セックス・ワーカーとその客との間でのコンドーム使用を促進することは、エイズ蔓延の速度を遅らせる効果的な予防策である。今週北京で開催された2日間のワークショップでは、中国やアジア諸国の保健専門家がそれぞれの経験を紹介し、性産業におけるHIV感染予防のためのプログラムを改善するために議論を行った。
国連人口基金(UNFPA)、世界保健機関(WHO)、および国連エイズ合同計画(UNAIDS)は、中国保健省及び国家人口家族計画協会の協力を得てこのワークショップを開催した。中央・地方保健行政担当課、研究機関、NGO、国連機関から120名が参加した。
感染予防なしの性行為は、現在では中国におけるHIVの主要な感染ルートとなっている。性産業は様々な要因を背景として中国全土で広がっているが、コンドーム使用率は低い。中国のHIV/エイズ行動計画は、性産業の現場も含めたHIV感染を引き起こす危険な行為に対処するための取り組みの強化を求めている。
近年、地方では性産業に関連してのHIVについての意識を高め、コンドーム利用を普及させる多くの取り組みがなされているが、これはタイやその他HIV感染予防に成功を収めている地域で使われたモデルを基にしている。世界保健機関と国連人口基金はそれらの取組みのいくつかを支援している。現在、中国全土で 480のプログラムが実施されているが、中国全土の20%未満しか網羅していない。今回のワークショップは、問題点とその克服方法と合わせて、より多くの地域に応用できる成功事例を割り出すことが目的であった。
ワークショップでは、広西チワン族自治区、湖南省、河北省及び湖北省のプロジェクトと内モンゴル自治区のプロジェクトの成果が紹介された。いずれのプロジェクトも、セックス・ワーカーとその客との間で、「コンドーム使用率100%」、「ノー・コンドーム、ノー・セックス」を目指している。様々なアプローチがあるが、保健専門家、警察、娯楽施設のオーナー、ピア・エデュケーターとして訓練されたセックス・ワーカーの協力が必要であるという点は共通している。
ワークショップでは、「HIV/エイズが拡大し伝染病となる唯一の方法は、性感染です。コンドームを100%使用するプログラムの拡大は緊急の優先課題です。」と世界保健機関中国代表であるヘンク・ベケダム(Hank Bekedam)医師は語った。
国連人口基金、国連女性開発基金(UNIFEM)及び世界保健機関からの発言者は、以下の項目に取り組む必要性を強調した。-セックス・ワーカーの人権と健康ニーズ、性労働の要因のひとつになっているジェンダーや機会の不平等
-HIVの予防・治療・ケアとリプロダクティブ・ヘルスプログラムとの一本化
-HIV感染者に対する偏見や差別、暴力と闘うこと
-セックス・ワーカーや関係者にプログラム作成段階に関与してもらう
カルティニ・スラマー(Khartini Slamah)アジア太平洋セックスワーカーネットワーク(Asia Pacific Network of Sex Workers)コーディネーターは「地域社会の参加なしには、プログラムの成功は難しいでしょう。ヘルスワーカーは、サービスを受けるセックス・ワーカーに偏見を持たないよう訓練する必要があります。セックス・ワーカーの権利を保障し、セックス・ワーカーをエンパワーメントするためには、彼ら/彼女らの権利を保障することが不可欠だからです」と述べた。
ベケダム(Bekedam)医師は、「セックス・ワーカーは、最もエイズの危機にさらされているグループの一つです。コンドームの確実な使用が普及すれば、彼ら/彼女らが自分を守れるようエンパワーメントし、エイズの拡大を阻止することにつながります」と話を締めくくった。