世界人口が80億人に達した今、私たちは人類の進歩の成果を祝うことができます。より健康でより長い寿命により、私たちはここまで到達することができました。しかし厳しい現実としては、進歩がいかに不均衡であったか、また女性や少女に対する暴力がいかに制度的に多くの人々から尊厳、ウェエルビーイング、平和への権利を奪ってきたかを示しています。
女性の権利と選択が男性のそれよりも劣るものとして扱われ、女性のからだが女性たち自身のものであるとみなされていない限り、この状況は続くでしょう。
女性や少女に対する暴力はいたるところで起こっています。家庭、学校、職場、公園、公共交通機関、スポーツ競技場、そして最近ではネット上でも蔓延しています。また、気候変動や戦争によって更にエスカレートしています。女性や少女にとって、完全に安全な場所などありません。彼女たちに対する暴力は、世界で最も慢性的で、最も破壊的で、最も見過ごされている人権侵害であることに変わりはありません。
しかし、女性と女児に対する暴力は、完全に防ぐことができます。私たちは、立ち上がって「もうたくさん」と言う多くの人々と連帯することで、この危機を食い止めることができます。すべての人は、からだの自己決定権と安全で安心できる生活を営む権利を有しています。
女性に対する暴力撤廃の国際デーにあたり、UNFPAは国連のパートナー機関および国連事務総長のUNiTEキャンペーンとともに、各国政府やアライである団体に対しすべての女性と少女に対する暴力を根絶するために今すぐ行動するよう呼びかけます。
デジタル暴力の拡散を止めることは、喫緊の課題となっています。オンラインの世界では、ハラスメントや憎しみ、虐待があふれ、その一部は非バーチャル空間にも波及し、深刻な影響を及ぼしています。イギリスの『エコノミスト』の調査部門であるエコノミスト・インテリジェンス・ユニットによると、85%の女性がオンラインで暴力を経験または目撃しているという驚くべき結果が出ています。この割合は、男女間の不平等が深く根付いている場所ではさらに高くなります。また、人種、障害、宗教などの様々な要因が交差するため、虐待や被害が重なることもあります。私たちのジェンダーに基づく暴力の予防と対応策は、これらの要因も考慮しなければなりません。
UNFPAのbodyrightキャンペーンは、企業ロゴやその他の著作物がネット上では人間よりも大きな保護を享受していることを世界的に想起させます。このキャンペーンは、女性の権利活動家と政府の規制当局および民間の技術プロバイダーを結びつけ、デジタル暴力を撲滅するため多様な世界的な活動を引き起こすきっかけとなりました。わずか1年前に設立された「ジェンダーに基づくオンラインでのハラスメントや虐待に対する行動のためのグローバル・パートナーシップ」は、これを率いる立場であるUNFPAをはじめ、すでに新しいパートナーシップとの提携、情報発信、活動を推進しています。
英国と米国では、オンライン・セーフティに関する新しい法律が制定され、変化の兆しが見え始めています。ラオスでは、デジタル暴力に対処するために、サービス・プロバイダーに実装させるツールを採用しました。チュニジアでは、若者が安全にネットの世界を利用できるようにするためのアプリを開発しました。アルゼンチンでは、この問題を包括的な性教育のカリキュラムに組み込みました。
民間企業も動き始めています。例えば、一部のテクノロジー企業は、オンラインでの位置情報の追跡やデータ共有について新たな規制を導入しています。また、データの偏った利用や武器のような使用を防ぐために、個人を特定する情報をマスキングしている企業もあります。
これらはすべて素晴らしい出発点ですが、やるべきことはまだまだあります。法律や安全確認も重要ですが、それ以上に私たちは女性や少女が自分のからだについて選択し、かつ女性が暴力から解放されて生きるための権利に対する見方を根本から変えていく必要があります。これは、有害な社会規範やジェンダー規範を壊し、深刻な暴力や差別にさらされ、社会から取り残された人々の権利を阻むあらゆる障壁を取り除くことを意味します。
セクターを超えて世界中の活動家たちが団結し、決意をもって前進している姿からインスピレーションを受けしょう。すべての人のために、女性や少女に対する暴力を永久に終わらせるために、一緒にbodyrightキャンペーンに参加しましょう。
原文はこちら。