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UNFPA発 世界の声が聞こえますか?第6回 『伝統に代わる案 少女を守るため両親を説得』(ケニア)(1)

逃げて来た女の子を受け入れるタサル救援センターの職員たち 
©UNFPA

アフリカ東部の国ケニアに住むマサイ族のレディーさん(13歳)は、両親と離れて首都ナイロビ郊外にある「タサル救援センター」で生活しています。「一年前、父が『儀式』を受けて結婚しなさいと言ったの。嫌がるわたしを、父は怒って許してくれなかったわ」と言います。

彼女が嫌がった「儀式」とは、子どもから大人への通過儀礼として、結婚前の女の子の性器をナイフやかみそりで切除する女性性器切除(FGM/C)というもの。麻酔なしで行うため気絶するほど痛く、大量出血、発熱や感染症の危険性もあります。また精神的ショックも大きく、少女の心と体を傷つけます。

毎年、世界(主にアフリカや西アジア)では約300万人の少女が切除を受けていますが、社会の文化に深く根付いているため、廃止することがとても難しい習慣です。レディーさんの住む地域でも、この儀式は結婚の前提とされていて、95%の女の子が受けています。従わないと一人前の女性と認めてもらえず、村から追い出されることもあります。

国連人口基金が支援しているタサル救援センターには性器切除や若年結婚から逃れてきた女の子が五十人ほど住んでいます。センター職員がその危険性を伝え、両親が納得した場合は、女の子は儀式の代わりとなるセンターの卒業式(成人式)に出席し、大人になったことを認めてもらえます。そして、両親は決して自分の娘に切除を受けさせないという誓約書にサインします。

その土地の文化や慣習を踏まえながら人々の理解を得て、それまでの習慣を新しい形に変えていくことは時間がかかります。しかし、それが唯一の解決策です。

◆親子で考えよう◆
体を傷つける文化や習慣を、どう思いますか?

掲載:朝日小学生新聞(2009年3月21日号)