7月11日、国連人口基金(UNFPA)駐日事務所は、世界人口デーに合わせ、「世界人口白書2022」日本語版発表記念オンライン・イベント「思わぬ妊娠の前後左右 ーいろいろな選択と自己決定権ー」を女性医療ネットワークとSRHR Initiativeの共催で開催しました。
池田裕美枝氏(女性医療ネットワーク・SRHR Initiative)の司会進行のもと、国連人口基金(UNFPA)事務局次長 イブ・ピーターセン、女性医療ネットワーク理事長・産婦人科医 対馬ルリ子氏より開会の挨拶が行われました。
次に、JPFP会長の上川陽子衆議院議員、赤堀毅大使(外務省地球規模課題審議官)より来賓ご挨拶がありました。
続いて、弊事務所長 佐藤摩利子より「世界人口白書2022」の解説を行いました。まもなく80億に達する世界の人口に関して、数字を追うだけでなく、人々の尊厳や女性のからだの自己決定や選択の大切さを強調しました。また、世界の妊娠の半数、年間約1億2000万件余りにもおよぶ"意図しない妊娠"という、今まで見過ごされてきた危機を改めて危機として認識し、取り組みを強化していく必要性について述べました。
その後、NPO法人ピッコラーレ代表の中島かおり氏より、日本における"意図しない妊娠"の現状についての基調講演が行われました。中島氏は、”意図しない妊娠”の前後、取り巻く環境によってからだの自己決定に関する選択の幅が狭められている現状があり、自己決定できる社会をどの様に作っていけば良いのかと問題提起をしました。ピッコラーレに寄せられる妊娠に関する相談内容や、妊娠したことへの精神的な葛藤をより深刻にする要因について説明し、情報を受け取れる仕組みを整備すること、包括的な性教育を行うこと、"意図しない妊娠"が起こりうるものであると認識すること、緊急避妊薬・経口中絶薬の普及など、孤立してしまう妊産婦を減らすために必要な提言が挙げられました。また日本において、リプロダクティブ・ジャスティスを実行するために、SRHR(性と生殖に関する健康・権利)を保障する法律を整備することも提案されました。
その後、産婦人科医の宋美玄氏をファシリテーターに、石井光太氏(ノンフィクション作家)、坂井恵理氏(漫画家)、高橋幸子氏(産婦人科医)、中島かおり氏によるパネルトークが行われ、日本における"意図しない妊娠"の背景について活発な議論が行われました。パネリストからは「子どもが学ぶために先に大人が学んでいく機会を」、「妊娠に関して、不安・危機感を持っている男性が悩みを相談できる場所を社会で作っていくことも必要なのではないか」という声があげられ、社会全体の問題として取り組みを行っていくための議論がなされました。300名を超える参加者からは様々な質問が寄せられ、パネルトークの後半では、それらの質問に答える時間も設けられました。
最後に、ファシリテーターの宋氏より、日本における"意図しない妊娠"に取り組むために、以下のような3つの提言が発表されました。
1.SRHR、国家および産婦人科など各業界がともに推進する
2.大人が定期的に性教育を学ぶ機会をつくる
3.からだの自己決定権に関する法律の見直し
最後に、「世界人口白書2022」日本語版の監修者である国立社会保障・人口問題研究所名誉所長の阿藤誠氏による閉会の挨拶でイベントが締めくくられました。
【”意図しない妊娠”・暴力に関する相談先】
・性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター一覧(内閣府男女共同参画局)
・DV相談プラス (内閣府)
・女性健康医療センター一覧 (厚生労働省)
・スマート保険相談室 相談窓口 (厚生労働省)
・東京都 妊娠相談ほっとライン (東京都)
・女性のなやみ相談室(総合周産期母子医療センター)
・一般社団法人全国のにんしんSOS相談窓口(日本財団)
・にんしんSOS東京 (ピッコラーレ)
・避妊・妊娠、性感染症、10代のための、性暴力・性被害相談窓口 (セイシル)
・LGBTQ+ユースの性の健康メール相談 (特定非営利活動団体 ぷれいす東京)
・相談窓口一覧(特定非営利活動団体 ぷれいす東京)
・Eメール 性の健康相談 (公共財団法人 性の健康医学財団)