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国連人口基金事務局長トラヤ・A・オベイドは、家族計画のための資金が大幅に縮小しているため、開発途上国に住む人々の家族計画に支障をきたしていると警告した。事務局長は、全ての人口分野への援助のうち、家族計画に割り当てられる資金は1995年の55%から、2004年には9%にまで落ち込んだと述べた。これは、ドル換算で、1995年の7億2,300万ドル(約846億円)から2004年の4億4,200万ドル(約517億円)への減額となる。

事務局長は、「この減額により、リプロダクティブ・ライツを行使出来ず、家族計画を実行することが出来ない貧しい国々の貧しい女性たちが不利益を被っています。これは、緊急に対策を講じる必要がある深刻な問題です」と述べた。

また、事務局長は以下のように述べた。「途上国には、有効な避妊手段を利用できない2億人の女性がいます。その結果、望まれない妊娠や、安全でない避妊法利用率、女性と子供の命が危険にさらされる機会などが増加しています。」

事務局長は、セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスサービスへの投資は、他の保健・社会サービスへの投資よりも効果が上がり、経済成長やジェンダー平等の促進、貧困の削減、HIV/エイズ蔓延による経済・社会状態の悪化に歯止めをかけるなど大きな効果を上げることが出来るであろうと伝えている。

4月10日に行われた国連人口開発委員会での演説で、事務局長は、「人口分野への資金額は増加しているものの、現在あるニーズを全て満たしてはいません。 1994年以降、ドルの価値が下がっている一方で、予想を超えるHIV/エイズの蔓延によって保健関連のコストは大幅に上昇しています」と語った。

事務局長は、国際人口開発会議(ICPD)行動計画を実施するためのさらなる資金援助を各国に要請した。さらに、「家族計画の利用を確実にするだけでも、妊産婦死亡率を20%から35%削減することができ、幼児死亡率は20%削減出来るとされています」と述べ、家族計画を含めたリプロダクティブ・ヘルスケアの有効性を強調した。

国連人口部長であるハニア・ズロトニク(Hania Zlotnik)氏は同委員会で、「1950年から1987年にかけて世界の人口は25億人から50億人へと2倍になりました。地球上で人類が生きながらえるためには、同じようなペースで人口が倍増するようなことがあってはなりません」と警告した。

ズロトニク氏は、個人とカップルの子供の数を決めることの重要性について言及し、「出生率が削減出来れば、家族の規模も縮小し、親は子供一人ひとりにより多くの投資をすることが出来ます」と述べた。

また事務局長は、後発開発途上国で急増している若年人口に対する対策の必要性を世界各国に呼びかけた。「開発目標を達成し、地球上の全ての人々にとってよりよい世界を築くためには、若者に対して、緊急に、そして積極的に働きかけていく必要があります。」

事務局長は以下のように結んだ。「高齢者が健全で生産的であるためには、若者が健全で生産的である必要があります。その両者があってこそ、社会の発展が実現し、どの年齢層の人々にとっても住みよい世界となるでしょう。」