津波により心に傷を負った生存者および暴力の犠牲者を支援するため、心のケアサービスを提供するサポート・センターが、先月、アチェ地方の被災地に4つ開設された。
国連人口基金が支援するこのセンターでは、アチェ・ベサールおよびバンダ・アチェ地区において、特に女性と若者に対し、支援グループを通じてカウンセリング・サービスを提供する。今月、さらに2つのセンターがムラボーに開設され、その他にも2つのセンターが安全状況が改善され次第、アチェ・ジャヤに設立される予定である。
国連人口基金は、インドネシア保健省により運営されているバンダ・アチェのメンタルヘルス診療所、インドネシア精神分析医協会(HIMPSI)、リプロダクティブ・ヘルスおよび女性の人権分野のイスラム教系NGO「フラワー・アチェ」、「ファタヤットNU」と連携して取り組んでいる。
アチェで採られた被災者の心理状態のデータでは、アチェ地方でのカウンセリング支援の必要性が依然として高いことが示されている。世界保健機構(WHO)の推定によると、50万人近くの人々が被災後、いくらかの精神的な問題を抱えており、約90%の家庭で一人もしくはそれ以上の家族を失っているといわれている。地方保健事務所では、アチェ人口の半数が、30年にわたる武力闘争により、津波発生以前にすでに心理的障害を抱えていたと見積もっている。
また、津波被災後のアチェでは、女性と若者には特別な注意が必要とされている。「他者への完全な依存と相まったうつ状態のため、女性や若者は虐待や搾取の危険にさらされています」と、バーナード・コクラン国連人口基金インドネシア事務所長は述べている。
国連人口基金が支援しているこの4つのセンターは「ルモ・ピュシジュク・ハティ(心を落ち着かせる家)」として知られており、住む場所を失った人々のためのキャンプや、リプロダクティブ・ヘルスサービスを提供している地域の保健センターのそばに設置されている。このセンターには、心のケアの一助として様々な宗教書が備え付けられている。カウンセラーは、必要とあらば、アチェのメンタルヘルス診療所を患者に紹介する。
センターは、国連人口基金の支援プログラムが今まで提供してきた、津波被災後のカウンセリング経験を活用している。カウンセラーは、引き続き遠隔地域の被災者のもとへ足を運ぶ。
「ほとんどの災害において、食料や避難所といった必要不可欠な需要にかかわる問題から、医療、心理、社会問題へというように、段階的な推移が見られます。しかし、今回の災害は、4つ全てが同時に起こっています。」と、HIMPSI議長のラーマット・イスマイル博士は述べた。
センターは、欧州委員会人道支援事務局(ECHO)、ドイツ政府、日本政府から拠出された200万ドルによって支援されており、12月まで運営される予定である。
心のケア・サービスに加えて、料理、裁縫、レンガ造りといった女性が収入を得ていくためのスキルを身につけるよう支援するなど、より多様な社会的支援がセンターの業務として計画されている。「生存者も働く必要があり、それぞれが収入を得ていくための活動は大いに必要とされています。これは治療の一つなのです。」と、国連人口基金の心理プログラムオフィサーであるレボ・M・プトラは言う。
センターのスタッフも、宗教・地域の指導者やキャンプの管理者に対して、ジェンダーの平等および人権擁護を主張していきます、と彼は付け加える。
国連人口基金は、この心のケア・センターに加えて、国家家族計画調整委員会および女性エンパワーメント地方事務所が運営する女性センターによって管理されている、サキナ・ファミリーセンターの再設置を支援する。両者は共にカウンセリング・プログラムを提供する。
リプロダクティブヘルスおよび人口プログラムに対する支援を行う世界最大の多国間機関であるUNFPAは、津波後の人道的取り組みが、女性と若者の特別なニーズを確保するべく活動を行っている。