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ルワンダでは、緊急産科・新生児ケア、助産師などの専門技能者の立ち会い分娩、家族計画の推進により、妊産婦の健康が大きく改善しました。これは、妊産婦や新生児の罹病率と死亡率の低下にも直結しています。専門技能者の立ち合い分娩は過去10年間で着実に増え、現在では93%の女性が医療施設で、専門家の介助のもと出産しています。

 

国連人口基金(UNFPA)と日本政府は2018年から、ルワンダにおける人道支援の一環として、妊産婦と子どもの死亡率減少に連携して取り組んでいます。日本政府は、UNFPAが難民キャンプで実施するリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)の強化とジェンダーに基づく暴力から命を救う活動を支援しています。

 

日本政府による平成30年度補正予算プロジェクトの下、UNFPAはすべての妊娠が望まれ、すべての出産が安全に行われるよう、保健システム強化事業を支援しました。マハマ難民キャンプの妊産婦の健康、リプロダクティブ・ヘルス、およびジェンダーに基づく暴力の対応と予防を強化するために、様々な医療機器が調達、寄贈されました。その一つである救急車は、妊娠出産に伴う合併症やジェンダーに基づく暴力の深刻なケースにおいて患者を専門的な病院に紹介・搬送しやすくするために活用されています。

「これまでこの医療施設で、医療機器や知識の不足が原因で命を落とした母子がいないことに感謝しています。全ての人が受け入れられ、サポートされています。日本の資金援助プロジェクトのおかげで、私達のパートナーのUNFPAによって救急車が提供されたので、患者が特別な支援を必要としている場合でもすぐに病院に搬送できるようになりました」と、マハマ難民キャンプの助産師、ムカンデイセンガ・ジセルさんは語りました。

 


UNFPAは、日本政府の資金援助の下、支援を必要とする人を専門的な
医療が受けられる病院に搬送するための救急車を、
​​​​​アライト・マハマ・ヘルスセンターに寄贈しました。

 

リプロダクティブ・ヘルス・サービスとその情報へのアクセスは基本的人権の一つです。持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット3.7に基づき、2030年までに全ての人がリプロダクティブ・ヘルス・サービスを享受できるようにする必要があります。人道危機に直面している若者は、精神的な問題を抱えるリスクも高く、これがリプロダクティブ・ヘルスにさらなる悪影響を及ぼす可能性があります。(BMJ, 2020年5月)

 

リプロダクティブ・ヘルス・サービスの不足は、望まない妊娠、危険な中絶に伴う合併症、ジェンダーに基づく暴力、HIVや他の性感染症の増加につながります。(Singh NS, Aryasinghe S, Smith J, et al, BMJ, 2018年)

 

10代での妊娠は、若い母親と子どもの健康上の問題から、貧困の連鎖をもたらす差別やスティグマ(汚名)、低所得といった社会的・文化的・経済的問題につながる少女の教育まで、広範囲にわたる影響を及ぼします。

 

「プロジェクトで提供された資材の中には、若者にリプロダクティブ・ヘルス情報を伝える際に使えるものがあります。これらを用いて、彼らが十分な情報とともに意思決定をしていくために必要な支援を行うことができます」と、マハマ難民キャンプの医療コーディネーター、ハクズウェイズ・アゼリアス博士は述べました。


ジェンダーに基づく暴力の被害者を支援し、必要なサービスを提供する
「セーフ・ハウス」。日本政府の支援のもと、UNFPAが
パートナーNGOアライトと共同で建設しました。

2018年、UNFPAはパートナーNGOのアライト・ルワンダとともに、マハマ難民キャンプで性とジェンダーに基づく暴力(SGBV)に対応し予防するため、24時間受付可能な匿名電話相談(ホットライン)4433を導入しました。

 

このSGBVホットラインの目的は、様々なケースを早い段階から報告できる状態を整えることで、女性や子どもに対する性暴力やその他の暴力にキャンプのコミュニティ全体で立ち向かうこと、そして、キャンプ内の人々が自分たちに影響を及ぼす問題について自由に話すことができるプラットフォームを導入することで、あらゆる形態の暴力を終わらせることです。

 

ロックダウンの間、4433ホットラインは、遠隔地でのケースマネジメントを継続し、暴力の被害者をフォローアップするために不可欠なツールとなりました。ケースワーカーたちはホットラインのおかげで、被害者とのコミュニケーションを絶やさず、モニタリングを行い、適切な支援を提供し続けることができました。

 

「ホットラインがあるので、情報をタイムリーに共有することができます。この番号を使って、ジェンダーに基づく暴力のケースについて報告したり共有したりしています。また、難民キャンプの人々には、いつ、どのようにホットラインを使用すればいいのか伝えているので、私たちがいないときでも、いつでもケースを報告できます。簡単かつ無料で利用ができます」――マハマ難民キャンプのSGBVコミュニティ活動家、ンディクマナ・アイザックさん

ギヘンベ難民キャンプでは、SGBVケースワーカーたちに携帯電話が支給され、新型コロナウイルス感染拡大のため支援先を訪問できなくなったときでも、被害者へサービスを提供し続けることができました。

「ロックダウン中は家庭訪問ができないため、被害者へのフォローアップが容易ではありませんでした。しかし、支援先に行けなかったときも、携帯電話のおかげで継続してサービスを提供することができました」――ギヘンベ難民キャンプのSGBVケースワーカー、ムカバリサ・ジョスリーンさん

 


ケースワーカーに携帯電話が支給され、コロナ禍で支援先を訪問できなく
なったときでも、被害者を支援し続けることができました。

 

日本政府の令和二年度補正予算により支援を受けたUNFPAは2021年9月30日より、アライト、アフリカン・ヒューマニタリアン・アクション、セーブ・ザ・チルドレンの3つの国際NGOと連携し、新事業を開始します。今回のプロジェクトは、「新型コロナウイルスのパンデミック下の人道状況における母子保健,性と生殖に関する健康及びジェンダーに基づく暴力の予防及び対策の強化」と題して、ルワンダの6つの難民キャンプを対象に、各医療施設が妊産婦の健康、性と生殖に関する健康、ジェンダーに基づく暴力の予防と対応について質の高いサービスを提供できるよう受け入れ体制を強化することを目的としています。

 

具体的には、リプロダクティブ・ヘルス・サービスを受ける出産可能年齢の女性や最前線で働く医療従事者を保護するとともに、ジェンダーに基づく暴力のケースマネジメントを実施するスペース、妊産婦健康やリプロダクティブ・ヘルスに関してより質の高いサービスを行うための物資などを提供します。また、紙による医療情報管理から電子管理システムへの移行を促します。

 

「UNFPAのパートナーシップと日本の皆様からのあたたかい支援に深く感謝いたします。本プロジェクトのおかげで、キャンプの保健サービスは改善しました。このプロジェクトはコロナ禍という困難な時期に、女性や少女たちが妊産婦の健康やリプロダクティブ・ヘルスに関するサービスへのアクセスするのを助け、予防可能な原因による妊産婦の死亡率や罹病率を低下させていくでしょう」――マハマ・キャンプで働くアライトのSGBV保護担当、イーヤカリマイ・ジャックさん


ルワンダで行われたプロジェクトの開始式

2021年9月24日に逝去された敬愛するハクズウェイズ・アゼリアス博士に追悼の意を表します。

 

本文は当該プレスリリースを、駐日事務所にて独自に翻訳及び編集したものです。