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国連人口基金は3月21日、イラク戦争によって国土を追われる妊産婦の健康を守るためのイラク国内と周辺国への医療物資提供をニューヨーク国連本部にて発表した。

国連人口基金はイラクで出産可能年齢にある女性の約5分の1を占める妊産婦が安全な出産、清潔な出産環境、そして緊急事態を要する分娩の場合の産科看護を確保できる様活動を続けている。

国連人口基金が提供した救命物資は移動型救急産科院施設車、救急車、超音波スキャナーの他、抗生物質、薬品、分娩キット、生理用品、避妊薬(避妊具)など、母親が安心して子育てをするために最低限必要なリプロダクティブ・ヘルスのための医療物資である。

長年にわたる紛争と国際的な制裁措置による医療保険制度への打撃はイラクの女性と子どもに悪影響を及ぼしてきた。妊産婦の死亡率は1980年代後半には 10万件の出産のうち117件だったのに対し、現在は370件と倍増している。また、新生児と5歳以下の乳幼児死亡率も急増している。

軍事紛争は妊産婦の医師・医療保険制度の利用を困難にし、流産や早産、妊娠合併症の可能性を高めるなど、国土を追われる妊産婦の健康にさらなる悪影響をもたらす危険性がある。

戦時下の混乱は助産、立会い出産、産後ケアなどのリプロダクティブ・ヘルスに関する情報、サービスへのアクセスを不可能にするため出産や妊娠合併症が難民の女性と女児の最大死亡原因を占める。

紛争に対する素早い対応を迫られた国連人口基金は既に35台の移動式病院施設車と4棟の難民支援設備を含む必要最低限のリプロダクティブ・ヘルスのための医療物資をイラク国内に配備すると共に、キプロスにある国連人道問題調整センター(UN humanitarian coordination centre)に今回の救済活動を担当するチーフを派遣した。

国連人口基金はまた、難民の流入が予想される周辺国での対応も同時に進め、各国政府、国際機関、NGOと連携し緊急支援にリプロダクティブ・へルス・サービスを盛り込むべく活動を続けている。

•例えば国連人口基金はヨルダン政府に対し、心理・トラウマカウンセリングを含む出産に関する緊急リプロダクティブ・出産ケアを支援するため安全な出産のための物資と看護スタッフを提供した。
•国連人口基金が抱える医療スタッフが人道支援を行うシリアでは、国連人口基金が政府に移動病院施設車と最低限必要なリプロダクティブへルスのための医療物資を提供した。
•イラク難民の大部分が押し寄せると予測されているイラン西部のケルマンシャ(Kermanshah)では緊急対策コーディネーターとサポートスタッフを配した国連人口基金事務所が開設された。
•国連人口基金は既にトルコのディヤルバクル(Diyarbakir)にリプロダクティブ・ヘルス用品を送り、今後はそれら物資の供給制度を確立するほか、リプロダクティブ・ヘルスのための患者照会施設を設立する。
さらに国連人口基金は今回のイラク危機を扱う国連の地域担当チームの代表として情報の収集と分析に務めている。

国連人口基金はそのほかにも国際赤十字社・赤新月社連盟(International Federation of Red Cross and Red International Rescue Committee)、国際救済委員会、難民のためのリプロダクティブ・ヘルス協会(Reproductive Health for Refugees Consortium)、メデュサン・ドゥ・モンド(Medecins du Monde)、アンファン・ドゥ・モンド(Enfants du Monde)、プレミア・アージェンス(Premiere Urgence)、国境なき医師団、ケア(CARE)などを含むそのほヵ国際機関やNGOと協力している。

これらの活動を続行し、さらに拡大して行くために国連人口基金は今後6ヵ月の間に500万ドルの資金提供を呼びかけている。

国連人口基金は人口援助の世界最大の多国間基金として、1972年からリプロダクティブ・ヘルスと家族計画に関するサービスへのアクセス改善を目指してイラクでの活動を続けてきた(1990年代初頭の一時的な活動停止を除く)。その結果、リプロダクティブ・ヘルス・サービスを提供する医療機関が1995年の37件から2001年には146件に増加した。