅キャンペーンに取り組むにいたった背景について、「フィスチュラに苦しめられている女性は何百万人もいるが、たった300ドルの手術で苦しみを取り除き女性に尊厳を取り戻すことができるのだから、決断に一切躊躇はなかった」と話している。
このフィスチュラ撲滅グローバルキャンペーンは2003年に国連人口基金が始めたもので、幅広いパートナーを得ている。キャンペーンの長期目標は、アフリカとアジアにおいてフィスチュラを先進国と同程度に稀少にすることである。このキャンペーンは世界30カ国で展開されており、予防、治療および治癒後のコミュニティーへの復帰という3つの分野に重点が置かれている。
「フィスチュラ撲滅の鍵は予防であります」とオベイド事務局長は発言し、イギリスを始めとする多くの国ではこの百年間、予防を徹底することでフィスチュラの撲滅に邁進してきたことを強調した。また、フィスチュラを抱える女性がいることは妊産婦の健康を守ることの重要性を強く印象付けるものであるとし、避妊薬(具)などが安価で手に入り、医師や助産師などの立会いによる出産および緊急時の産科ケアが整っているような国では、フィスチュラはめったに起こらないとうったえた。
RKCR/Y&Rは女性の健康と権利に関してさまざまな活動に取り組んできている。これまでに、イギリスの慈善団体である「Womankind」、「Breakthrough Breast Cancer」、「Central Office of Information Anti-Domestic Violence」などの顧客に対して啓蒙的かつ配慮の行き届いたソリューションを提供してきている。
フィスチュラ撲滅に関するグローバルキャンペーンの詳細についてはwww.endfistula.orgまで