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国連人口基金(UNFPA)のリプロダクティブ・ヘルス調査によると、イラクにおける妊娠・出産が原因で死亡する女性の数は1990年から3倍近くに増加した。2002年に報告された出生数10万件当たりの死亡数は310人であり、主な原因は出血、子宮外妊娠や長引くお産とみられる。この推計は1989年の117人を大きく上回る。また、流産も増加し、理由の一つにストレスや有害化学物質にさらされていることが挙げられる。

安全が確保されなくなり、コミュニケーション・輸送システムも弱化しているため、女性が医療施設にアクセスすることが困難になっている。その結果、以前より多い65%の女性が専門技能者の立ち会いなく自宅で出産している。

イラクの保健制度は悲惨な状態にあり、再建されなければならない。診療所は略奪の被害に遭い、水・電力の供給は中断され、医薬品や医療器具は大変不足している。調査によると、イラクには質の高い医療従事者が多いものの、制裁措置により10年以上も最新科学情報・技術にアクセス出来なかったため、彼らの技術は早急に更新されなければならない。

「リプロダクティブ・ヘルスの分野が迅速に改善されることは、イラクの再建に多大な貢献となる。」とトラヤ・オベイド国連人口基金事務局長は述べる。「ヘルス・ケアのインフラはあるが、それが整備され、強化されなければならない。国連人口基金はこれに力を入れていきたい。」

5割から7割の妊産婦は鉄欠乏性貧血、マラリアやその他の病に悩まされている。しかし、現在では1996年の78%を下回る60%しか産前ケアにアクセス出来ない。

また、供給が整っていないため、避妊実行率も低下している。多くの女性も男性も家族計画の方法を知らず、安全でない中絶が増加している。更に、人口の5割は15歳以下であるということから分かるように、イラクの人口は大変若く、10代の妊娠は増加しつつあるということにも調査は触れている。

「数百万人のイラクの若者が出産年齢期に突入しつつある。」とオベイド氏。「我々は彼らの健康を維持し、質の高い情報と適切なサービスを提供しなければならない。」

更に、バグダッドにおける性的暴力や拉致の件数は増加しているが、殆どの場合は報告されず、捜査されていない、と調査は述べている。医療従事者はこのような問題を対処するための訓練を受けておらず、また、レイプを報告することで被害者は社会的排除を始めとする様々な問題に直面することが多々ある。

国連人口基金の調査は、以下を2004年の優先分野としている。

•ヘルス・ケアに関するインフラの再建
•適切な医療器具、医薬品や必需品の提供
•緊急産科ケアが必要な場合のより高度な医療施設の整った病院への照会
•医療従事者の補習教育・訓練
•診断基準の開発
•イラク助産婦協会の設立
•リプロダクティブ・ヘルスのモニタリング(監視)の強化
イラク人口の7割以上がバグダッド、モスルやバスラなどといった大都市に住んでいることが、情報の伝達やリプロダクティブヘルス・サービスの普及を円滑に進めている。

この調査は、国際移住と健康センター (International Centre for Migration and Health)との共同で実施されたもので、マドリッドで行なわれたイラクの復興に関するドナー会議にて発表された。

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リプロダクティブ・ヘルス及び人口の支援プログラムを実施する世界最大の国際機関である国連人口基金は、イラクでリプロダクティブ・ヘルス及び家族計画サービスへのアクセスを向上させるため、1972年から活動を展開している(90年代前半に一度中断)。その結果、一次医療施設が1995年の37から 2001年には146まで増加した。