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国連人口基金(UNFPA)は、インド洋大津波による被害が最も大きかったインドネシア、スリランカ、モルディブの三カ国における女性と若者の被災者を対象とした救援・復興支援のため約2800万米ドルをドナー国に求めていくことを決定した。国連人口基金では特に保健・衛生支援のほか女性被災者の安全確保に向けた救援活動を行なっていく。

国連人口基金が算出した2800万ドルという救援・復興事業の見積もりは、6日(木)にインドネシアの首都ジャカルタで発表される国連機関共同緊急アピールで正式に発表される。国連人口基金は被災国政府、現地NGO(非政府組織)、各国連機関および人道援助機関と連携しながら、この先6ヶ月間、以下のような救援・復興事業を行なっていく。

•安全な出産、緊急産科ケアおよびHIV感染予防に必要な医療物資(機器、医薬品など)の配布
•妊産婦保健サービスの再開と被災地における保健・医療施設等の復旧
•夫を失った女性被災者に対する心のケア、カウンセリングなどの実施
•女性や未成年者に対する暴力の予防と被害者の治療(共同体ベースの支援プログラムと医療・心理サポート)
•救援物資、仮設医療施設、護衛などのサービスが夫を失った女性被災者や社会的弱者などへ行き渡ることを推進
•生理用品の提供・配布
•未成年者に対する支援の実施(教育プログラムやドロップイン・センター[1]の活用)
[1] 立ち寄ってくつろいだり相談したりできる公共の施設

救援・復興事業の国別内訳

インドネシア(1800万米ドル)

スマトラ島のアチェ州などでは地震と津波によって8万人以上が死亡し、医療施設、道路や橋、通信施設、食料品・燃料の販売路などが壊滅的な打撃を被っているため、少なくとも100万人以上に対し緊急援助が必要となっている。国連人口基金では、WHO(世界保健機関)とインドネシア保健省と連携し、1800 万米ドルのうち800万米ドルを医療サービス(妊産婦医療とHIV/エイズなどの性感染症予防)の復旧費用に充て活動を行なう。国連人口基金は特に妊産婦・乳幼児死亡を極力抑えるため医薬品や医療機器の提供・配布などを通し安全な出産や緊急産科ケアサービスの復旧を目指している。また、物資の提供に加え、政府職員やNGO職員などの医療従事者に対し訓練サポートを行なうほか、技術供与、保健所などの施設の復旧、病院照会システムや合併症を起こした妊婦の搬送のサポートを行なう。

被災者の心のケアに対する緊急支援として700万米ドルが充てられていて、カウンセリング実施のほかサロン(腰巻)やスカーフなど衣類の提供を計画している。最も被害の大きかったアチェ州では被災者の心的ストレスがひどく、大人が子どもの世話はおろか自分の身の回りの世話もできないほどでカウンセリングが緊急に必要となっている。石鹸、手ぬぐい、生理用品などが入った衛生キットの配布もこの700万米ドルでまかなわれる。

残りの300万米ドルは、女性や社会的弱者がより効果的に飲料水、食料などの救援物資や医療、衛生施設にアクセスできるよう避難所などでの体制作りに充てられる。国連人口基金では現地NGOなどと協力して、子どもやけが人などの世話に追われ救援物資の受け取りができない母親などでも必要な物資が手に入れられるような体制を構築していく。また、この300万米ドルを使って女性や未成年者に対する暴力防止プログラムを展開する予定だ。

スリランカ(750万米ドル)

スリランカにおける津波による死者は3万人以上、家を失った人はおよそ86万人いるとされる。国連人口基金ではその中でも50万人の女性被災者に対し保健・医療支援を行なっていく。資金の大半にあたる650米万ドルを被災地での妊産婦医療サービスの復旧費用に充て、安全な出産と緊急産科ケアの確保を目指す。国際人道援助機関や現地機関と連携し、産科病棟・分娩室それぞれ20施設と2箇所の緊急産科ケア施設の復旧、再建を予定している。そのほかにも、衛生キットの配布、医療施設の場所など情報の発信、HIV/エイズなど性感染症の予防、性的暴力の防止と被害者のケアなどを目指している。残りの資金を利用して、医療従事者やNGO、ユース・ネットワークなどの職員に対し被災者の心のケアに関連した訓練プログラムを実施するほか、特に性的暴力の女性被害者に対する心のケアに対応していく。

モルディブ(240万米ドル)

団体部門での授賞となるAPROFAMONGは1964年に設立され、民間の非営利、非宗教団体として、リプロダクティブ・ヘルス教育とグアテマラにおける家族問題のケア、及びカウンセリングを提供している。また、低所得の人々に質の高いリプロダクティブ・ヘルスサービスの提供をミッションとしており、グアテマラのリプロダクティブ・ヘルス分野でイニシアチブを取っている。開発計画におけるジェンダー問題を取り上げるなど、その活動は、国内の人口およびリプロダクティブ・ヘルスプログラムのための法的整備や実施のための枠組み作りに役立てられている。また、人口に関するより実質的な提案を政府に示すほか、グアテマラのより正確な人口統計データを収集および提供を行なっている。

モルディブでは200の島で少なくとも1500人の妊婦が被災し、およそ1000人が6ヵ月以内に出産を迎えるとされているが、医療施設などは不十分なままである。国連人口基金では現地の保健・医療施設が崩壊していて安全な出産が難しいことを危惧している。環状サンゴ島にある10箇所の病院と保健所では建物だけでなく備品や医療機器の損壊が激しく、加えて20箇所の診療所が損壊している。

国連人口基金では200万米ドルを保健・医療施設の復旧に充て、特に被害の大きかった地域での妊産婦保健サービスの再開を目指している。ワクチン等医薬品のほか緊急出産キットや避妊薬(具)の供与も予定しており、妊娠・出産における合併症に対して効果的に対応できるよう支援していく。また、思春期の若者性と生殖に関する健康HIV/エイズなど性感染症予防支援も行なう予定である。

国連人口基金はさらに40万米ドルを使って女性と少女に対する安全確保と心のケアを支援するプログラムを予定し、保健省や現地機関と協力しながら家族や地域社会に重点を置いた活動を計画している。

国連人口基金は津波の被害にあったすべての国に現地事務所を持っており、震災直後から関係各機関と連携し被災状況の把握、医薬品の配布を始めて保健・医療施設と緊急産科ケア実施の早期再開を目指している。さらに、石鹸、手ぬぐい、生理用品などが入った衛生キットを数万セット配布し、着の身着のままの女性被災者に救援の手を差し伸べている。また国連人口基金では緊急援助資金としてすでに300万米ドルを確保したほか、医薬品、医療機器などを供与するため資金の追加を決定した。

緊急アピール発表の前日、トラヤ・オベイド国連人口基金事務局長はコメントを発表し、国連人口基金が提示する女性被災者支援へのアピールに対しドナー国は迅速に反応するだろうと国際社会への信頼を明らかにした。またコメントでは、「このような非常事態では女性は救援活動の柱です。子どもや残された家族の世話をする女性には特別なケアが必要になります。被災地に暮らす女性や未成年者に対する支援は一刻を争う課題です。数ヶ月先、数年先を考えれば、女性や未成年者に対する支援を優先させることは地域社会の復興を早める初期投資であります」と述べた。

国連機関共同緊急アピール(英文)はこちらからhttp://www.reliefweb.int/appeals/temp/flashappeal.html

地震と津波による被災者の国連人口基金救援活動の詳細は
本部ホームページ(www.unfpa.org)をご参照ください。

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