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世界各国の家族計画の促進のための資金が緊急に、そしてもっと多く必要とされている。活用できる財源がなければ、開発途上国の2億人の女性たちが「自らの家族の人数を決定する」という人権を行使することができず、望まれない妊娠と人工妊娠中絶の発生数は増えつづけることになるだろう。これは、女性と子供たちの命を、そしてミレニアム開発目標の達成を、リスクにさらすことにつながる---と、国連人口基金(UNFPA)事務局長のトラヤ・オベイドは指摘する。

4月3日に開催された人口開発委員会(経済社会理事会の機能委員会の一つ)で、オベイド事務局長は、「この5年で人口関連問題への資金援助は2倍になりました。しかし内訳を見てみると、家族計画を対象とする援助は、1995年には人口関連分野の過半を占めていましたが、2004年には10%以下になってしまいました」と述べた。

人口関連問題の援助全般は増加しているが、今日のニーズの大きさを考えると充分とは言えない。その多くが少数の支援国によるものであり、しかも、近年ではかなりの財源がHIV/エイズ対策費に特定されるようになっている。これは、HIV/エイズ以外の重要な分野、つまり家族計画対策費などから財源を移すことでまかなわれているのが現状である。

人口関連問題へ投資することは、移民などの国際人口移動の解決への糸口となる。事務局長オベイドの発言を引用すれば、「今日、家族計画のニーズが最も満たされていない地域はサハラ以南のアフリカ諸国です。この地域では、4人に1人の既婚女性が、希望しているにもかかわらず、家族計画サービスを享受できないのです。そして、これらの国々は同時に、貧困と人口増加において、世界で最も高い率を示しています。貧困と人口増加は、しばしば人々を移民に追いやる要因となるのです」。

国際移民のほぼ半数は女性であり、その多くがジェンダーによる差別、暴力、さらには虐待の危険にさらされている。最悪の場合には、悲惨な人身売買の犠牲となることもある。「だからこそ、各国は一刻も早くジェンダーと人権の観点を移民政策に取り入れると共に、人身売買を阻止し、人身売買関係者を適切に処罰するために各国が協力する必要があるのです」と事務局長オベイドは指摘した。

多くの開発途上国では、医療保健関係者が先進国に移住してしまう傾向があるため、保健分野で深刻な人材不足が起きている。この状況は、HIV/エイズ問題が猛威をふるっている国々で特に大きな負の影響をもたらす。移民受入国は、移民の出身国である開発途上国に対する開発援助を教育・訓練の分野、特に保健医療教育・訓練に割り当てることで、この問題に対処することができる。