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005年10月8日、パキスタン北部およびパキスタン側のカシミール地域で起きた地震はマグニチュード7.6の巨大なもので、死者8万人以上、負傷者は14万人以上、家を失った人々が350万人と言う、甚大な被害をもたらした。地震発生から半年が経過したが、現在も支援へのニーズは非常に高い。国連人口基金(UNFPA)ではこれを受け、被災者、特に女性や思春期の少女たちを対象とする保健分野での支援を継続している。

国連人口基金の被災地支援について、「インド洋津波被害など、世界のさまざまな災害被災者支援での経験から、こうした非常事態においては女性と少女たちが特に大きな影響を受けることがわかっています。こうした女性たちの状況に焦点を当て、また当初の緊急支援から復旧、復興と進む事態の推移を勘案した支援が必要なのです。パキスタンの地震被災地でも、国連人口基金は女性たちの差し迫った保健面のニーズに対応するだけでなく、生活とコミュニティの再建において、女性たちが主体的に関われるようにするための活動を行っています」と、国連人口基金事務局長トラヤ・オベイドは強調している。

現地の保健行政担当者や地域の人々によれば、保健医療サービスは被災直後に比べかなり改善されている。これには、国連人口基金や世界保健機構(WHO)を始めとする多くの組織の協力が役立った。ほとんどの被災した地域では、保健インフラの損傷が激しかったので、国連人口基金の移動サービスユニット (MSU)がコミュニティに基礎的な保健サービスを提供しつづけている。9隊のMSUとプレハブ建ての5箇所の保健センターで、これまでに15万 6,000人以上の人々が治療やサービスを受け、1200件の出産が行われた。また、MSUやプレハブの保健センターでは適切に処置が覚束ない、より高度な治療が必要な場合には、患者をもっと設備の整った医療施設に紹介する措置が取られるが、こうしたケースも2400件以上に上っている。

この他にも国連人口基金はさまざまな活動を行っている。 国連人口基金は保健省(中央政府と地方自治体のいずれも)と協働し、プレハブの保健施設を建設中である。現行のものに加え、10の移動式クリニックと13のプレハブ保健施設が今後提供されることになっている。

また、現地のNGOと協力し、コミュニティに女性と思春期の少女たちのための特別の"スペース"を確保する活動を進めている。この"スペース"は、女性と少女たちが安全に、そして安心して、情報を得たり意見交換をしたりでき、識字教室や技術訓練などが実施され、法的なサポートや心理社会的なカウンセリングなどが受けられるセンターとなる。

被災地の女性と少女たちを対象にした国連人口基金の「衛生キット」は既に210,000個以上が配布された。このキットは女性の衛生ニーズに則して、せっけんやタオル、くし、清潔なシーツ、生理用品などをパックにしたものである。

女性の衛生ニーズへの対応は衛生キット配布にとどまらない。現地のNGOとの共同プロジェクトとして、女性のためのハマーム(プレハブ建ての公衆浴場)を建設している。女性たちの安全が確保され、プライバシーや照明などにも配慮がされる。このハマームは保健施設の近隣に建てられるので、女性や少女たちが訪れやすく、利用しやすいようになっている。

国連人口基金は自然災害や紛争に対応する人道的支援において、女性や若い世代に特有のニーズが援助の計画段階、また実施段階で確実にプログラムに入れ込まれるように活動し、関係者に働きかけを行う。パキスタンの地震被災地では、国連人口基金はリプロダクティブ・ヘルスを優先課題として、安全な出産を支援し、女性や思春期の少女たちの心理社会的なニーズに対処することを目指している。