フリータウン郊外の、雨ざらしになった赤土の道をあがった所に、女性たちが家と呼んでいる間に合わせのシェルターがある。そのうちの一人、19才のカジジャ・バー(Khadija Bah)は言う。「私はずいぶん前にこの場所を見つけました。ひどい生活を送っていたところで、ジュリアナおばさんに出会ったのです」
「ジュリアナおばさん」というのは、1997年にウィメン・イン・クライシス(Women in Crisis)というプロジェクトを立ち上げた福音派宣教師のジュリアナ・コンテ (Juliana Konteh) 氏(42)のこと。「とある売春宿で女性達に会って、助けてあげようと決心したのです。彼女たちには食料、衣服、保護と暖かい心づくしが必要でした。」
現在、主にシエラレオネの激しい内戦の被害を受けた400人ほどの女性および少女たちがこの丘の家で保護を受けている。カジジャはまだ10代だが、その年代とは思えないような体験をしてきた。目の前で両親を殺害され、夫の前でレイプされ、その直後に夫も処刑された。その後、カジジャによると反政府主義者に拉致され、森の中で彼らの妻として身の回りの世話をさせられていた。
10年以上続いた戦争で、この緑豊かな海沿いの国とその国民は、深く傷ついている。概算によると、6万人もの人々が殺害され、数千人もの人々が故意に不具にされた。また、紛争の間、レイプや性的虐待も広く行われていた。3人に1人は強制的に住居を追い出されており、その多くはカジジャのようにフリータウンを目指していった。
今日、フリータウンは生活を立て直そうとする人々で人口過密状態である。少女や女性たちもたくさんおり、戦争で家族を失い、必死で生き延びようとしている。その多くが性産業に走るが、HIV/AIDSが増加する中、そのような生活は命取りとなることもある。
このウィメン・イン・クライシス・プロジェクトはカジジャのように頼るつてのない人々に生活のすべを提供している。国連人口基金は2001年から各種サービスの支援を行ってきた。気軽に立ち寄れるセンターでは、カウンセリングやトレーニングを行い、クリニックでは性感染症の予防や治療を行っている。
丘にある女性たちの家から車で少し行ったところに、完成間際の新築のビルが建っている。その3階立てのセメントブロックの建物は、女性たちが布地の絞り染めや仕立て、美容師などの技術を身につける新しい職業訓練センターである。クリニックも併設される予定で、既に保健省が複数の看護師の配属を決めている。建築を完成させ、現在ボランティアで教えている教師たちに給料を支払うためには、追加の資金が必要である。
「このプロジェクトは『無限大といえるニーズの一つ』を満たしたに過ぎないが、こういった試みがうまくいくのだということを示してくれた」と国連人口基金シエラレオネ代表のマムドゥ・ディアロ (Mamadou Diallo) 氏は述べた。