国際人口開発会議(ICPD)で採択された「行動計画」に関する世界国会議員会議が18日、フランスのストラスブールで始まった。この会議には90ヶ国から大臣閣僚および国会議員が参加し、2015年までにすべての人にリプロダクティブ・ヘルスサービスを提供することや妊産婦死亡を減少させるという目標に関しその進捗状況を確認する。2日間の会議は欧州評議会議員会議によって主催され、人口と開発に関するヨーロッパ議員懇談会と国連人口基金(UNFPA)によって運営される。
ビデオメッセージの中で国連アナン事務総長は、「国会議員は『財布』の紐を握っています。貧困対策や女性の問題に関心が集まるよう資金を割り当てる権限を持っているのです。また、法律をつくる権限によって、一定の水準が守られるようにすることもできるのです」と発言した。
ICPD「行動計画」とは、リプロダクティブ・ヘルスサービス、教育、および女性の権利へ投資することによって、人口増加を緩和し、経済成長を促進することを目指した壮大な20カ年計画である。今年は「行動計画」の中間地点であり、各国の国会議員には今後の10年間の前進のために大きな役割が期待されている。この世界国会議員会議は、今年ICPDから10年を記念して行なわれているイベントのひとつで、他にも世界のNGOが集まって開催された円卓会議「カウントダウン2015」や10月14日の国連総会および一連の地域会議や公開イベントなどがある。
会議ではトラヤ・オベイド国連人口基金事務局長が、「生と死は政治的決断であります。そして、国会議員こそが法律や政策を実行し予算を配分することによって、教育や性と生殖に関する医療が普及し、命が救われるのです」と述べ、無知と貧困、そして何百万件もの妊産婦や乳幼児の死亡を食い止めるこうした活動こそ政府ができる最もよい投資であるとの見解を示した。
この会議では、緊急に必要な資金調達や人口とリプロダクティブ・ヘルスに関する法律と政策の実行に国会議員がどのように関与できるかが議論の焦点になる。資金不足は、任意の家族計画サービスの拡充、安全な母性の保障そしてHIV/エイズ予防対策の拡大に支障をきたすほど深刻化している。
また、会議では欧州評議会事務局長のテリー・デービス議員が、「死亡率が下がることはそれだけ命が助かっているということです。すべての人に適切なヘルスケアを提供することはすべての人に活力と経済力を与えることです。貧困の削減は人間の尊厳を取り戻すことです。そして女性の地位向上は社会全体の向上につながります。われわれは常にこのことを心にとめておく必要があります」と発言し、活動の重要性を強くうったえた。
高品質の避妊薬(具)を提供するために今後10年でかかる費用は8億1000万ドルから18億ドルに増加すると推定されている。国連人口基金の試算では、 100万ドル相当の避妊薬(具)があれば、妊産婦死亡を800件、人工妊娠中絶を15万件、もしくは望まない妊娠を36万件、防ぐことができるとされている。
欧州評議会議員会議の議長でスイスの国会議員でもあるルース・ジェンナー(Ruth Genner)氏は、「今日、多くの国の人々は近代的避妊方法についての知識を有しています。そして、それらを使用したいと願いかつ使用方法も知っているのです。しかし、避妊薬(具)を入手できないというのが現状なのです」と述べた。また、ジェンナー議員は、サハラ以南のアフリカでは成人男性1人が1年に1つのコンドームしか入手することができない国があることや東欧のいくつかの国ではひと月分の避妊ピルがひと月分の賃金の20-30%に相当するのに、人工妊娠中絶の費用はその10分の1にしかならないという状況を指摘し、「このような状況で、アフリカでのHIV感染率の高さに驚くことができるでしょうか?東欧で中絶率が高いということに驚くことができるでしょうか?」と窮状をうったえた。
ストラスブールに集まった国会議員は、各国が次の10年間に実施すべき具体的な行動を示す確固たる誓約を採択する予定である。
この会議を支援している国会議員のグループには、人口と開発に関するアジア議員フォーラム、人口と開発に関するアフリカ・アラブ議員フォーラム、人口と開発に関するアメリカ地域議員グループそして地球的行動のための議員連盟がある