ニューヨーク国連本部で行われた記者会見にて、「夢に向かって~ミレニアム開発目標(MDGs)と向き合う若者たち」写真展覧会で作品を出展した2人の若者が、貧困、HIV/エイズ、不名誉、社会的孤立を克服した経験について語った。本日から開催される写真展では、ミレニアム開発目標8つの目標を描く写真を展示する。使い捨ての安いカメラを手に8人の若い写真家達は、ブラジル、カンボジア、インド、ジャマイカ、ウガンダ、モロッコ、ウクライナ、ウガンダ北部キャングワリ避難民キャンプでの貧困生活について、その詳細を語った。展覧会では、若者自身によって撮影された写真とともに、評価の高い写真家の作品や、世界報道の審査委員長であるアルゼンチンのディエゴ・ゴールドバーグ氏の写真も展示されている。
国連人口基金(UNFPA)事務局長トラヤ・オベイドは、「若者は自ら発言する機会を持つべきである」と支持し、国連人口基金ユース・アドバイザーであるカケンヤ・ンタイヤに代弁を求めた。ンタイヤは「今、世界の若者の人口数は歴史上最多となり、世界人口の半分が、25歳以下となっています。」「若者のニーズや権利は今や選択の余地が残っている課題ではなく、まして緊急の優先課題項目の最後に加えるものでもありません。」と述べた。
キングストン(ジャマイカ)出身である19歳のジェイソンは、HIV陽性である。コンサートやダンスホールでのクラブ遊びをして過ごした思春期を終え、 17歳の時に自分が血清反応が陽性であると知った。感染していることを知り、彼にとって考えられることとは自殺だけであった。多くの若者と同じく、ジェイソンは両親と会話をすることが苦手であり、また安全ではないセックスが及ぼす危険性について、HIVによる脅威について十分な知識を持っていなかった。「家に帰っても、僕は家族にそれを知らせる勇気はありませんでした。」と語った。ジェイソンが崖から自殺を図ろうとした時、見知らぬ男性が彼を引き止めた。彼は「君の抱えている問題がどんなものでも、君をその苦しみから救ってくれる人は必ずいる。」と言い、ジェイソンを一生涯自殺から思い止まらせた。
ジェイソンは家に帰り、家族に真実を伝えた。そして現在、カリブ諸国で二番目に高いHIV感染率である彼の母国において、HIV/エイズの認識を広げるために、彼自身のことについて話をしている。彼は、彼に生きる意味を与えてくれた、NGOジャマイカ・エイズ・サポート(Jamaica AIDS Support)を信頼している。秋には学校教育を終える予定である。
ブラジル出身の19歳の少女ウリディア(Urideia)は、養育放棄を記録している。彼女は幼い頃に両親に捨てられ、ブラジル北部で祖母に育てられた。祖母は愛情を持って、彼女を育ててくれたが、彼女は両親から受け入れられることを望んでいた。彼女が父のもとへ会いに行った日の事を思い返していた。「私はまっすぐに父のもとへ歩いて行って、私はあなたの娘です、と言ったら、彼は奇妙な表情で私を見つめて、俺には息子しかいない、と言いました。」
ウリディアは途方にくれ、スラム地区ファベーラ(favela)に住む疎遠になった母親と生活するために、サンパウロへと向かった。環境は不快なものであったが、彼女は一生懸命勉強し、学校では成績トップで、さらに大学の奨学金を得た。しかし、大学側らが彼女の入学を許可せず、彼女の夢は打ち砕かれてしまった。ファベーラ出身であったことが、彼女が入学を許可されなかった理由である。大学側にとって、彼女の出身が彼らの慣例に相応しくなかったのである。
「私は勉強がしたかっただけなのです。あの女性(大学側)の目を見た時に、その奥に偏見があることを感じました。たった一つの単語で私の人生は完全に壊されてしまうのだと気づきました。」と、彼女は述べた。彼女がより良い人生を送っていくために闘い続けていく力を与えたのは、シティズン・クック(Citizen Cook)プロジェクトであった。同プロジェクトは、NGO リナ・ガルビーニ(Lina Galvini)、若者雇用ネットワーク(Youth Employment Network)、ILO(国際労働機関)や世界銀行との協力のもと立ち上げられたものである。ウリディアは大学入学と、将来自分が経営するレストラン持ちたいという夢を今も持ち続けている。
「夢に向かって」と題された140枚の写真の展覧会は、フィンランド政府からの支援金をもとに、国連経済社会理事会(DESA)、アフリカ経済委員会 (ECA)、国連教育科学文化機関(UNESCO)、国連人口基金(UNFPA)、国連ミレニアムキャンペーン、世界銀行、ユース・エンパワーメント・ネットワーク(Youth Empowerment Network)の協力を得て、関連国連機関の主導で行われた。展覧会はピクセルプレス(Pixel Press)によって開催されており、2005年10月28日まで、ニューヨーク国連本部で行われる。