年間約50万人、各世代で1,000万人に上る女性や少女の妊娠・出産中の死亡、400万人の新生児死亡に歯止めをかけることを目的とする画期的な国際会議が来る10月ロンドンで開催される。このような悲惨な死は、世界の貧困の主要な原因となっているが、少ない出資でも効率的にかつ容易に防ぐことが出来るのである。
妊産婦の健康推進のための国際会議"Women Deliver" では、2,000人以上の参加者によって、妊娠・出産に関連する死を防ぐための新しい、また確実に効果のある方法が検討される。会議では、健康に関しての情報やサービスの提供方法・資金援助の仕方を改善する戦略の検討に加えて、貧困削減、女性の人権、経済発展といった重要課題にも取り組む。
会議には、75カ国以上から、大臣、国連機関代表、その他多国間機関からの参加者や 政府高官、医療従事者、研究者、経済学者、リプロダクティブ・ヘルスの推進団体な どが参加する。
リアライジング・ライツ(倫理的グローバリゼーションイニシアチブ)代表で元アイルランド大統領であるメアリー・ロビンソン氏が会議の名誉会長を務める。ロビンソン氏は、「毎日、毎分、妊娠・出産によって女性が死亡しています。その数は各世代で1,000万人にも上ります。そのほとんどが開発途上国で起こっており、そしてほと んどが回避可能なのです」と語った。
経済的に豊かな国と貧しい国、そして一つの国の中でも富裕層と貧困層の間には大きな格差がある。国連の統計によると、アフガニスタンでは6人に一人の出産可能年齢の女性が妊娠に関連した原因によって死亡しているが、アメリカ合衆国では2,500人に一人、スウェーデンでは29,800人に一人である。各国の最新のデータがWomen Deliver会議の直前に発表される。
女性への支援は見返り大
Women Deliver会議では、妊娠をより安全なものとし、女性が自身の能力を最大限に 発揮できるための、今までにない女性への支援方法を検討する。
会議の主催団体の一つであるファミリー・ケア・インターナショナル(Family Care International)代表のジル・シェフィールド氏は、「子どもの出産は、母親の人生において幸せな瞬間であるべきであり、最後の瞬間となるべきではありません。この会 議"Women Deliver"は、安全な出産と健康な乳幼児のためのものであり、そして人権、女子への教育、資金、リプロダクティブ・ヘルスへのアクセス、政治的意思、ジェンダー平等に関する戦略について、女性のために話し合う機会です」と語った。
女性の健康や権利に対して本格的に支援をすることにより、女性が単に次の世代の子どもを出産できるというだけでなく、経済発展や識字率や生産力の上昇、家族・地域社 会・国の健康や福祉の向上など、開発団体が達成を目指している全てを可能とすることが出来るだろう。
Women Deliver会議で講演を行う国連人口基金(UNFPA)事務局長トラヤ・A・オベイド は、「この会議は、普段あまり注目されることのない悲劇に対する注意を促し、関係者一同が一致団結して取り組むための後押しとなるでしょう」と語った。
他の参加者:
・マーガレット・チャン(Dr. Margaret Chan):世界保健機関(WHO)事務局長
・ピーター・ピオット(Dr. Peter Piot):国連合同エイズ計画(UNAIDS)事務局長
・アン・ベネマン(Anne Veneman):ユニセフ(UNICEF)事務局長
・アッサネ・ディオプ(Assane Diop):国際労働機関(ILO)事務局長
・ギータンジャリ・ミスラ(Geetanjali Misra):女性と開発学会 会長
タイミングが全て:
2007年は、女性の健康と権利を推進するために重要な年である。Women Deliver会議は、「妊産婦の健康を守るイニシアチブ」の20周年を記念するものであり、また192 カ国がミレニアム開発目標(MDGs)の8つの目標を採択した2000年と、その達成目標の年である2015年との中間点でもあるからだ。
ミレニアム開発目標の8つの目標の1つである「妊産婦の健康の改善」は、この目標が達成されなければ他の目標も達成されないことから開発目標の中核であるとされている。妊産婦の健康は他の全ての目標と関連しており、特に新生児や子どもの健康の改善や、HIV/エイズ感染者数の削減、教育の完全普及、ジェンダー平等の推進などの目標の支えともなっている。しかしその一方で、妊産婦と新生児の健康は未だに十分な注 目と資金が集まっていないのが現状である。
シェフィールド氏は、「政治的意思が高まり十分な支援が行われば、ほとんどの女性、新生児が出産や妊娠に関わる死を逃れることが可能となり、ひいては家族や地域社会、国の成長にもつながっていくでしょう」と述べている。
会議の検討課題: 5つの全体会議と100近いセミナーが平行して開催されるが、女性と少女に対する5つの重要な支援分野として、次の5点に焦点が当てられる。
・女性と新生児の健康の改善
・人権推進
・資金源の拡大
・政治的意思の確立
・女性の積極的登用
主催者:この会議を計画した主な団体は、国連人口基金(UNFPA)、ユニセフ(UNICEF)、世界銀行、世界保健機関(WHO)、英国国際開発省(DFID)、オランダ外務省、ノルウェー開発協力庁(NORAD)、スウェーデン国際開発協力庁(Sida)、ファミリー・ケア・インターナショナル、国際家族計画連盟(IPPF)、セーブ・ザ・チルドレン(Save the Children)、妊産婦と子どもの健康のためのパートナーシップ(Partnership for Maternal, Newborn and Child Health)である。また組織委員会には40以上のNGO団体が参加している。
Women Deliver会議について:会議の基調講演者や会議結果などWomen Deliver会議に関する情報を含む定期的なニュース・リリースを受け取るにはEnews registrationへ。
「ニューズウィーク」誌に掲載されたWomen Deliver会議に関するコラム記事は”How Can You Help Save Mother’s Lives”を参照。
国連人口基金は、リプロダクティブ・ヘルスを支援する主導的な国連機関であり、 Women Deliver会議の中心的な企画団体グループの1つである。詳細情報はこちらから