インド洋での地震と津波から半年が経過した今、国連人口基金にとって最大の優先事項は、被災した人たちに対し良質なリプロダクティブ・ヘルスサービスを提供することである。
国連人口基金が行なった資金援助は、インドネシア、スリランカ、モルディブ諸島、タイ、そしてインドで被害を受けた医療関係当局が設備を再建し、設備内に補充し、スタッフを訓練するために使われている。これは被災地で妊娠中の女性が安全な状況下での出産、必要時は緊急医療援助を受けることを可能とし、カップルが家族計画を立てられるようにするためである。
また、国連人口基金は津波被災後の生存者、特に女性に対し、ニーズの充足と尊厳の確保のために、基礎衛生キットや清潔な出産器具、避妊薬具、心のケアサービスを引き続き提供している。また、様々な団体と連携して、被災地域における女性の権利を向上させ、また、性的暴力を予防するための活動を行なっている。
国連人口基金のウェブサイトでは、現在、「被災地での女性のニーズ」「アチェの未来を支援する」と題し、アチェ州での支援活動を報告している。この報告では、国連人口基金の資金援助が州や地区の衛生局や助産師協会、家族計画委員会の対応能力の強化に充てられ、リプロダクティブ・ヘルスサービスの提供に役立てられていることを言及している。国連人口基金は災害で破壊された様々なサービスを復旧するために8つのプライマリーヘルスセンターを改修し、さらに地域保健所と可動式医療設備を設立し、避難地域の人々への援助活動を行なっている。
国連人口基金は、復興と現在進行中の避難民支援を促進するための基金を設立し、州単位で国勢調査を行なうための技術供与を行っている。これは、政策立案者に、男女間での被害の違いを含めた津波の影響と、社会福祉拡大の必要性をよりよく理解してもらうことを目的としている。
国連人口基金はスリランカの保健省への援助を通じ、被害を受けた12の地域のうち9つの地域でプライマリーヘルスケアセンターや分娩室を含む20の施設を修復し、基礎的なリプロダクティブ・ヘルスサービスと緊急産科ケアサービスの復旧を行なっている。モルディブ諸島では、6月1日に署名された政府との合意の下、国連人口基金の援助資金が医療施設の修復、設備の充足、スタッフの訓練のためにあてられる。さらに同国で最も大きな被害を受けた、ラア環礁、メーム環礁、タア環礁、ダ-ル環礁、ラーム環礁での可動式医療設備の設置にもあてられる予定となっている。
タイでは、タイそしてミャンマーからの移民コミュニティに、可動式医療設備を設置しさらに医療ボランティアを通して、リプロダクティブ・ヘルスニーズ、 HIV/AIDS予防の促進を行なっている。インドでは、タミル・ナドゥにおいて妊産婦の健康維持に必要な設備と必需品を提供し、女性と若者に対して心のケアサービス*を提供している。
アチェでは、国連人口基金が主導となり、トラウマを抱えた生存者に対しカウンセリングを行う8つのコミュニティセンターが設置され、NGOが運営をしている。これらのセンターは女性が経済的に自立するための技術提供も行っている。スリランカでは、地域の医療従事者の能力強化を取り入れるかたちで、精神的、社会的な心のケアを推奨するよう政府を支援し資金の提供を行なった。また当局者や地域の医療従事者に性的暴力を防ぐ訓練も行っている。
これらの復興活動は、安全な出産や公衆衛生に関する器具の供与、そして暴力等の予防といった女性特有のニーズを満たすという国連人口基金の救援活動目的に沿って行なわれている。すでに25万セット以上の衛生キットと大量の薬品、医療設備、避妊薬、安全な出産用品が、政府およびパートナーNGOを通じて提供されている。国連人口基金には津波被災援助にむけてドナー国より2600万ドルが寄付されている。
「この恐ろしい悲劇の余波の中、生存者に食料や水、避難場所とともにリプロダクティブ・ヘルスケアが必要だということを国際社会が認識していることは大きな励みとなっています。私たちは復興が行なわれている間にこれらのニーズが忘れ去られないよう心に留めておかねばなりません。」と、トラヤ・オベイド国連人口基金事務局長は述べた。