現在地

4月25〜26日、「G7広島サミットに向けた世界人口開発議員会議(GCPPD2023)」が、アジア人口・開発協会(APDA)、人口と開発に関するアジア議員フォーラム(AFPPD)および国際人口問題議員懇談会(JPFP)の主催で実施されました。

開会式は、武見敬三 参議院議員・AFPPD議長の司会進行のもと、開催国である日本政府の要人や関係者がスピーチを行いました。

 

福田康夫 元内閣総理大臣・APDA理事長・JPFP名誉会長は、2016年に開催された伊勢志摩サミットの際にも行われたGCPPD2016に言及し、サミット前にこのように世界中の国会議員が参加し、世界の平和と繁栄に向けて議論し、サミットに対し提言を行う意義について述べました。

福田康夫 元内閣総理大臣 ©APDA
福田康夫 元内閣総理大臣  (写真提供:APDA)

 

岸田文雄 内閣総理大臣は基調講演において、昨年11月に世界人口が80億人に達したことに触れ、これは社会の在り方に直結する問題であり、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けては、人口の観点を取り入れることが不可欠であると述べました。また、人間の安全保障を基本的な視座としつつ、単なる人口の増減だけでなく、個々の人間の生活の質に着目する必要性を指摘しました。そのためには、グローバル・ヘルス、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成をはじめ、女性のエンパワーメントや、性と生殖に関する健康・権利、また健康で活動的な高齢社会の実現のためのライフコース・アプローチの重要性について言及しました。最後に、来年迎える「国際人口開発会議(ICPD)」30周年に向けて、新たな人口動態に関する議論がされることを期待しつつ、ポストコロナの時代を共に切り拓いていく意気込みを語りました。

岸田文雄 内閣総理大臣 ©APDA
岸田文雄 内閣総理大臣  (写真提供:APDA)

 

林芳正 外務大臣・JPFP幹事は、人口問題は、世界の全ての国々に共通の課題であることを踏まえ、JPFPとAFPPDの設立経緯に関する日本政府の関与と、UNFPA、IPPFに対する拠出を通じて、人口問題への取組を推進していると述べました。また、UNFPAに設置した日本信託基金(JTF)を通じ、世界各国の人口と開発問題に関する議員活動を支援していることを紹介しました。

 

上川陽子 衆議院議員・JPFP会長は、来年で50周年を迎えるJPFPの活動の中心である議員外交の重要性に触れ、世界中の議員間のネットワークを活かしながら、平和と安全保障といった地球規模の課題に対し更なる連帯を深めて取り組みたいと力強く語りました。

(左)林芳正 外務大臣・JPFP幹事、(右)上川陽子 衆議院議員・JPFP会長 ©APDA
(左)林芳正 外務大臣・JPFP幹事、(右)上川陽子 衆議院議員・JPFP会長  (写真提供:APDA)

 

UNFPA広報・戦略的パートナーシップ局長イアン・マクファーレンはオンラインで会議に参加し、80億人に達した世界人口を数字でとらえるのではなく、人々が自らのからだの自己決定権を持つことの重要性を強調しました。また、「Leave No One Behind(誰一人取り残さない)」に代わる日本語の表現として「居場所」は、身体的かつ精神的に拠り所という意味合いを表していると述べました。さらに、このGCPPDで議論された内容がG7サミットおよび参加議員のそれぞれの国にも反映され、80億人の人々の可能性を活かすことに繋がることへの期待を語りました。最後に、来年のICPDの30周年、さらに国連総会で開催される「Summit of the Future(未来のサミット)」に向けて協働することを提案しました。

 

その後のセッション1「80億人に達した世界人口:次は何をすべきか?」に参加したUNFPAアジア太平洋地域事務所副所長クラウス・ベックは、4月19日に発表された「世界人口白書2023」を紹介しながら、世界人口の理想的な数というものはなく、人々の生活の質を重視することを訴えました。また、今は人口に対する考え方を変えるべき時であり、人口動態に対応した人口政策の必要性と、その政策は人々の人権を考慮したものであるべきだと述べました。その意味で、このGCPPDは世界中からの参加者とともに議論をし、行動を起こすための世界的な連帯を構築する場であるとの期待を語りました。

クラウス・ベック UNFPAアジア太平洋地域事務所副所長 ©APDA
クラウス・ベック UNFPAアジア太平洋地域事務所副所長  (写真提供:APDA)

 

セッション4「高齢化社会と健康寿命」に参加したUNFPAアジア太平洋地域事務所人口高齢化と持続可能な開発に関する地域アドバイザーの森臨太郎は、世界的に進んでいる高齢化に関連する財政的な懸念や高齢者の雇用やジェンダー不平等に関して言及した上で、それに対応する政策の必要性を述べました。具体的には、高齢者のジェンダー平等および障がい者なども含めた包括的な政策を推進するとともに、人々の人間関係の重要性についても強調しました。また、UNFPAの提唱するライフ・サイクル・アプローチを紹介し、高齢化社会への対応策として、各国政府が人々の出生から青年期を経て妊娠・出産に至る各段階において投資することは効果的かつ効率的であることを述べました。

 

2日間の会期中、世界各国の人口開発関連議連からの代表議員、政府代表また国際機関、市民社会団体、民間企業などの幅広い分野からの参加者の間で、人口問題、ジェンダー平等と女性のエンパワーメント、若者への投資、高齢化社会、ポスト・コロナ時代におけるICPDに対する議員活動などのテーマで活発な議論が行われた後、最終的な宣言がまとめられ、G7サミットに先立ち岸田内閣総理大臣に提言として提出されました。