貧困やHIV/エイズと戦うためには思春期の若者に対するリプロダクティブ・ヘルスが緊急に必要であると国連人口基金(UNFPA)は『世界人口白書2003』の中で報告している。
青少年の望まない妊娠、安全でない出産や性感染症を回避するためのプログラムに資金が不足している結果、開発が脅かされ、HIV/エイズの蔓延にも繋がっている。これを改善するための投資は、後に何倍もの結果をもたらす。これらは、国連人口基金事務局長トラヤ・オベイドが、本日発表された報告書の調査結果である。
12億人―世界人口の5人に1人―は10~19才であり、史上最大規模の思春期の若者世代である。その内、約半数は貧困層であり、4人に1人は極度の貧困状態にあり、1日1ドル以下の生活を強いられている。『10億の思春期若者のために‐健康と権利への投資―』が報告書の副題であり、家族サポート体制の弱体化、グローバル化や都市化を含む社会規範やライフスタイルが変容する中での若者の状況が考察されている。
開発途上国では8,200万人の10~17才の女の子が18歳の誕生日までに結婚し、その結果、教育が中断され、機会を逃すことにつながっている。毎年 1,400万人の10代の若者が結婚しているか否かにかかわらず、出産している。多くは、出産に関係する病気をわずらい、少なくとも500万人は安全でない中絶を経験している。15~19才の女の子は、20代の女性より2 倍、出産時に死ぬ確率が高い。しかし、報告書によると、思春期の若者に対する家族計画は不足しているため、成人人口と比較して約2倍もそのニーズがある。
早期結婚は途上国の多くで続いている一方で、他の地域では晩婚の傾向が進み、それが未婚の若者の望まない妊娠や性感染症に直面し得る期間を延ばしている。貧困、不平等な力関係、社会規範などが多くの女の子や女性を弱い立場に立たせ、望まない関係を拒否すること、特に年上のパートナーとの間の避妊薬(具)利用や感染症予防を困難にしている。
HIV/エイズは若者の病気と化し、それは貧困、ジェンダー間の不平等、情報不足や、予防サービスの欠如により助長されている、と報告書は強調する。新規のHIV感染や、毎年3億3,300万件の治療可能な性感染症の少なくとも1/3は、15~24才の年代におきている。しかし、これらの若者の内、少人数しか自分がHIV陽性であることを知らず、青少年の大半はHIVの感染経路について知らない。
「さらなる教育と、若者が利用しやすいリプロダクティブヘルス・サービスへのアクセスが緊急に必要となっている。」とオベイド氏は述べている。「調査結果によると、正確な情報がちょうど良い年齢に伝えられた場合、自覚ある行動が促進される。」
報告書は、性教育やピア・カウンセリングといったライフスキルズ教育、サービスへのアクセスや職業訓練を組み入れた生活技能習得プログラムを国別に紹介している。地域社会主導の下で実施され、文化的な配慮があり、様々な年齢の若者を巻き込むプロジェクトは、より大きな成果を挙げられると報告書は強調している。例えば、モザンビークの「Geracao Biz」(活発な世代)プロジェクトは、学校や学校に行っていない若者を対象とした、若者自身が企画・開発したものである。マプトでは、若者が利用しやすいサービスを開始してから、カウンセリングやサービスを受けた若者の数が10倍以上に増えた。
これらプログラムは、若者がより健全な行動を効果的に促進するが、ウガンダなどでは資金不足や全ての人にサービスを提供できないといった現状がある。107カ国を調査したところ、44カ国の教育カリキュラムにエイズ教育が含まれていないことが判明した。
思春期の若者のリプロダクティブ・ヘルス/ライツのニーズに対応できない場合の高いコストや、社会的な影響についても報告書は触れている。教育や健康に対して優先的に投資する国は、開発を促す出生率の低下や、労働人口の一時的増加などに恵まれる。今後20年に渡り、各地域で好機が訪れはじめるが、これを活かすために投資は必要である。
「世界最大の思春期の若者世代のウェル・ビーイングや社会参加へ投資することは、次世代に多大な利益をもたらす」とオベイド氏は言う。「若者の可能性を改善することは、全ての人々への可能性を改善することに繋がる。」