国連が支援する調査によると、昨年の津波で被災した地域に住んでいる移民は、妊産婦と子どもを対象とした保健医療サービスや家族計画、HIV感染予防のための情報へのよりよいアクセスを現在も必要としている、ということが判明した。
パンガーおよびラノーン地区に暮らしているミャンマーからの移民は、4人に1人の母親が専門技能者の立会いなしの出産を行い、全乳幼児の55パーセントが予防接種を受けていない、全既婚女性の半分が避妊具を使用していない、調査に応じた成人の半分がHIV拡大について誤った知識を持っているといった状況である。さらに、3分の1の未婚の移民男性はコンドームを常に使わずに買春している。
これらは、マヒドン大学人口調査研究所(Mahidol University's Institute for Population and Social Research)が国連人道問題調整局(OCHA)と国連人口基金(UNFPA)からの資金協力を得て6月に実施され、700人の移住者を対象とした調査で分かったことである。これらの調査結果は、ヘルスワーカー、地元の当局、地域ボランティアが参加したセミナーで発表された。
この調査結果では、ワールドビジョン・タイと、UNFPAが支援する地区の公衆衛生局が行なった、クラビ、パンガー、プーケット、ラノーンに暮らす移民とタイのコミュニティーで行われている巡回医療チームや保健教育活動の必要性を裏付けた。ワールドビジョンは、移民のために、ビルマ語を話す医療スタッフを雇い、コミュニティーでの巡回サービスの実施を目的とした訓練を地域ボランティアの代表に対し行なっている。
移民労働者は、地域の漁業、建設業、ゴム園において欠くことのできない役割を果たしている。いくつかの移民コミュニティーは、12月26日の津波で大きな打撃を受けた。多くの移民が、災害直後ミャンマーへ戻ったが、その一方で、新しい労働者が、絶え間なく流入していた。
調査対象となった移民の半数以下は、法律上登録されており、タイ市民と同様に、安価な国民皆保険の対象となる権利が与えられている。しかし、登録されていない人々は、高い医療費と国外退去の恐れから、公立診療所や病院を避けているとの報告がある。移動診療所は、重症患者を病院に照会するという責務があるため、ヘルスワーカー間でも、この状況は問題であると話されている。
調査された人々の半数は20代で、ほとんどの女性と約半数の男性は結婚しており、未婚男性は、売春街のある漁業コミュニティーに集まっている。4人に1人の女性が、最初の子どもを20歳前に産んでいる。
国連人口基金は、ワールドビジョンとタイの地元当局を支援し、津波被災後のコミュニティー再建の計画に、リプロダクティブ・ヘルスに関するサービスと情報が含まれていること保障するよう働きかけている。国連人口基金ではさらに、タイ赤十字・エイズ・リサーチ・センター(Thai Red Cross AIDS Research Centre)が行なう被災地におけるHIV/エイズおよび他の性感染症の蔓延を減少させるための活動を支援し、より安全な性行動およびコンドームのソーシャル・マーケティングを促進している。