現在地

バングラデシュのダッカにて開催された第1回フィスチュラ予防において治療の南アジア会議(South Asia Conference for the Prevention and Treatment of Fistula)で国連人口基金(UNFPA)は南アジアの何万人もの女性の一生を打ち砕いてしまうフィスチュラ(膣のろう孔、訳注:膣部に外傷・潰瘍などによってできた穴)が最も悲惨な妊娠による障害である、と述べた。バングラデシュだけでも40万人以上の女性がフィスチュラの障害を負っている。

3日間に渡る会議では50人の保健専門家により南アジア地域のフィスチュラ問題とその解決策について議論がなされた。バングラデシュ政府はフィスチュラ問題に取り組み、サービス提供者を訓練する中核的研究機関の建設のために国立フィスチュラ・センターを設立することを表明した。バングラデシュ保健家族大臣(Bangladesh health and Family Welfare Ministry)のカンダカー・ホセイン(Khandaker Masharraf Hossain)氏は、「国連人口基金の協力の下、フィスチュラ・センターを設立することは女性の地位向上にとって実に大きな一歩である」と述べた。

分娩に伴って発生するフィスチュラは女性が長時間に渡る遷延分娩(難産)の際に適切な医療を受けられない場合に起きる。胎児の頭が母親の産道を圧迫し、その結果、母親の膀胱と膣及び直腸が腐敗して孔となりフィスチュラが形成される。胎児は通常死亡し母体も(訳注:膀胱や直腸との間に穴が生じることで)尿漏れや便漏れを経験することになる。フィスチュラの社会的影響は破滅的であり、この障害を負った女性は大変な屈辱を味わうことになる。この女性は多くの場合夫に拒絶され、コミュニティーからも排斥され、そのような状態になったことを彼女自身の責として非難されるのである。

フィスチュラに関する確実な資料は十分にないが、アフリカと南アジアで200万人もの女性がフィスチュラを抱えていると推定されている。「十分なデータが無いという事自体が、この問題の根深い性質をよく表している。」とフィスチュラに関する特別大使(UNFPA special Ambassador on Fistula)のナフィス・サディク(Dr. Nafis Sadik)氏は言う。「フィスチュラは貧困状態におかれている人、若年層、そして女性に影響を及ぼす。であるにもかかわらず、フィスチュラが国民健康政策の優先課題に挙げられていない。我々はそのような現状を変えるために会合している。」と述べた。

フィスチュラは予防でき、手術により治療可能である。専門家は貧困、医療の質の低さや女性に対する社会的差別がフィスチュラと密接に関係しているという事が知られている。以下がフィスチュラを予防するための方法である。

•20歳以下の女性は難産を経験しやすく、出産中に胎児の死亡する可能性が高いため、初産年齢を遅らせること。
•女性が出産を計画し出産間隔を空けられるよう、家族計画を提供すること。
•妊婦のための産前ケアへのアクセスを向上すること。
•合併症の感知と必要な場合のより高度な医療設備の整った病院へ転送できるようにするため、出産時における専門技能者の立会いを提供すること。
•女性が帝王切開などの医療を受けられるよう、安価でアクセスしやすい緊急産科ケアを提供すること。
ダッカの会議に出席した専門家はフィスチュラを抱えている全ての女性に対して治療を提供し、手術を行える施設を設立し、手術やリハビリを提供できる人材を育成することが必要であるということを検討した。また、各国のフィスチュラ発症の特徴を分析することが必要であるとし、この分野での南南協力も求めた。

10月に国連人口基金はエチオピアとオーストラリアのフィスチュラ専門の外科医を支援して、バングラデシュの現地医師や看護士20人をトレーニングした。その期間中にこの外科医達は40回も手術を行って女性患者達を治療した。

国連人口基金はフィスチュラ撲滅に向けた初めてのグローバル・キャンペーンを先導している。長期目標はアフリカやアジアにおいても先進国のようにフィスチュラをめったに起こらない障害にすることである。このキャンペーンは20カ国以上で支援している。詳しくはwww.unfpa.org/fistulaを参照。