2021年3月15日、「国際人口問題議員懇談会(JPFP)勉強会『コロナ禍と人口(出生率)』」が開催されました。
衆議院第二議員会館にて、JPFPと「SDGs—人間の安全保障・人口アライアンス」によって共同開催された本勉強会には、約50名の方が参加しました。
JPFP事務総長を務める黄川田仁志衆議院議員の進行のもと、UNFPA アジア太平洋地域事務所で人口高齢化アドバイザーを務める森臨太郎が、「アジア太平洋におけるCOVID-19の出生に関する影響」をテーマに講演を行いました。
「東アジア地域における課題は、家庭における性別役割分業意識や、夫婦・パートナーの関係性にある」と語る森。これに加え、子育てと仕事の両立への不安が、子供を持つ選択への足かせになっていると強調しました。それぞれの国や地域で異なる政策や制度環境、文化的背景が少子化傾向に影響を与える中、COVID-19のパンデミックが起きました。家族計画サービスへのアクセス、家庭内労働の男女不平等の解消、経済不安への対応策など、パンデミックがもたらした影響への直接的な対策は、妊娠・出産に関連する選択を保障することにも繋がることが、調査結果より明らかになったと森は述べました。あらゆる家族の形、一人ひとりの多様なライフスタイルに適応できる政策の策定が急がれます。
コメンテーターとして参加された国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部長の岩澤美帆氏は、ライフスタイルの多様化が進む中、子供を持つことの選択を妨げている要因もまた、それぞれ異なることを指摘し、個々のニーズに対応できる包括的な社会政策が求められていることを、講演の総括として語りました。
JPFP副会長の増子輝彦参議院議員からは、日本のこれまでの少子高齢化対策を振り返り、ご意見とご質問をいただき、同じくJPFP女性問題部会 副部会長の牧島かれん衆議院議員と寺田静参議院議員からは、日本における家族計画へのアクセスに関するご質問をいただくなど、参加された方々の関心の高さがうかがえました。
また、JPFP幹事長の武見敬三参議院議員は、少子高齢化対策に留まらないUNFPAの「ライフサイクル・アプローチ」の重要性を指摘するとともに、少子高齢化対策と持続可能な開発を結びつけた日本モデルを世界に示したい、と意気込みを語られました。
約1時間と限られた時間の中、活発な質疑応答が行われ、新型コロナウイルスのパンデミックを少子化対策強化の契機として捉えていく重要性が確認されました。
今回は、JPFPと人口と開発に関するアジア議員フォーラム(AFPPD)、アジア人口・開発協会(APDA)、国際家族計画連盟(IPPF)、JOICFP(ジョイセフ)、UNFPAで構成する「SDGs-人間の安全保障・人口アライアンス」が共催で行った初めての勉強会でした。今後も引き続き、SDGs(持続可能な開発目標)や人口問題など、日本及び途上国が抱える課題について取り組む活動を続けていきます。
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▼森臨太郎
UNFPAアジア太平洋地域事務所 人口高齢化アドバイザー
日本、豪州、ネパール、英国で新生児科医として臨床。英国保健省やWHOで政策策定に携わり、成育医療センター・政策科学研究部長を経て二年半前より現職。
京都大学客員教授を併任。
▼ライフサイクル・アプローチとは?
UNFPA アジア太平洋地域事務所が推進する、人口高齢化に対するアプローチを、妊娠・出産から始まる「ライフサイクル」全体から行おうとする考え方。例えば、妊産婦の健康を守ることは、子どもの健康な成長、及び健康寿命の延伸に繋がる。詳しくはこちら(UNFPAアジア太平洋地域事務所HP:英語)