国連人口基金(UNFPA)は、昨年12月26日にインド洋で発生した大津波の被災地で女性に対する暴力が多発することを危惧し、女性被災者の安全確保の拡大とそれに応じた人道援助の調整を呼びかけている。スリランカの避難所は女性に対する集団暴行・レイプ事件が発生したという1月3日(月)の報道を受けて、トラヤ・オベイド国連人口基金 事務局長は翌日4日(火)「被災地の女性の非常に多くが残された家族の世話という重責を担っている以上、彼女たちの安全確保は人道援助において最も優先される課題です」との談話を発表した。
被災地では治安の悪化に加え多くの家族が離散している状態で、特に女性が性的暴力の危険に脅かされている。多くの被災地では災害以前から女性に対する性的虐待・搾取や人身売買などが問題視されていた。スリランカでは、100万人以上の被災者が家を失い、治安も悪化している。このように治安状態が悪化し、女性に危険が及ぶようになると、食料や飲料水など救援物資を手に入れるため外に出る機会の多くなる女性の行動が制約され、救援活動にも大きな支障が出ると国連人口基金は警告する。
国連人口基金では簡単な警備体制を一刻も早く復旧して一定の治安回復を呼びかけるほか、被災地に暮らす女性の安全確保を行なうため以下のような提案をしている。
•救援活動に女性をグループ単位で参加させ、食料配布の任務を負ってもらうことで、女性や子どもの搾取ができるだけ起こらないようにする。
•避難所などでは夫を失った妻、子どものために男女別の宿泊所、入浴施設、トイレを用意する。
•女性や少女が食料、飲料水、衣類、燃料などの救援物資を取りに外に出る場合は必ず護衛をつけるなど安全を確保する。
•女性に対する暴行の被疑者の逮捕、訴追を行なう。
•性的暴力やその他の暴力の被害者に対する治療とケアを速やかに行なう。
国連人口基金では、今週発表される予定の緊急共同アピールに女性と少女の安全確保と性的暴力被害者に対する支援の呼びかけを盛り込むことを強く呼びかけている。また、国連人口基金は被災地の保健・衛生の緊急援助資金としてすでに300万米ドルを確保している。