ブシュラ(Bushra)(17歳)は地震の数日後に陣痛が始まりましたが赤ちゃんはなかなか生まれず、家族は彼女を被災地で唯一機能しているカシミールの産科病棟へ連れて行きました。彼女は無事に出産を終えましたが、その後大量の出血にみまわれました。
AIMs Hospitalの母子保健医療サービス復旧のために政府より派遣された産婦人科医ファラハト・マリック(Dr.Farhat Malic)は、「子宮を取り除き、彼女の命を救うことができました。状態がとても悪化し、それが残された最後の手段でした。」と話しました。
マンセラ(Mansehra)の被災した病院に設けられた臨時分娩室では、サニア・タンベール医師(Dr.Sania Tanver)がレジア(Rezia)(30歳)の命を救いました。「彼女は運び込まれた時、すでに大量に出血していました。おそらく、地震の時に胎盤が破裂してしまったのでしょう。1,500ccの血液を投与し、緊急帝王切開を行ない、彼女は無事に出産することができ、今日退院の予定です。」
二人の医師によると、国連人口基金の現地スタッフの迅速な支援協力により、産科施設の立ち上げから短期間で対応が可能になったと話しています。タンベール医師は、「患者用のテントや物資が国連人口基金から大量に提供されました。私たちは大量の血液が必要になったため、肝炎ウイルス検査用のキットをさらに要請しました。国連人口基金はマンセラに拠点を置いていたので、ここへ一番目に到着しました。」
10月8日の地震で、保健医療施設の多くが破壊され、保健システムも混乱状態に陥りました。何万もの命が失われ、今も多くの人々が重傷を負っています。家の中にいた女性や、学校にいる子どもは特に大きな被害を受けました。
山岳地帯にいる推定400万人の生存者(そのうち300万人は住む家を失っている)に対し、適切な避難所、食糧、水、衛生および保健医療サービスの提供が求められています。これは、人道支援を行なう団体にとって未だかつて経験したことのない大きな物流管理の課題となっています。様々な国際機関が、この重大な課題に取り組むパキスタン当局に支援を行なっています。国連人口基金は、安全な妊娠と出産に重点を置きながら、国連合同分野別緊急支援の一環として保健医療分野で支援を行なっています。
国連人口基金パキスタンは、マンセラとムザファラバードに地域事務所を構え、地震直後からイスラマバードからの保健医療物資の輸送手配や緊急保健医療サービスを提供するなど、迅速に対応を行なっています。
マンセラの地域プログラムオフィサー、シド・アリフ・フセイン医師(Dr.Syed Arif Hussain)は、地域病院と連絡を取り、必要物資について問い合わせました。「何百人もの患者が押しかけ、病院では物資が足りない状態です。」彼は地元の市場で買えるだけの物資を買い込み、国連人口基金のカントリー・オフィスにテントを要請しました。
アリフ医師は救急車隊および保健医療スタッフチームを組織し、壊滅的な被害を受けたバラコット(Balakot)地域からの重傷者に応対しています。彼は被災時のことを思い起こし、「あの晩は悲惨な状況でした。現場にいた人たちは皆、あの時のことを一生涯忘れることはないでしょう」と語っています。
各地区の国連人口基金巡回医療サービスチームが、保健医療センターが崩壊した地域に直ちに派遣されました。また何百キロも離れた地区からも医療チームが送り込まれ、道路が整備されるとすぐに遠隔地へも派遣されました。
9つの巡回医療チームが現在2ヶ所の被災地で支援活動を行なっており、各チームは一日に約250人の患者の診療を行なっています。医療チームは女性の医師、看護助産師、保健医療従事者で構成され、妊産婦検診や婦人科治療のほかに、被災した子ども、女性、男性の様々な病気にも応対しています。
深刻な被害を受けたマンセラ地域のガーリ・ハビーブッラー(Gali Habibullah)では、ほとんどの病院が崩壊しました。パンジャブ(Punjab)州では、国連人口基金巡回医療チームの1つが医療提供を開始します。
多くの患者が、地震の際に負った傷口に適切な処置を施されなかったために皮膚感染が発生していると、ナーヒード・アンジュン医師(Dr.Naheed Anjun)は報告しています。また、多くの子どもたちが、寒く不衛生な環境にさらされていたために呼吸器感染や、激しい下痢にみまわれ治療を受けています。さらに診療している患者の約半数が、うつ病や不安、不眠症や食欲不振、余震に対する恐怖のためにカウンセリングを必要としています。
ある女性が出産を目前に控えています。彼女は以前に、帝王切開を受けたため、再度手術の必要がありましたが、地域病院へ長距離を移動するにはあまりに精神的外傷を負っていたため、アンジュン医師が現場で臨時的な手術を施す予定です。
国連人口基金によって6ヵ月前に建てられた新しい産科病棟が跡形もなく崩壊してしまったチョキ(Choki)の地域ヘルスセンターの傍らに、巡回医療チームが配置されました。そこのテントの周りには男性と女性それぞれの人だかりができています。ブシュラ・マナール医師(Dr.Bushra Manar)は出生前診断を行なっており、地震後一週間に彼女はすでに数百人の患者を診療し、二人の出産を無事介助しました。「私たちには十分な物資が揃っています。そして何か問題があると予想される患者が出た場合には、マンセラに運ぶ救急車もあります。」と話しています。
この震災下で、妊産婦の保健福祉は最重要課題です。パキスタン全域で、10万人の出生につき540人もの母親が亡くなっていると推定されています。また、被災地域では一ヶ月に9,000件の出生があるとされています。この地震によって既に充分とは言えなかった産婦人科施設は崩壊し、多くの女性の保健医療サービス提供者が負傷、死亡もしくは避難を強いられています。妊娠をしている被災者は貧血性、栄養失調、病気に感染しやすい状態にあり、子宮内死亡および流産も多く報告されています。
本日(21日)、国連人口基金はムザファラバードとマンセラに、新たにリプロダクティブ・ヘルスに関わる緊急支援物資を輸送しました。この中には、2万個の自宅分娩キットが含まれており、妊娠6ヵ月の女性に配布され、さらに1万個の医療産科キットが医師や訓練を受けた助産師に配布されます。
その他にも、輸血用キット、流産合併症用キット、妊娠合併症用キット、帝王切開キット、母子蘇生キットが配布されます。これらのキットは9つの巡回医療チームで使用され、さらに2地区で基礎保健サービスを提供する政府やパートナーNGOに配布されます。
パキスタンへの合同人道支援アピールの一環で、UNFPAは拠出国に対し900万ドルのリプロダクティブ・ヘルスのニーズへの支援、および100万ドルの衛生用品への支援を要請しています。