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トラヤ・オベイド国連人口基金事務局長は、各国首脳と国連安全保障理事会に対し、紛争地域における組織的なレイプや女性に対するあらゆる差別を非難し速やかに対策をとるよう強く求め、被害者の身体的、精神的な回復を支援するよううったえた。オベイド事務局長によるこのアピールは、本日(28日)、安保理の討議の中で行なわれた。この安保理のセッションは、2000年10月31日に採択された女性、平和、安全に関する安保理決議第1325号の採択4周年を記念して開かれた。

「さらなる政治的な意思によって、女性や少女に対する性的暴力や虐待は、家庭から、コミュニティから、そして避難民キャンプからも、取り除かれなければなりません」とオベイド事務局長はアピールの中で述べ、警察官、警備員そして平和維持・人道支援関係者がトレーニングを通してジェンダーに基づく暴力の認知や対応ができるようになることの重要性を付け加えた。また、オベイド事務局長は続けて、効果的なトレーニングプログラムによって性的暴力の被害者に対するケアの方法を医療従事者に提供することや地方組織や女性団体が積極的にこうした活動に参加できるよう体制を整えることの必要性もうったえた。優秀な女性がそこここにいるからよいということではなく、ジェンダーの平等を確立し、女性が権利を行使して権力の濫用を食い止めることが必要だ、とオベイド事務局長は言う。

オベイド事務局長が特に強調したのは、性的暴力の被害者に質の高いケアを提供して、法的サービス、心のケア、医療サービスによって被害者の受けた傷にすぐさま対処できるようにすることで、そのためには地域の代表者に働きかけて被害者の差別をなくし、女性や少女が助けを求めやすい環境を作ることが重要だとした。女性に対する暴力は紛争地域で多くなるが、問題として取り上げられないばかりか被害女性が差別を受けることも多い。しかし、何百万人もの被害者がこうむるショックは計り知れず、被害者の人生そのものに大きく影響する。オベイド事務局長は、性的暴力に対して効果的に対処しなければ、被害者のみならず国の将来、ひいては国際的な平和や安全保障にも大きな影響を与えると指摘する。

オベイド事務局長はまた、「安全保障理事会の場で今日こうしたことが議論されているということ自体が、女性に対する暴力を無くすための大きな進歩にほかなりません」と述べ、国連人口基金が女性に対する性的暴力を痛切に実感してきた背景には、紛争地域におけるリプロダクティブ・ヘルス/ライツを促進してきたことがあると説明した。さらにオベイド事務局長は、ケアを望む被害者の数が膨大であることに深い悲しみと遺憾の意を表明するとともに、対応が不十分である現状にいっそうの衝撃を受けていると発言した。

続けてオベイド事務局長は、HIV/エイズの感染は性的暴力がもたらす結果の中でももっとも悲惨なもので、こうしたHIV/エイズの蔓延は社会の安定性や安全保障を脅かし、社会に混乱を招いて人々の間に将来に対する不安を抱かせるだろうと警告した上で、安全保障や人道保護といった重要な課題に将来十分に対応するためには、ジェンダーに基づく暴力に効果的に取り組まなければならないとした。

安全保障理事会決議第1325号(2000)では国連加盟国に対し、紛争の予防、対応、解決にかかわる国、地域、国際機関・機構において女性の意思決定が強化されるよう強く求めている。また、武力衝突の当事者に対しても、紛争地域の女性がレイプやあらゆる性的虐待、暴力から保護されるよう特別な措置をとることをよびかけている。