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今週、国連人口基金は国連人道危機評価派遣団(UN humanitarian assessment team)の報告を受け、スーダン西部のダルフール州で引き続く紛争とそれに伴う強制退去によって何十万人もの女性が壊滅的な被害を被っていると警告を発した。

2003年初頭に勃発した内戦以来、約100万人のスーダン国民が住居を追われ、そのうち約11万人が国境を越え世界で最も貧しい国のひとつであるとされるチャドに避難している。国内避難民としてスーダン国内に残っている難民は80万人以上を数え、そのほとんどが長引く内戦により人道援助機関の援助を受けられないままとなっている。

パメラ・デラジー(Pamela Delargy)国連人口基金人道問題担当部長によれば、難民の中には妊婦や授乳中の女性が何千人もいるものの、難民キャンプまで辿り着けるのはごくわずかだ。また、たとえ辿り着いたとしても、キャンプにやってくる女性全員が栄養補給・産前ケア・分娩補助を必要とする状態であり、妊産婦死亡と乳幼児死亡を避けるためには、多くの妊婦に緊急産科ケアが不可欠な状態である。

ダルフール州の人道危機の規模を評価するために派遣されたデラジー部長ほか各国連機関の代表は任務を終え帰国した。この派遣団はスーダン政府の要請によるもので、国連世界食糧計画事務局長(UN World Food Programme, WFP)ジェームズ・モリス氏(James Morris)が団長を務めた。

現在の危機的な状況になる前から、ダルフール州に住む多くの人が、十分な医療・教育・その他のサービスを利用する事が出来ない状態にあり、極度の貧困の中で暮らしていた。こうした状況は14ヶ月間にわたる武力紛争とあいまって、「世界で最悪な人道危機」と国連職員によって評される事態となっている。

ダルフール州は妊産婦・乳児死亡率が非常に高く、また定期的な干ばつや栄養不良の問題でも苦しんでいる地域である。今回の紛争では、広範囲にわたって暴力・略奪そして全村の焼き討ちなどがおこり、約100万人が住居を追われている。この結果、大多数が隔絶された場所に離散しており、整備された住居に住むことができていない。難民キャンプに住んでいる人々は、キャンプが組織的に運営されているいないに関わらず、キャンプ以外での暴力と治安の悪化に直面している。とくに、性暴力が蔓延しており、女性や少女は武力衝突の被害者であるとともに性的暴力の被害者にもなっている。彼女たちは水汲みや薪や飼葉を集めにキャンプを離れる時に襲われるのである。

国連人口基金は、包括的緊急対応計画の一環として、妊婦を支援するため、ダルフール州当局、GOAL、国際救済委員会(IRC)、米国セーブ・ザ・チルドレンを含む非政府組織と共に活動している。国連人口基金と各協力団体は、早急に必要な医療品や安全な出産のための補給品及び機材の発送のほか、ダルフール州の5つの助産学校を支援するための機材や奨学金を提供するとともに、産婦人科分野で国際的な専門家を送り込んで現地のヘルススタッフの訓練およびリプロダクティブヘルスサービスのモニタリングの支援を始めている。また、緊急事態に対応した病院照会システム(Referral System)を確立し、そのサポートとして交通・通信設備の確保にも尽力している。

さらに、国連人口基金では他の国連機関及び赤十字国際委員会と連携し、性暴力・性感染症、その他の病気の予防・治療のほか、現地の人々の精神的ケアにも力を入れている。

「他の紛争と同様スーダン西部でも、レイプが戦争の一手段として使われていて女性と少女に悲惨な結果をもたらしており、性暴力の被害者は身体の保護に加え、早急な医療手当、トラウマに対するカウンセリングそして社会的援助が必要である」とデラジー氏は話す。

紛争により家族も地域共同体も破綻してしまったため、難民キャンプや居住地に保護されている人々でさえ性的暴力と性的搾取を受けやすい状態にある。国連人口基金ではこうした危機的状況に対応するべく、他の国連機関と協同しながら難民キャンプの適切なデザイン、管理、そして意識向上プログラムがキャンプ内の性暴力・HIV感染予防に繋がるよう活動を始めている。活動の一例として、燃料や飼葉を供給することによって、女性が治安の悪いところを長距離移動しなくてもいいようにするプログラムがあげられる。同基金はまた、女性と少女に対して必要最低限の衛生設備を確保することにも取り組むつもりだ。